2024年10月 No.356
豪華客船にっぽん丸でいく
日本一周クルーズに参加しました 2
院長 三好 彰
前回から引き続き、豪華客船にっぽん丸でいくクルーズツアーで寄港した名所旧跡について、ご紹介していきます。
私たちが船上でグッスリと眠る中、にっぽん丸は日本海へと船を進め、翌朝には新潟県沖にある佐渡島へと寄港しました。
日本版の“フィヨルド”尖閣湾
佐渡島の中央東にある両津港に降りると、ドンドンという太鼓の音色と鬼がクルーズ一行を歓迎してくれました(図16)。
図16 鬼のお出迎え
佐渡には、古くから『鬼太鼓』と呼ばれる伝統芸能が残されており、その起源は不明なれど『延享年間』(1744~1748年)には、相川総鎮守・善知鳥神社の例祭である相川祭りの絵図に、鬼太鼓が描かれているそうです。
近年の研究では5系統に分類される鬼太鼓の力強い音色とともに、佐渡島の探検は始まりを告げました。
さて、私たちがまず訪れたのは、佐渡島北西の北狄(ほくてき)から姫津にかけた約3キロメートルの沿岸に広がる小湾地帯・尖閣湾です(図17~19)。その荒々しい岸壁はかつてのサンゴ礁の名残とされ、まるで北欧ノルウェーのハルダンゲル・フィヨルドに似た景色であることから尖閣湾と命名されました。
図17 荒々しい断崖
図18 まさに島流し
図19 灯台
それら尖閣湾を含む一帯は、1950年に佐渡弥彦米山国定公園(図20)として琵琶湖国定公園(滋賀県)・邪馬日田英彦山国定公園(九州)とともに国内最初の国定公園に指定されました。
あいにくの曇空ではありましたが、日本海に浮かぶ絶海の孤島らしい佐渡島の雰囲気はヒシヒシと伝わってきます。
図20
また、この地は邦画『君の名は』(1952年放送。新海誠監督のアニメ作品ではありません)のロケ地として登場しており、同公園内には記念碑が残されています(図21)
図21
世界遺産・佐渡金銀山
金山と聞いたときに、まず思い浮かべるのはどこでしょう。
ヴェネティアの商人マルコ・ポーロの著書『東方見聞録』にて“黄金の国ジパング”と称されたように、日本は世界でも屈指の金の産出国でした。その産出量は、戦国期以降の金山開発の最盛期を迎える頃には、世界の金産出量の3分の1を占めるとさえ言われていたそうです。
その中でも、この佐渡金山は日本最大の鉱山で江戸時代から1989年の操業停止までの約400年間に金78トン、銀2,330トンを産出しました。主な金鉱脈は8本あり、その規模は東西3キロメートル、南北600メートル、深さ800メートルに及び、掘られた坑道の総延長は約400キロメートルにまで達しました(佐渡~東京間)。
図22は、佐渡金山のシンボルともいえる『道遊の割戸(どうゆうのわりと)』と呼ばれるV字型の露頭堀りの跡で、江戸時代初期に山の頂上部から人力で採掘していったその名残です。
図22 佐渡金山のシンボル『道遊の割戸』
実際の坑道見学では、江戸初期に掘られた坑道である『宗太夫坑(そうだゆうこう)』を主に巡りました。いまだ機械採掘が取り入れられる遥か前の時代なので、全て人力での採掘で掘り進められた歴史ある場所です。そのトンネルはまるで将棋の駒のような形で、内部は探索用の小型坑道や、空気取り入れようの煙穴などが残されています(図23~27)。
図23
図24
図25
図26
図27
金山資料館で“金のインゴット”を持つ
どれだけ貴重な金鉱石も未加工であればそれはただの石です(図28)。採取された金や銀鉱石は精錬され小判やインゴットに加工し、それらは幕府の船で江戸に運ばれて活用されました(図29)。
図28
図29
こうした採掘や鋳造過程を忠実に再現して展示しているのが、佐渡金山展示資料館です。
江戸時代に描かれた『佐渡金山絵巻』の内容を基に、縮尺1/10の500体に及ぶ人形や模型を用いて、作業工程を分かりやすく展示しています(図30、31)。
図30
図31
その中でもとくに人気のコーナーが、金のインゴットを実際に手で持ち上げる『金塊チャレンジ』です。これは羊羹サイズの金塊が収められたアクリルボックスに手を入れ、箱から出せるかというチャレンジ企画で、見た目の大きさに反して金塊の重さは12.5キロもあり、力のない人では片手で持ち上げることすら困難というものです(図32)。
図32 見た目のよりずっと重い金のインゴット
図33 金色の錦鯉も佐渡金山らしい?
腕を通すアクリル板の穴の大きさもギリギリのサイズに調整されているため、金塊を取り出すにがコツが必要そうでした。
ちなみに金塊チャレンジに成功すると記念品が貰えるそうです(金塊はキチンとボックス内に戻されます。悪しからず)
限られた時間での見学でしたが、一度は見てみたかった佐渡金山を訪れたことは忘れられない思い出として深く記憶に刻まれました。
そして、ふたたび船上の人となりデッキにて別れを惜しんでいると、出発のドラの音が船内に響き(図34)、岸壁では島民によるあたたかい送別の音色が背中を後押ししてくれました(図35、36)。
図34 出港を告げるドラ
図35 船旅らしい出発の様子
図36 送迎の鬼太鼓
ゆっくりと両津港を離れるにっぽん丸。
飛行機や車と違うゆっくりとした景色の移ろいは、船旅ならではの旅情に溢れているように感じられました。
離れていく佐渡島を眺めながら、私の脳裏には今日の夕食のメニューが巡っていました(図37)。
図37 遠ざかる佐渡島
佐渡島の地図
つづく
【前話】にっぽん丸でいく日本一周クルーズレポ1