3443通信3443 News

2023年12月 No.346

 

英国紅茶シリーズ㉒
ラジオ3443通信「江澤・三好丸とアドリア海の旅」


 ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2013年12月3日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。


138 江澤・三好丸とアドリア海の旅
An.
 三好先生、前回までのお話では、英国のフィッシュ・エンド・チップスから、ハンバーグ・ステーキそしてその原型のタルタル・ステーキと、話題が進行していました。
 まるで、まったく関係のないバラバラの散発的な会話の連続みたいに見えた、このラジオ3443通信の進行方向がなんと、英国紅茶の旅の1部分を構成していた。そんな、江澤には信じられないような先生のアドヴァイスがあり、たしかに紅茶の茶器すなわち茶碗や茶道具の近辺に、お話は戻って来ています(笑)。
 先生、本日のテーマはどんな風に進行する予定なんでしょう?
Dr.
 江澤さん。お話はたしか茶道具がもともと、中国の景徳鎮や宜興などという、特殊な土の生産地で作成された美しい陶磁器が、紅茶の葉を運搬する際に、船の重しとして英国へ運ばれた歴史について、ご説明が済んだように思います。
An.
 そうでした、そうでした、先生(笑)。
 それで本日はこのラジオ3443通信、いわば『江澤・三好丸』という名前の船でしょうか、どのような風に身を任せて世界の7つの海を航海するんでしょうね?
Dr.
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。それでは本日の『江澤・三好丸』は、マルコ・ポーロを乗せて当時のヴェネツィアから、元の首都だった大都の町へと旅に出ることにしましょう(笑)。
An.
 先生、私たちのこの船は、タイム・マシーンだったんですね?(笑)
Dr.
 江澤さん。私たちのタイム・マシーンは今、靴の形をしたイタリア半島北東部の港町である、ヴェネツィアを出発しました。
An.
 ヴェネツィアって、さまざまの物語の舞台となっている、ステキな都会ですよね!
 江澤は、憧れちゃいます。
Dr.
 シェークスピアの『ヴェニスの商人』とか、トーマス・マンの『ヴェニスに死す』など、有名な文学作品で有名です。
An.
 江澤も『ヴェニスに死す』は、ヴィスコンティの映画で見ました!
 全編をつらぬく、マーラーのアダージェットを背景に、主役の芸術家・アッシェンバッハが、美少年タッジオに憧れて死んでいく。あの場面は、忘れられません!
Dr.
 そのヴェネツィアを出発したマルコ・ポーロは、『紅の豚』で有名な・・・・・・。
An.
 アドリア海ですよね、先生!
Dr.
 (笑)さすが江澤さん。このOAの、第85回目で話題になったアドリア海のこと、良く覚えてますね(笑)。
An.
 で、アドリア海を南に下ると地中海があって、ですね。そこから東に進むと、ギリシャ神話で有名なエーゲ海に出ます。
Dr.
 ちなみに、ヴェネツィアについてつけ加えますと。当時は、イタリアという国家はありませんでした。
An.
 たしか19世紀半ば頃に、イタリアは統一国家になるんでしたよね?
Dr.
 そうです。さすが江澤さん。
 私たち日本人は、日本という島国がまず存在して、その国中の山や海沿いに陸地伝いに集落ができ、都市を形造ります。
 でも当時のヴェネツィアは、海洋都市と言いますけれど、地中海を船で往来し海路のすみっこに、陸地が位置していたんです。
An.
 海伝いに移動して生活していたから、陸地はその片隅という認識なんですね(笑)?
Dr.
 そこが日本人一般と、少し感じ方が異なるんです。
An.
 そうした海洋都市であるヴェネツィアは、海伝いに世界が広がっていた!?
Dr.
 そうなんです。
 しかも海はヴェネツィアにとって、交通路でもあり天然の要塞でもあったので。
An.
 海は市民を護る、とりでだったんですね?
Dr.
 ヴェネツィア市民は、当然ですが海に深い感謝の念を抱いています。
 有名なヴェネツイアのお祭りがありまして、『海との結婚』って名付けられているんですけど。
An.
『海との結婚』ですか?
Dr.
 ヴェネツィアの運河の、アドリア海への出口の岸辺付近で、水上パレードの後にヴェネツィアの総督が、金の指輪を海に投げ込むんです。
An.
 一度、その光景を見てみたいですね!
Dr.
 その際、総督はこう唱えるんです。
「海よ。永遠の海洋支配を念じて、ヴェネツィアは汝(なんじ)と結婚せり」って。
An.
 ロマンチックですねぇ。
Dr.
 このお祭りは、美しいアドリア海の花嫁であるヴェネツィアが、花婿のアドリア海と契(ちぎ)る意味を持つ儀式で、いかにヴェネツィアがアドリア海を大切に思っているか、よく理解できるシンボリックな祭礼なんです。
An.
 私たちのタイム・マシーンは、次にどこへ進むんでしょう?
Dr.
 私たちは、続いて地中海そしてエーゲ海へと、船を進めます。
 ところで、アドリア海の東側のエーゲ海には江澤さん、何がありましたっけ?
An.
 エヘン、先生!
 エーゲ海の北東の端(はし)に、シュリーマンの発見したトロイの遺跡があります。
 トロイの木馬で有名な!
Dr.
 そのトロイ遺跡から、ダーダネルス海峡を通ると、黒海へ入る手前にマルマラ海という、コバルト・ブルーの海に出ます。
An.
 コバルト・ブルーの海、江澤は一度で良いから行ってみたいです(笑)。
Dr.
 このマルマラ海の『マルマラ』とは、もともとペルシャ語で「マルマル」と言い、つまり『マーブル』すなわち大理石のことです。
An.
 きっと大理石の産地なんでしょうね?
Dr.
 大理石を産出する島が、この海の中央にあると聞きます。
An.
 先生、先生。今日もお時間です。
Dr.
 残念! では続きは次回(笑)。

[目次に戻る]