2024年2月 No.348
会津柳津『霊まつり流灯花火大会』観賞記
秘書課 菅野 瞳
はじめに
お盆休みが目前に迫った2023年8月10日(木)、私が思慕の念を抱く福島県の奥会津柳津町で開催された『霊まつり流灯花火大会』に行って来ました。
夏の風物詩と言えば、夜空に大輪の花を描く花火大会ですが、近年はコロナ禍中のため、花火大会の中止が相次いでいました。
本年度の柳津町の花火大会は、JR只見線が全線再開通後の初めての開催となるため、大会関係者の方の観光振興への想いは一入だった事でしょう(図1)。
図1
この柳津の花火大会は、『塩川』『いなわしろ』と並び、会津の三大花火大会と称されており、特段この柳津の花火は夜空に消える大輪の雫との距離が近く「頭上に落ちてくるのでは……?」と思ってしまう程で、何よりもこの距離感が魅力なのだそうです。
また会津地方は、四方を山に囲まれている土地柄、花火の打ち上げ時の音だけではなく、夜空に花を咲かせる瞬間の音もダイナミックに反響するため迫力が増し増しとのことで、花火大会の観賞というだけでワクワクが止まらない私の高揚感をも、増し増しに煽ってくれます。
いざ現地へ!!
花火大会会場に到着をすると、もうそこは熱気むんむん。イベント時によくお見掛けする、屋台軍の光景がありました(図2)。
私が以前、柳津町名物のあわまんじゅう作りを体験させて頂いた『小池菓子舗』さんが、この花火大会の為に考案されたという、上生菓子の掲示物も見えます。その名も『花火』。新商品は、花火をイメージして7色の構成になっており、販売期間だけではなく、1日の販売個数も限定(約20個)という代物です。
図2
食欲モンスターの私が食いつかない訳がない……のですが、これは残念。販売期間は8月23日からということで、私には手が届かないという現実が突きつけられました。
立ち直りの早い私は、「うん、この掲示物は見なかったことにしよう!」と、記憶の抹殺を試みます。しかしながら、夜空に打ち上げられる7色の花火を見た際には、間違いなく『新商品・花火』を思い出してしまうかな?
私の終着点が見えない寸劇でした(笑)。
鎮魂をこめた灯籠流し
連日の酷暑も落ち着きをみせ始め、夕闇が迫る頃、まずは柳津花火大会の序章にあたる、灯籠流しが行われました。川辺には灯籠が浮かび、徐々に徐々に水流や風の力を借りながら、ゆっくりと流れていきます。私は一昨年、竹灯篭を初めて目にしましたが、今年は流れゆく灯篭を、こんなにも近くで拝むことが出来た幸福感……もう、うっとり見惚れてしまいます。800挺もの灯籠が放つ温かい光は、アートセラピーとでも言うのでしょうか? 精神安定効果が抜群だなと感じました。
いつも殺気だっている私には、もってこい?(笑)。
見事なまでに幻想的な情景を醸し出す灯篭に心奪われ、ふと我に返ると、既に夜の帳が下りており、花火打ち上げの舞台は整っています。時計の針が19時を回り、いよいよ花火大会開始のMCがスタートしました。
まずは、花火大会実行委員長・柳津町町長のご挨拶の後、以前私が書いた記事『JR只見線 体験乗車レポ』(No.336)でも触れた圓蔵寺の鐘に合わせ、黙祷が行われました。柳津の花火大会は、夏の風物詩として行われる花火大会とは、一線を画している、鎮魂の為のセレモニーなのだということが、お分かり頂けると思います。
夜空に咲く火の大輪
いよいよ打ち上げまでのカウントダウンが開始され、ラストカウント“1”の後には、豪快な打ち上げ音が河岸に轟きわたり、夜空に大輪の花がお目見えしました。本日の花火打ち上げ数は、約4,500発。音楽に合わせて打ち上げる創作花火や水中花火、大仕掛けの滝花火(ナイアガラ)までもが用意されており、空からだけでなく川面からも花火を楽しめるという充実ぶりです。
「バンッ!! バンッ!!」と打ち上げられる花火に、先程まで灯篭に彩られていた川面が、色とりどりの花火で極彩色に染まり、静(灯篭)と動(花火)の対照的な光景が、会津柳津の夏を彩りました(図3~6)。
図3
図4
図5
図6
また、ある程度の花火を打ち上げ、ブレイクタイムに突入すると、トランペットの生演奏が奏でられ、只見川を渡る涼しい風を浴びながらのトランペットの音色は、尚一層花火大会を盛り上げてくれます(図7)。
図7
クライマックスまであと30分となったところで、私が何よりも楽しみにしていた滝花火こと、“ナイアガラ”が現れました。世界三大瀑布に数えられる、カナダとアメリカの国境上にある、ナイアガラの滝を模した花火です。夜空ではなく川面に降り注ぐ光の滝に、あちらこちらで歓声が上がっていました。ナイアガラの滝に負けず劣らず、只見川に注ぐ光の滝は、近い将来、世界四大瀑布に名を連ねるかもしれません(笑)。柳津の花火大会は、決して盛大さや派手派手しさはありませんが、小規模ながらも、充実したプログラムと、何よりも会津という地形がもたらす反響音に魅了されました。夏の夜空に現れた大輪の花は、私の心にも、大きな大きな花を咲かせ、また一つ奥会津の色濃い思い出が出来ました。