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2023年10月 No.344

 

朝のスタッフ勉強会17
アレルギーと花粉症のお話17
~医学コミック8巻『愛しのダニ・ボーイ』より~

コミック⑧ 表紙【構成用】


引き続き
 当院では朝礼時にさまざまな資料を用いて、接遇や医学・医療についての勉強会を行なっています。ここでは、いま使用している院長監修のアレルギーに関する医学コミック『愛しのダニ・ボーイ』、その解説についてご紹介致します。
 なお、解説含めたマンガも当院ホームページで無料閲覧できるよう準備中です。

49.アレルギー性鼻炎の対策と治療(4)
 アレルギー性鼻炎の人体側に対する対処療法として、抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤・ステロイド剤の投与やMSアンチゲンなどの変調療法、そして鼻粘膜に対する外科的治療法があります。

 抗アレルギー剤にはアレルギーの化学反応を未然に抑制する作用があり、季節性のアレルギー性鼻炎ではシーズン突入の2週間前から服用すると効果が期待できます。もっともその年によって花粉飛散の開始時期は異なることもあって、1カ月前からの服用開始が実際的です。
 抗ヒスタミン剤は、すでに反応を生じてしまったアレルギー性鼻炎の症状そのものに効きますから、抗アレルギー剤だけでは発作がコントロールできないときに使用します。
 ステロイド剤はアレルギー性鼻炎の場合、点鼻薬として活用します。内服や注射などとは異なり、点鼻薬のステロイド剤は鼻粘膜から体内に吸収されないタイプのものが販売されており、シーズン中は実に有用です。

 一時期、注射1本でシーズン中の花粉症発作が完璧に予防できると称して、半ばヤミでステロイド(ケナコルト)筋肉注射をうつ開業医がいましたけれど、これは真実危険です。ケナコルトは1回注射を受けると1~2カ月間体内に残存して、ステロイドを放出し続けます。そしてその放出は、本人さえもまったくコントロールできません。

 アトピー性皮膚炎に対して体の表面から塗布するステロイドでさえ、医師の指示通りに使用しなければ副作用は怖いものがあります。ケナコルトは体内から無調整でステロイドを放出し続けるのですから、副作用は軟膏の比ではありません。
 おまけにケナコルトを筋注するに際して、全身状態の把握がなされていませんので、ステロイド禁忌の糖尿病などの方も受診者には交じっている可能性があります。幸いこれまでに致命的なまでの副作用を経験した方は表立って報告されていません。けれど、その危険性さえ実は皆無でないのです。

50.アレルギー性鼻炎の対策と治療(5)
 鼻粘膜に対する外科的治療ですが、その必要性は以下のような理由によるものです。
 アレルギー性鼻炎の3徴とよばれる、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりのうち、前者2については薬剤が良く効きます。けれども最後の鼻づまりは、相当やっかいです。
 なぜならアレルギー性鼻炎の鼻づまりは慢性の炎症の結果、鼻粘膜が「繊維化」と称するのですが、つまり「胼胝(たこ)」になってしまっていて、内服も点鼻もまったくと言って良いほど効き目が少ないのです(タコに薬が効かないことを「イカさま」とは言いません)。

 その意味で膨れ上がって硬くなってしまった鼻粘膜には、どうしても外科的治療を考慮せねばなりません。けれども従来の外科的治療では、鼻粘膜表面を刃物で切断せねばならず出血が見られたりしますし、何よりも鼻粘膜表面の果たす吸気への加温・加湿や呼気からの水分の回収など、生理的機能をすべて失わざるを得ません。ですから理想的には、鼻粘膜業面に傷付けること無くその腫れを解決してやりたいところです。

 私たちがそんな目的から重宝しているのが、ソムノプラスティという高周波治療器なのです(現在、機器製造中止のため当院では使用しておりません)
 この機器では針を腫れた鼻粘膜に刺し、そこで高周波を発生させます。するとまるでそこだけ電子レンジにいれたみたいな発熱が生じ、組織の変性と脱落が起こります。つまり肥厚鼻粘膜が内部から縮んでしまうことになり、鼻粘膜全体が小さくなります。その結果、鼻粘膜表面の生理的機能をまるで損傷せずに鼻づまりを解消してやることができるのです。

51.アレルギー性鼻炎の対策と治療(6)
 前項に述べたソムノプラスティは、私たちの考えでは非常に有効な治療法であり、手術を受けた方の評判も上々です。このソムノプラスティとレーザー焼灼手術との併用に抗アレルギー剤内服や点鼻薬を併用してやることで、アレルギー性鼻炎ことにスギ花粉症の苦しみをかなり軽くしてやることができるものと、私たちは考えています。

 第三のアレルギー性鼻炎増加の要因である、車両通行量増加に伴う媒体としての空気攪乱ですが、これは原則的にアレルゲン暴露を避けることで解決するように思われます。
 それにしても私たちが明らかにして来た、大気汚染説の疑惑や回虫による花粉症抑制説の胡散臭さなど、アレルギー性鼻炎に関しては正確な実証を欠くうわさ話が多く罷り通っています。

 ところが興味深いことに、それら一見「常識のウソ」と聞こえるお話の中にも、じっくり吟味すると理論的裏付けのなされるものがあるのです。これらを検討することは、アレルギー性鼻炎の対策と治療にも役立つものと思われます。お話の中から、2~3ご紹介することにしましょう。

 最初のお話:ダニによるアレルギー性鼻炎には目の症状を伴うことが少ないのに、スギ花粉症は目に来ることが多い。
 この事実は花粉が空中浮遊物で、目にも鼻にも空中から落下してその粘膜に接触することに原因があります。それに対してダニ(HDを含む)は地面に落下していますから、鼻や口で空気を吸い込むことによって初めて鼻など気道粘膜に接触します。目では空気を吸い込むことが出来ませんから、落下物のダニ・HDがその粘膜に付着することは少ないものです。

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アレルギー性鼻炎と大気汚染」(宮城耳鼻会報 82号|3443通信 No.312)

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