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2024年11月 No.357

 

学校健診シリーズ9
ラジオ3443通信「鼻の病気について」


 ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年8月28日OAされた、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。

83 鼻の病気について
An.
 三好先生、学校健診のお話シリーズということで、前回まで中耳炎のお話を伺いました。急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎と解説して頂き、プールのシーズンでしたから、中耳炎でも水泳が大丈夫なのかどうか、子どもさんにとっても切実な話題をお聞きしました。
Dr.
 今回は学校健診シリーズの続きでして、鼻の病気のご説明です。
An.
 ハナ垂れ小僧さんは学校の成績の下がることも、ありそうですから。学校健診では、しっかり見つけてもらわなくっちゃあ。
Dr.
 と言いましても、学校健診では耳鼻科医が鼻の穴を鼻鏡(びきょう)という、機器を使用してのぞき込むだけですから、精密診断はできません。健診の場では、おおよその見当をつけて耳鼻科医受診を勧めます。
An.
 でも三好先生のことですから、鼻の穴をのぞき込んだだけでも・・・・・・。
Dr.
 その子どもの、将来の運勢が分かったりして(笑)。
 手相も見てみれば、そこまで分かっちゃうかもしれませんが、あいにく手相の学校健診は無いものですから。
An.
 手相や運勢は、見ないんですね(笑)?
 せっかく将来の大人物が、健診を受けた子どもさんたちの中にいるかもしれないのに。
Dr.
 後で話題にしますけれども、ね。実は私たちの北海道白老町の学校健診では、腕の皮膚の状態も診てるんです。
An.
 先生はそれで子どもの運命が分かっちゃうんですか?
Dr.
 いえいえ、それはアトピー性皮膚炎の健診なんですけどね。
 日本では、今のところ皮膚科の学校健診はやってないんですけど、ね。でもホントにアトピー性皮膚炎が増えたって、大騒ぎされるわりには、その実態を誰も知らないんです。
An.
 えっ、それは意外! 江澤も、アトピーが増加しているってのは、聞いたことがあって。それは当然、それなりの調査が実施されて、裏付けのしっかりした事実なんだと思ってました。
Dr.
 それが実は、いわゆる「ジョーシキのウソ」ってやつでして。
An.
 まさか実際には、調査はなされていなかったなんてことは・・・・・・?
Dr.
 そこがとっても重要なんです、江澤さん。私たちの、スギ花粉症などアレルギー性鼻炎に関する調査もそうだったんですけどね。
 ある種の病気の、その時代の、例えば日本人の頻度を知るためには、ホントは厳しい条件を満たした調査を、実行しなければいけないんですが・・・・・・。
An.
 実際は、行なわれていない、とか?
Dr.
 実は、こうした病気の動向は医療機関を受診した患者さんの傾向のみを見て、判断されることが多いんです。
 これまでお話しして来た、中耳炎やスギ花粉症の増減なんかも、病院などを訪れた人の診断名の変化を観察して、話題提供されることがほとんどなんです。
An.
 でもそれじゃ、病気の実態は良く分かりませんよねぇ。
Dr.
 さすがは江澤さん。良いところに気がつきますね!
An.
 エヘヘ、それほどでも・・・・・・。
Dr.
 江澤さん、例え話です。
 ある町の住民たちの食事の嗜好、つまり好き嫌いを知るためには、本当ならばその町全体のご家庭を訪問して、朝ご飯・昼飯・夕食とすべて、内容を聞き取り調査してまわらなきゃ、分かりません。
An.
 それはそうですよね。
Dr.
 ところが、町にある食堂で待ち構えていて、そこに食事に来る住民の注文を観察するとします。
 その場合、注文はカレーが多いかラーメンが多いか、それを見ているだけでその町の住民の食事内容が、判断できるでしょうか?
An.
 そりゃ先生、ご家庭での普段の食事を見てなきゃ、そんなの分かりませんよ。
Dr.
 病院など、医療機関も事情は同じです。
 病院で待ち受けていて、そこでの病名を調べただけじゃあ・・・・・・。
An.
 そうか! 住民の健康状態の実際は、それとは異なる可能性もありますね。
Dr.
 さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。そう! その通りなんですよ。
 病院を受診する患者さんは、なにか体に異変を感じてから、医者に行こうと思うわけですから。痛いとかかゆいとか、そう思わなくっちゃ、医者に見せようなんて考えません。
 つまり自覚される前の病気の実態を、医者は誰も知らないってことになります。
An.
 先生、江澤もやっと、先生のおっしゃっていることの内容が理解できました。
 自覚症状のない、病院を受診することのない、一般住民の健康調査を実施しておかなければ、病気の全体像は把握できないってことですね!
Dr.
 江澤さんは、ご謙遜が過ぎますよ。それこそ、私たちの疫学調査の意味なんです。
 アトピー性皮膚炎についても、病院へ来ない普通の子どもさんたちの皮膚を観察しなくっちゃ。アトピーが増えたかどうかなんて、分かりゃしません!
An.
 でもそれは、現実にはとっても難しいってことでしょうか?
Dr.
 私たちがこれまで努力して来たのは、そうした病気の頻度を何年も観察して、実際のところ病気の頻度はどうなのか、増えたのか・減ったのか・その原因は何か、それを知るためなんです。
An.
 分かりました、三好先生。先生がこれまでやって来られたことの、重さと難しさを。
Dr.
 まぁそんなことをしながら私たちは、スギ花粉症などアレルギー性鼻炎の実情を、論文にして来たんです。
An.
 この番組では、その結果もお伺いできるんですね?
Dr.
 本日は時間切れですが、お話の中でご説明して行きます。
An.
 次回が、江澤は毎回、とっても楽しみで堪りません!

 

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