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2023年6月 No.340

 

英国紅茶シリーズ⑯
ラジオ3443通信「英国料理は温かい? 冷たい?」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2013年10月8日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。

129 英国料理は温かい? 冷たい?
An.
 三好先生、前回は先生が英国へお嫁に行った娘さんを訪ねて、英国へ行かれたお話でした。
 おみやげの紅茶も味わいながら、英国の朝食の豊かな味わいの話題で、とっても盛り上がりました。
 英国の朝食が豪華なのは、産業革命以後の工場労働に携わる庶民には、当然ながら1日中厳しいお仕事が待っているせいだったんですねぇ。
Dr.
 産業革命以前の英国では、食事は1日2食の習慣だったんですけど、18世紀の末には1日3食の生活が定着しました。
 日本ではディナー、つまりもっとも重要な食事は夕食となるのが一般的ですけれども、19世紀始めの英国ではディナーは午後2時から3時頃でした。
An.
 英国の人たちは、それでお腹が空かないんでしょうか?
Dr.
 朝食と昼食との間には、いわゆる『お茶の時間』がありまして。そこでゆっくり、お茶菓子を楽しむものですから。
An.
 それで英国の人たちは、ヘーキなんですね! 納得です。
Dr.
 夕食の前にも英国では『お茶の時間』がありまして、ね。
An.
 やっぱり紅茶をたしなむんでしょうね。
Dr.
 そのために夕食の時間は、就寝直前の夜9時から10時くらいになってしまったんです。
An.
 それじゃあ消化に良くないんじゃないかって、江澤には心配です。
Dr.
 でもこの夕食は、サパーと呼ばれる軽食であって、それも『コールド・ディッシュ』と称する、軽くつまむ程度のそれでした。
An.
 そんな調子じゃ、栄養が足りないような気がして、江澤はますます心配です。
Dr.
 ですからディナーである昼食は、とても立派な献立だったんです。
An.
 まさかディナーは、冷たい料理じゃなかったんでしょうよね?
Dr.
 日本人には考えにくいことなんですけど。英語には『コールド・ディッシュ』とは逆に、『ホット・ディッシュ』という言葉が存在しまして。
An.
 温かい食事は、なにか特別なものだった。そんな風に聞こえる言葉ですね。
Dr.
 さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。日本じゃ食事は温かいのが当然なんですけれど、厳しい住宅事情だった産業革命以後の庶民の家庭には、まともな台所がなかったんです。
An.
 それじゃ、食事を温めるのはけっこう困難でしたね。
Dr.
 だって江澤さん、料理を温めたり冷やしたりということも、産業革命とともにやっと英国人の常識になったので、その前は……。
An.
 英国の一般家庭では、温かい料理は珍しかった(笑)!?
Dr.
 ついでに付け加えますと。日本人には考えにくいんですが、英国ではビールもあんまり冷えたそれは、見かけないんです。
An.
 先生、中国でもぬるいビールがご馳走でしたよね! 確か漢方の考え方では、冷たいものは体に良くないので、わざわざビールはぬるくして飲む。江澤は先生から、そう教えて頂きました(笑)。
Dr.
 もちろん、英国でも漢方医学が普及していますから、飲む人の健康を考えてビールを温くしている……のではありません(笑)。
An.
 それじゃどうして、英国の人たちは冷たいビールを好まないんでしょうか?
Dr.
 料理を温めたり冷やしたりすることが、産業革命以前にはとっても大変なぜいたくだったんです。
An.
 庶民の家には、台所がなかったんですもの、ね。
Dr.
 料理を温めることでさえ、当時の英国では大変なことでしたが、もっと大事だったのが冷やすことです。
 江澤さん。江澤さんは、19世紀の英国に電気冷蔵庫が存在したと、思いますか?
An.
 先生、この日本でさえ電気冷蔵庫が普及したのは、1950年頃です。
Dr.
 さすがは江澤さん。当時の日本では、一般家庭の三種の神器と言いますと……、何だったでしょうね。
An.
 ええっと確か。そうそう先生、思い出しました。
 クーラーとカラーテレビと自動車。これが三種の神器です(笑)!!
Dr.
 江澤さん。それは高度成長期つまり1980年頃の日本の、新・三種の神器ですよ(笑)。
 1950年の旧・三種の神器は、洗濯機・白黒テレビ・電気冷蔵庫です。
An.
 ええっ先生。それじゃ、それ以前の日本では食べ物を冷やすのは、いったいどうしたんでしょうか?
Dr.
 私の子どもの頃の冷蔵庫は、断熱式の大きなドア付きの重たい冷蔵庫がありまして。
 一番上の段には氷の固まりを置いて、その下の段に冷やすべき食物をしまってありました。
An.
 そう言えば、江澤もそれはマンガ『サザエさん』で見かけたことがあります。
Dr.
 私の記憶では、夏になると氷屋さんが各家庭にまで氷を売りに来ていまして。
 家庭では、それを毎回入れ替えて、冷蔵庫を使っていました。
An.
 三好先生、もしかすると当時の英国でも、似たような光景が見られた、とか。
Dr.
 1857年に、カルロ・ガレッティと言う人が、ノルウェイのフィヨルドから氷山を崩して、氷の固まりを採取しました。
An.
 ええっ、ホントですか?
Dr.
 それをロンドンに輸入したので、英国でも真夏に冷えたビールを飲むことができるようになったんです。
An.
 信じられません(笑)。
Dr.
 次回はそのお話しです。お楽しみに!

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