2024年10月 No.356
三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「難聴児の言語教育と発声法①」
耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2014年8月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]
難聴児の言語教育と発声法①
An.
前回は、電話を発明したことで有名なアレクサンダー・グラハム・ベルが祖父から教えられた発話法の教師をしていたこと、この発話法は地域なまりの強い英語を正統なクイーンズイングリッシュへと訓練することに役立ち、やがて難聴児などの言語教育に応用されるようになった、と教えていただきました。
Dr.
ベルの母親も難聴気味だったのですが、ベルの祖父の考案したこの発話法は、ベルの両親の会話に役立っていたように思えます。
An.
発話には、喉や口の形を整えてしゃべるだけでなく、発声の特訓が必要になるんじゃありませんか?
Dr.
さすがは一を聞いて十を知る江澤さん。難聴児はほとんどが、声を出そうとするときに、口をパクパクさせることはできるんですが…。
An.
お腹の底から声を出してやらないと、口パクが音として他人の耳には届かない。耳の不自由な子どもたちは、実体験として会話の音声が耳に届かないから…。
Dr.
自分で声を出すときも「相手に声を届ける」との発想が全く生まれないんです。
An.
ベルのおじいさんの発話訓練には、それはもちろん完備していたんですよね?
Dr.
そんな経緯から、グラハム・ベルの教え込まれた発話法は、なまりのある「仙台弁」式英会話をクイーンズイングリッシュに矯正するだけでなく「吃音」つまり「どもり」の矯正にも有用でしたし、何よりもともと耳の不自由だった難聴児の言語教育に役立ったんです。
An.
そうすると先生。ベルがおじいさんから教育された発話法は「吃音の矯正」「なまりのあった英語を美しい発音に統一」「難聴児の言語教育活用」と、すっごくいろんな効用のある独創的な教育法だったんですねぇ!
Dr.
ことに2番目のなまりのきつい英語を徹底的に矯正する教育法の現場は、端から見ていてすごく興味を引かれるものがあったみたいで …。
An.
1964年のアカデミー賞を受賞した「マイ・フェア・レディ」のミュージカルになっちゃってますもの、ね(笑)。
Dr.
オードリー・ヘップバーン主演(笑)。
An.
ミュージカルの中のヘップバーンは、見事期待に応えて上流階級のレディーに変身しちゃいますもの(笑)。
Dr.
ミュージカルの原作の戯曲に、バーナード・ショーは「ピグマリオン」と名付けます。「ピグマリオン」とは、ギリシャ神話に出てくるキプロスの王様の名前。彼は自分で作った彫刻の美女に恋をし、本気で結婚したいと願うんです。王の焦がれようを目にしたギリシャ神話の美の女神アフロディテは彫刻に命を与え、キプロス王の夢をかなえたとされています。そこから「ピグマリオン効果」という用語が生まれました。これは教育の現場や職場などで可能性を見いだされ、期待されて育てられた人材は、必ずその期待を裏切らない成長を遂げる、というお話です。
An.
その神話が、戯曲とミュージカルに命を吹き込んだんですね、すてき!!