3443通信3443 News

2023年7月 No.341

 

朝のスタッフ勉強会14
アレルギーと花粉症のお話14
~医学コミック8巻「愛しのダニ・ボーイ」より~

図00


引き続き
 当院では朝礼時にさまざまな資料を用いて、接遇や医学・医療についての勉強会を行なっています。ここでは、いま使用している院長監修のアレルギーに関する医学コミック『愛しのダニ・ボーイ』、その解説についてご紹介致します。
 なお、解説含めたマンガも当院ホームページで無料閲覧できるよう準備中です。

40.ダニの増えたわけ(2)
 ダニの家屋内における増殖には、以下の3条件が必要です。
1.温度が20~30℃で、相対湿度が60%以上あること。
2.えさ(フケなど塵の中の有機成分)があること。
3.潜って産卵でき、隠れて繁殖できる潜入場所が屋内にあること。
 こうした条件です。

 中でもダニの繁殖には、湿度が重要と言われます。なぜならヒョウヒダニは乾燥に弱く、相対湿度50%では11日間で干乾びて死ぬとされているからです。
 それゆえ家屋内のダニを駆除するには、掃除機を徹底的にかけてフケなどの餌を無くして兵糧攻めにするのも良いでしょうし、畳やカーペットを減らしてフローリングの床にして潜入場所を無くしてやるのも良いでしょう。とはいえ、湿度を下げてダニを生存できなくしてやるのが、もっとも早道です。
 そう言えば、昔の日本の住宅は高温多湿である日本の気候風土に良く適合していて、風が吹き抜けやすく乾燥しやすい造りになっていました。

 これは兼好法師じゃありませんが、夏を過ごしやすいように考えられた、つまりアジア・モンスーン型気候に対応できる開放型の日本住宅の特徴です。この家屋構造は一般の在来工法の名で知られていますが、まず柱を立て梁をめぐらせ屋根を掛け、そしてハンギングウォールと呼ばれる壁を最後にこしらえます。そこでは床には畳が敷かれ、畳みの下はあら床と称して隙間だらけの木の床でした。
 当時の家は冬でも隙間風が吹き抜け、床下の空気はあら床と畳を通じて家の中に出入りしたものでした。

41.ダニの増えたわけ(3)
 昔風の日本家屋は前項に述べたように、外の空気が屋内を通過しやすい構造になっていました。そのような家では冬の屋内は寒く、住む人はこたつの周りを離れることができないばかりか、こたつにあたっていても背中が寒くて仕方がありませんでした。でもその代わりに、冬季の乾燥した空気が屋内に満ち、湿度は低く抑えられていました。

 それに対して戦後急速に広まった高気密住宅では、外の空気が屋内に入ることはありませんが、屋内の湿った空気も外へ出ていくことができません。
 当然屋内は湿度が高くて、ダニの繁殖にふさわしい環境となっています。
 それに加えて、こたつに代表されるような、昼間の家屋の一部のみを暖め夜間は消してしまう、局部暖房・間欠暖房の習慣がそれに輪をかけます。

 なぜならこの局部暖房・間欠暖房の生活習慣は、やはり亜熱帯に近い地域の家屋に適した暖房で、高気密住宅向きではないからです。そして在来工法の日本住宅は、恐らく南方から伝えられたものと推測されています。
 日本人の開放型住宅好きは骨に染みついているみたいで、第二次世界大戦前に樺太に住み着いた日本人は、その極寒の地でも開放型住宅を建て、冬は寒さに震えながら薪を焚き暖を取ったと伝えられています。このため現地のロシア人からは、日本人が一冬に焚く材木で家が一軒建つと笑われたとか。

42.ダニの増えたわけ(4)
 兼好法師の好んだ、夏の暑さを凌ぎやすい開放型の家では、長い冬の寒さを防ぐことは最初から考慮されていませんでした。せいぜい家族の集まる家の真ん中でストーブを焚くくらいで、家屋内の他の部屋は冷たいままとなります。しかもそれも昼間だけのことであって、夜間は暖房を消してしまう局部暖房・間欠暖房です。
 とは言ってもこうした暖房習慣はこのような開放型住宅には適していて、冬の冷たく乾燥した空気が屋内を通過する構造は、乾燥に弱いダニを死滅させるには最適と考えられます。昔の日本の住宅にダニの少なかったのは、こうした理由によるものと想像することができます。

 それに対し近年の高気密住宅は、名前こそツーバイフォーなどと近代的ですけれど、そのルーツは寒冷地の丸太小屋(ログ・キャビン)です。
 在来工法を柱で建てる家と形容し、ツーバイフォーを壁で建てる家と表現するのは、その由来が南方の開放型住宅だったか寒冷地の丸太小屋であったのかによっています。前者については説明しましたが、後者は寒冷地の凍土の上を滑らせて運搬した丸太を横に木組みし、四方の壁をまず積み上げてしまいます。その後、組み上がった四方の壁の上に屋根を載せる形で家屋が出来上がるのです。
 それが壁で家を建てる、ツーバイフォーの基本となったのです。

関連記事
アレルギー性鼻炎と大気汚染」(宮城耳鼻会報 82号|3443通信 No.312)

[目次に戻る]