3443通信 No.380
ラジオ3443通信「日本住宅の歴史」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2013年3月5日OA(オンエアー)された、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
106 日本住宅の歴史
An.
三好先生、前回は雲南省西双版納地域の住宅が、奈良の正倉院を連想させること。高床式住宅の建て方が、日本の在来工法と呼ばれる建築様式の基礎になっていること。そういったお話を伺いました。この在来工法の住宅は、温度と湿度の高い亜熱帯気候の風土に根付いていた工法で、外気の通り抜けやすい家屋構造が特徴だとか。
Dr.
江澤さん。江澤さんは『徒然草(つれずれぐさ)』って書物のことを、憶えていますか?
An.
先生、もちろん憶えています。高校の古文の授業で、暗記させられましたもの。
Dr.
そうそう。「つれづれなるままに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば。あやしうこそ物狂ほしけれ。」
この出だしは、江澤さんお得意ですよね。
An.
三好先生、江澤は授業で、この『徒然草』は清少納言の『枕草子(まくらのそうし)』や鴨長明の『方丈記(ほうじょうき)』と併せて、日本三大随筆の一つと呼ばれるって、聞きました。
Dr.
さすがは江澤さん。今日もエンジン全開ですねぇ(笑)。
その徒然草の第55段にですね、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。」という、1節があるんですよ。
An.
先生、それ未だ憶えてます。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、耐へ難き事なり。」わぁ。江澤は高校の授業風景まで、思い出してしまいました。
Dr.
これを書いた吉田兼行、いわゆる兼行法師が住んでいたのは京都です。
私は、京都大学大学院の非常勤講師を勤めていたこともあって、京都の気候は知ってますが、あそこは盆地ですので、夏はすごく暑いんです。
An.
中国の三大ストーブ・シティ、みたいな感じでしょうか?
Dr.
それを和風にしたような、そんな感覚ですね。
いずれにしても夏は蒸し暑く、冬は寒いんです。
そんな夏の一夜を過ごすために、市民は京都市内を流れる鴨川に、納涼のための座席を作りまして。川床とか納涼床とか呼ばれるんですけど、そこで酒を酌み交わすんです。
An.
まぁステキ! 江澤も一度、夏の京都で夕涼みをしてみたいです。
Dr.
でもあれは実際には狭くって、隣の客とひざを突き合わせながら、蒸し暑い中で酒を飲むので……。風流ではありますけども、少し窮屈な思いもしますよね。
とはいえ、夏の京都を涼しく過ごすための工夫として、やっぱり体験する価値はあると思います。
An.
兼行法師が指摘したように、京都の住まいは夏を快適に、という目的で考えられているんでしょうか。
Dr.
基本的には、源氏物語以来の住居とその思想は共通していまして。家屋は風が通り抜けやすいように、できています。
An.
それが、亜熱帯気候の住宅(図1)の特徴なんですね?

図1 中国雲南省シーサパンナの住居
Dr.
外気が通り抜けるものですから、夏は快適ですが冬はとっても……。
An.
寒そうですねぇ。
Dr.
伝統的な日本の暖房はホラ、火鉢とか、1カ所のみをちょっと暖めるだけですので。冬の京都では、寒かったみたいです。
今でも記録に残っている京都の冬の過ごし方では、江澤さんのようなレディの前でお話しするのは、はばかられますが……(笑)。火鉢の上に跨がって下半身を暖めるとか、それが当時の『戯画』つまりマンガで記録に残されているんですよ(笑)。
An.
マンガですか!
Dr.
で、開放型住宅と呼ばれるその住宅の作り方が、『在来工法住宅』つまり床を作り柱を立て、屋根を載せてそれから『ハンギング・ウォール』と称するんですけど。つまり源氏物語時代の『御簾(みす)』、まぁカーテンみたいな感じの壁を作るんです。
An.
在来工法住宅の壁は、亜熱帯気候の住宅のカーテンの名残なんですね?
Dr.
日本の都は基本的に、京都が中心でしたから。洗練されたライフ・スタイルは、京都風がいちばんと信じられていました。
ですから、地方でも住環境は京都に似たものとなりがちです。
An.
在来工法の開放型住宅が日本中にあるのは、そのためなんですね?
Dr.
ですがこの夏向きのしゃれた住まいは、例えば仙台のような冬のつらい地域には向いていません。
暖房も火鉢だけでは、ちょっとつらいものがあります。
An.
仙台市ですらそうなんですから、もっと北では、なおさらですよね?
Dr.
戦前のサハリンつまり樺太では、それでも日本人はこうした開放型住宅に住み、外から冷たい外気が入り込む環境で、焚火にあたりながら震えて冬を過ごしたそうです。
An.
それは寒そう!
Dr.
ですから現地のロシア人たちからは、日本人が一冬の間に焚く薪の量で、1軒の家が建ってしまうって、とっても笑われたんですって。
An.
ということは、ロシア人の家屋の構造は、日本人の開放型住宅とは大分違うんですね?
Dr.
さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。ロシアや樺太のロシア人住宅は、ログ・キャビンと称して丸太木組みの頑丈な家屋です。この住宅は冷たい外気をはじく構造になっていて、どんな冬でも寒くないようにできています。
An.
ログ・キャビンの家なんですね。暖かそうですね。なんだか江澤もそのことばの響きに、憧れっちゃいますぅ。
Dr.
次回は、南方の亜熱帯気候に適した住宅である開放型住宅と、ロシアのような北方に最適なログ・キャビンの家について、お話しします。
Dr.・An.
ありがとうございました。
(106話)
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