2023年1月 No.335
仙台フィル“特別演奏会”鑑賞レポ
~オーケストラで遊んじゃおう!~
秘書課 菅野 瞳
はじめに
少し時期は遡ること2022年4月10日(日)、日立システムズホール仙台で仙台市を本拠地として活動する仙台フィルハーモニー管弦楽団主催の特別演奏会に参加して来ました。題して「オーケストラと遊んじゃおう!」(図1)。
図1
タイトルから察するに、予想はついていましたが開催当日が日曜日ということもあり、会場内は見渡す限りのファミリー一色。これってもしや場違い? と一瞬思いましたが、何でも人一倍楽しむことが出来る特権、ともいうべき才能を持つ私は、精神年齢だけは会場にいるお子さんに近いところはありますので(とは言いましても、会場内の3割は赤ちゃんだったような……)、プロのオーケストラ集団の演奏を生で聞くことが出来る絶好の機会、堪能させて頂きます。
本日の講演の司会・構成・台本、ほぼ全てに関与していると言っても過言ではない、作曲家でピアニストの加藤昌則氏の、軽快なおしゃべりから演奏会はスタートしました(図2)。
図2 プログラム
加藤氏の後ろ手には、色とりどりのTシャツを着ている、仙台フィル楽団の方々の姿があります。私は何度となく仙フィルの演奏会に足を運んでいますが、Tシャツ姿の皆さんを拝見するのは、この時が初めてでした。Tシャツの色は十人十色で、とてもカラフルですが、この色分けは一体何なのだろう? 演奏される楽器による? 各々のご出身地だったり? 年齢帯? そんな興味を抱いた私は、後にあるであろう質問コーナーで聞いてみようと思っていました。その数秒後……加藤氏はそんな私の気持ちを察してか、Tシャツの色分けの説明を始めました。
あっという間に疑問は解決。その答えとは……Tシャツの色分けは、団員の方々の誕生月によるものなのだそうです(図3)。なるほど、なるほど! 普段の正装とはまた一味違った、団員の方々の一張羅を纏っての演奏を、心行くまで楽しむとします。
図3
まずは“オーケストラ”のイロハから学んでいきます。
さて改めて考えてみると、オーケストラとは? と問われた時になんと返答するか・・・「オーケストラはオーケストラで……す……よね?」と言葉に詰まり、苦し紛れにオウム返しをするであろう私(泣)。
そんな状況をまたしても察して頂いたかのように、加藤氏からご説明が。
オーケストラとは
オーケストラとはですね、弦楽器・管楽器(木管と金管)・打楽器で構成されていて、別名を管弦楽団とも言いますとのこと。それぞれの代表楽器による、ワンフレーズの音出しもして頂き、オーケストラの基を教えて頂きました。
そしてまた豆知識として……ちょっと余談になりますが、どこの学校にも、必ずと言ってよい程吹奏楽部が存在します。この吹奏楽というのは、管楽器と打楽器でのみ構成されていて、オーケストラの構成にはある弦楽器(ヴァイオリンなど)を含まない構成……そこがオーケストラと吹奏楽の相違点になるのだそうです。豆知識も習得したところで、早速本日のプログラムに目を通します。
実際の演奏
まずはラヴェル作曲の「マ・メール・ロワ」より“美女と野獣の対話”。この曲の聞きどころは、美女を表現するクラリネットと、野獣を表現する低音楽器のファゴットとの掛け合いなのだそうです。
美女と野獣と言えば、ミュージカルやディズニーアニメでもよく上演される名作です。意地悪な仙女によって野獣に姿を変えられた王子が、心豊かな美女と出会い、美女への想いを募らせ求婚し、その想いが叶った途端に魔法が解け、王子の姿に戻るというストーリーです。
野獣を表しているファゴットの音程が、徐々に上がってきた時には、美女への想いを募らせ求婚した場面かな? また逆に、ファゴットの音程が、徐々に下がり低い音程に変わった際には、美女への想いは届くことなく木端微塵。野獣の寂しさが感じ取れました。そんな諸所の情景が思い浮かび、最後まで滑稽なメロディを楽しむことが出来ました。
加藤氏のスムースな次曲案内が続き、あっという間に最終曲となりました。本日のプログラムを目にした時から、私が一番楽しみにしていた曲。ジョルジュ・ビゼー作曲『ファランドール』です。
この曲は恐らく、大半の方が耳にしたことがあると思います。現在も小学校中学年の音楽の教材に掲載されています。出だしから、ズンズンと刻まれる打楽器のリズムに、一気に体が引き込まれ、力強い旋律に圧倒されます。名オーケストラが奏でる、私の大好きな名曲中の名曲を、最後の最後に演奏して頂き、感無量の思いでした。
音楽というものは、様々なメロディやリズムで構成されているため、とても複雑ですが、その複雑な羅列である音楽を、シャワーのように浴びていると、音を聞き取る力が向上し、重ねて言語能力の向上にも繋がると言われています。名オーケストラが開催するこのような特別演奏会は、これからの未来を背負う子供たちに、音楽に触れる素晴らしさを提供する、絶好の機会だったであろうと感じました。数十年前に子供であった私ではありますが(笑)、心に染み入る素晴らしい演奏を聞かせて頂きました。