3443通信3443 News

2024年10月 No.356

 

南会津のウォーターアクティビティ
『只見川カヤックツアー』参加レポ

秘書課 菅野 瞳 


 木の葉が色づき、秋の到来を告げる紅葉シーズンも落ち着きを見せ始めた2023年11月初旬、春夏秋冬の一年を通して落ち着き知らずの私は、自然美の虜になった奥会津の地で、大自然満喫のウォーターアクティビティ『カヤックツアー』に挑戦して来ました(図1)。

図01
図1


 この奥会津の地で、アクティビティの体験は初めてだったかなと思いきや、私は既にある体験をしていたことを思い出しました。カヤックとは似ても似つかないものではありますが、丁度今から一年前にあたる2022年の11月に、只見線全線開通を記念して企画されたツアーに参加し、南会津の玄関口にあたる柳津町の名物である“あわ饅頭づくり”を体験しています。

 思い出すだけで涎が出てしまう、満月のようにまん丸で、見た目にはしっとりしたお饅頭に見えるのですが、その見た目とは裏腹に、もっちもち食感を味わうことが出来る代物を、この食いしん坊が忘れるわけがありません(笑)。

 さて、今回は全身を使って体験するカヤックツアー(お饅頭はいただけません)。人生初の体験となりますが、一体どのようなものになるやら、乞うご期待です。奥会津で行われるカヤックツアーは、何を隠そう2023年にスタートを切った大変フレッシュな体験プログラムです。福島県塙町で生まれ育ち、常に自然と隣り合わせで、地元の魅力を誰よりも熱く語れるであろう、アクティビティ奥会津代表の“じろちゃん”こと、金澤次郎氏にガイドをお願いします。

本場カナダで学んだカヤック
 自然を肌で感じることが出来るカヤックに魅せられ、日本を飛び出したじろちゃんは、カナダにて障害のある方にも楽しんでいただけるカヤックツアーを学ばれています。
 カヤックというスポーツが、工夫次第でどのような方にでも楽しんでいただけるアクティビティであることを実感し、是非このスポーツの醍醐味を、多くの方に広めたいという熱い想いを抱き、奥会津でのカヤックツアー立ち上げに漕ぎ着けたのだそうです(カヤック故に……ですね!)。
 以前、私が映画を鑑賞し記事を認めた、あの幻想的な風景“霧幻峡”を是非カヤックに乗って見たいところではありましたが、川霧の発生時期は春~初夏の朝方になるため、今回は現地に13時集合で行われる紅葉鑑賞カヤックツアーになりました。

風景画の世界に浸って
 行くまでに時間がかかる奥会津。
 四季を問わず、どの空間を切り取っても素敵な画角になる只見川の紅葉風景に溶け込むべく、いざ出発です!!
 東北道から磐越道に乗り換えて会津坂下ICを降り、国道252号線を南下します。

「この景色、見たわぁ~懐かしい!」と、奥会津の山々の情景を度々思い返しながら、ハンドルを握ること2時間半。8月の花火鑑賞に訪れて以来の再訪となりました。

 只見川を眺めながら、まずは奥会津の空気を胸いっぱいに吸い込み、ここに舞い戻ったことを実感します。
 長袖1枚が丁度いい塩梅の気温と、澄んだ空気が美味しいのなんの。張り切り過ぎた私は、ガイドさんよりもだいぶ早めの到着になりましたが、霧幻峡の渡しと呼ばれる渡し船のアクティビティを体験されている外国人の方を眼下に拝み、ガイドさんの到着を待ちました。

「もう到着されてましたか~」と、ちょっと驚いた表情を浮かべながら、本日のガイドさんであるじろちゃんご夫婦と無事合流です。

 まずは先生と生徒、主従関係の自己紹介です。社交辞令の後には、互いを呼び合うニックネームを決め、そしていよいよ水面に降りてカヤックとの対面です。
 私の予想を超えるカヤックの全長に目を奪われていると、じろちゃんからすかさず喝が入りました。

「カヤックを甘く見てはいけません、カヤックは全身運動になりますので、しっかり準備運動をしましょう!」と、まずは談笑しながらのストレッチタイムです。

 万全の準備運動の後に続いては、パドルの使い方を教えて頂き、本日私の全体重を支えてもらうカヤックを川面にスタンバイし、おっかなびっくり乗り込みます。何とまぁ水面が近いこと近いこと……カヤック上でお尻の位置を調整し、体勢が整ったところで練習の成果を発揮するパドル操作にうつります。

 ひとかき、またひとかき……地上ではそこそこ様になっていた私のパドル捌きですが(自画自賛)、いざ漕ぎだしてみると、

「あれ……?」

 カヤックが思うように進みません(図2)。そしてもがく程に、私の腕だけが悲鳴を上げ、明日の筋肉痛を予感させます。
 これぞまさしく、理想と現実のギャップです。

図02
 図2


「ゆっくりでいいので、私について来て下さい」と先導して下さるじろちゃんに、何度かストップをして頂いては追いつきを繰り返し、一息ついた時に、ようやっと自分が360度の絶景の中にいることに気付きました(図3~5)。

図03
 図3

図04
 図4

図05
 図5


「えっ!?」

 今までに味わったことがない、恐ろしい程の開放感。目を閉じゆっくりと空気を吸い込むと、自身の身体が浄化されているような、そんな錯覚を抱きました。こんなにも気持ちが良いものなのですね、と思わずじろちゃんに感想を述べると、そうなんですよ、そしてですね……と含み笑いを浮かべられ、川のほとりにカヤックをつけるよう誘導されました。

「ではこの辺で、ブレイクタイムにしましょう!」

 さらに、

「珈琲に紅茶に麦茶、それぞれ温冷がありますが、どちらが宜しいですか?」と、女神(男神ですね)のような一言が。

 何ですか、この至れり尽くせりのおもてなし。只見川に浮かぶカヤックの上で、見渡す限りの絶景に囲まれて頂く珈琲……美味しくないわけがありません。
 美味しいという感想も、敢えて要らないであろう至福のひと時を堪能している私に、じろちゃんから更なるおもてなしが……。まだ試作段階で、世間には出回っていないという奥会津が誇る銘菓『会津とろ~りショコラ霧幻峡』をご馳走になりました。

 心を清らかに溶かしてくれる霧幻峡を想い、試作を重ねて作られたスイーツは、さっくりしたクッキー生地の中に、濃厚なチョコクリームが入っており、“サクッ”“とろっ”の2つの食感が楽しめるショコラクッキーです。美味しい珈琲に口どけの良いクッキーまでいただいた私は、どろんどろんにとろけてしまいそうではありましたが、じろちゃんが発した一言にアンテナがピンと立ちました。

このままスタート地点に引き返すこともできますが、

「時間的に丁度良さそうなので、もしお時間に余裕があれば、只見線が走るところを見に行きませんか?」と、何とも嬉しいお申し出がありました。

「はい、行きませんという選択肢はありません」と答えた私は、筋肉痛予備軍になっている腕にハッパをかけ、いざ只見線通過エリアを見渡すことができるポイントへ向け、パドルを動かします(図6)。

図06
 図6


ローカル鉄道の心意気
 只見線の運転手さんは、観光客へのサービス精神が旺盛なので、こちらに気付いてくれた際には、速度を落として運行をしてくれるのだそうです。
 そんなお話を伺って待つこと数分。
 姿を現した只見線が目に入った私は、カヤックの上で待機中だということも忘れ、「きたきた~っ!」と大はしゃぎです。

 只見川に差し掛かった三両編成の列車は、確かに速度を落とし、ゆっくりゆっくり走行しています。
 感無量の私は、すかさず只見線の方へ近寄り、絶景の中を走る列車を目に焼き付けました。

 ここで私は、あることを思い出します。

 それは、『只見線を見たら手を振ろう条例』(3443通信 No.342より)です。年齢を忘れ、右に左に、列車が見えなくなるまで大きく手を振り続けました。そんな私の大振りパフォーマンスに、列車内の方々が、手を振り応えて下さいました。

 当初は、人生初体験のカヤックツアーに、楽しみ半分? いえ、2割・恐さ8割の気持ちで臨みましたが、いざ体験を終えてみると、10割を超える満足感だけが残りました。
 天井知らずの私の奥会津愛。今回は、五感を震わすカヤックツアーに参加し、フル充電をすることができました。また来ますね!の気持ちを込め、只見川と只見線、そしてじろちゃん夫妻に一礼し、右手に残る程よい筋肉痛の痛みを感じながら、帰路に就きました。

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