2023年4月 No.338
英国紅茶シリーズ⑭
ラジオ3443通信「英国のブレックファースト」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2013年8月27日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。
127 英国のブレックファースト
An.
三好先生、前回は紅茶の生産が、当時清の国の独占に近いものであったこと。英国で紅茶の消費量が伸びて、清からの輸入が膨大な量となり、その支払いに追われた英国がインドへの綿の輸出を利用して、インドから清にアヘンを輸出したこと。
そんなお話を伺いました。
Dr.
それを俗に「三角貿易」って、呼ぶんですけどね。
An.
清に輸入されたアヘンは社会問題となり、アヘン戦争が1840年に発生します。
Dr.
そんな経緯を経た後、門外不出だった茶の木がいくつかのルートを経て、英国の植民地などで栽培されるようになります。
An.
英国は紅茶を、自前で入手できるようになるんですね?
Dr.
こうして英国では、それまでぜいたく品だった紅茶を、庶民も存分に味わえるようになります。
An.
その頃には、英国の労働者階級の生活も十分豊かになっていたんでしょうか。
Dr.
豊かになっていく途中、みたいな感じもありまして。日常の食事はまだ、そんなに栄養豊富なそれではなかったようで。
英国の労働者が、食事時にエールやビールを呑むのは、栄養補充の意味がありました。紅茶の流行後は、紅茶がその役割を担うことになります。
An.
英国庶民は、紅茶で栄養を補ったんでしょうか?
Dr.
産業革命以前の英国では、農業主体の生活様式でしたから、いわゆるディナーつまり1日のメインの食事は、お昼に摂りました。
しかし労働形態が変化し、朝から晩まで工場で働くようになると、このディナーは夕刻の8時から9時になります。
もっともこのディナーの変化についてはもう1説あり、当時のヴィクトリア女王が遅めの夕食を好んだために、1840年以降こうした習慣が根付いたとのお話もあります。
ところで江澤さん。江澤さんの朝ご飯は、どんな内容でしょうか?
An.
あまりに慌ただしい朝ですと、理想通りには行かないんですけど。
余裕があれば、あったかいご飯に味噌汁、海苔と生卵なんて和定食も、イイかな?
Dr.
それに対して英国式朝食、つまりイングリッシュ・ブレックファーストって、どんな感じでしょうね。
An.
江澤のイメージする洋食の朝ご飯は、えーっと、ジュースにパンとコーヒーくらいのもので。それに卵料理が付くのかしら? 少し物足りないような感想を持ってました。
Dr.
卵・パン・コーヒーがアメリカン・ブレックファーストで、卵ぬきでサラダやオートミールなど冷たいメニューの添えてあるのが、コンチネンタル・ブレックファーストと、呼ばれるものです。
An.
きっと、ニューヨークのような大都会の、スマートなビジネスマンは、食べたら眠くなるような非効率的な朝食は避けるのかと。
Dr.
デスク・ワークが主体のビジネスマン向けには、そうした軽い朝食が適しています。
軽い内容でも早朝の低血糖状態、つまり体内のエネルギー不足時間には適切なエネルギー補給となり、さわやかな目覚めを自覚します。
そもそも「ブレック・ファースト」という言葉は、「ファースト」すなわち断食を「ブレークする」という意味で、夜間の空腹をそこでストップさせるとの、語源から来ているんです。
An.
そう言えば、十分な睡眠時間の後の目覚めのときには、お腹がとっても空いています!
Dr.
そんな理由から、朝食には栄養のある食事内容を選ぶのも、ちゃんと根拠のあるお話なんです。
An.
江澤は、感心してしまいます。
Dr.
アメリカンのような軽食的朝食と一味違うのが、英国の労働者たちいわば庶民の朝食です。
産業革命以後の工場労働では、当然ですが1日中厳しいお仕事が待ってますから。
An.
朝食でエネルギーを確保しなくっちゃあ、とてもたまりませんね。
Dr.
当時の英国庶民のすべてが、現在のイングリッシュ・ブレックファーストみたいな豪華な内容だったかどうか、断言はできないのですが。
私が嫁いだ一人娘に会いに英国へ行くと、朝からお腹が一杯になるくらいの豊かな朝食が、待ってます。
An.
(ゴクッとつばを呑みながら)せ、先生、どんな朝ご飯なんでしょう?
Dr.
つい先日宿泊したばかりのB&B(図1)。英国では、朝食付き1泊システムのペンションみたいな施設を、ベッド・エンド・ブレックファーストって言うんです。
図1
An.
ああ、それでB&Bなんですね。
Dr.
朝食はセルフ・サービスでした(図2)。
先ず、お好みのフルーツ・ジュースをグラスに注ぎ、トーストをトースターに入れて待ちます。
フレッシュ・フルーツにヨーグルトを載せて、あっついポットからカップにたっぷりと紅茶を……。
図2
An.
わぁ、ステキ!
Dr.
これまたセルフのミルクを、カップのうえの縁すれすれまで満たしてっと。
An.
先生、お砂糖は?
Dr.
甘くなり過ぎない程度に、でも惜しみなく入れます。
ティー・スプーンでゆっくりとかき混ぜて……。
江澤さん。このときティー・スプーンは、かならず右回しに回すんです。そうすると良いことが起こると、信じられていまして。
An.
先生、それは銀のスプーンなんでしょうね(笑)?
Dr.
ええ、銀色のスプーンです(笑)。
An.
きっと近いうちに、良いことが起こりますよ。江澤の第六感がそう言ってます(笑)。
Dr.
その予感の実現が、待遠しいですね。
An・Dr.
本日も、どうもありがとうございました。