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2023年1月 No.335

英国紅茶シリーズ⑪
ラジオ3443通信「半ドンの語源とは?」


 ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2013年7月23日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。

124 半ドンの語源とは?
An.
 三好先生、前回は英国の国民飲料が、ジンやビールそしてエールなどのアルコールから、紅茶に変化していく段階で産業革命が関係していることについて、お話を伺いました。
 機械化した労働が広まっていく中で、アルコールは労働効率を下げるから、時代に合わなくなったんですね。それになんと言っても英国人は勤勉ですから、その気質にもアルコールはそぐわなかったというお話も、納得です。
Dr.
 前回はそれに関して「時は金なり」、つまり "Time is Money"という、ベンジャミン・フランクリンの言葉も、ご説明しました。
An.
 それって、フランクリンの言葉だったんですね!?
 江澤はこの言葉は小学校で教えられて、すごく印象的だったんですけれど、まさかあのフランクリンの格言だったなんて。ちっとも知りませんでした。
Dr.
 今の若い人たちにはこのセリフ、なかなか理解してもらえないかも知れませんね。ネットで見てみたら、「時は金なり」とは時給のことかと思っていた(笑)、なんて書き込みがありました。
An.
 先生、若い人たちのためにも、フランクリンのその言葉の背景を教えて下さいな。
Dr.
 こうした意味の言葉は、もともとギリシャ語に、「時は高い出費である」との格言があったみたいです。それが16世紀に英語圏に入って、"Time is precious"との表現だったのが、フランクリンによって"Time is Money" になったと、資料には書いてあります。
An.
 きっとその裏には、産業革命以後の英国社会の変化があったんでしょうね?
Dr.
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。フランクリンのもともとの文書は、次のような内容だったんです。
「時は金なりということを、忘れてはならない。自らの労働により1日10シリングを稼げる者が、半日出歩いたり、何もせず怠けていたりしたら、その気晴らしや怠惰に6ペンスしか使わなかったとしても、それだけが唯一の出費と考えるべきではない。彼はさらに5シリングを使った、というよりむしろ捨てたのである」。
An.
 フランクリンって、とっても勤勉な人柄だったんですねぇ!
Dr.
 これは当時の産業革命後の英国の、気分を端的に表していまして、ですね。
 江澤さん。江澤さんは「半ドン」って知ってますか?
An.
 えぇっと、それはきっと三好先生とは無縁の言葉でしょうね、きっと。
 だって三好先生のクリニックは、土曜日も1日中診療していますもの、ね。
Dr.
 つまり江澤さん。「半ドン」って言うのは……。
An.
 お仕事が午前中だけで終了し、午後は半日お休みっていうことです!
Dr.
 私のクリニックは日曜日が半ドンで、他の曜日はほとんど毎日診療していますけれど。
 一般の会社や学校では、土曜日が半ドンに相当していました。今は週休2日制ですけど。
An.
 半ドンって先生、もともとどういう語源だったんでしょうか?
Dr.
 これには主に、説が3つあるそうです。第一に、出島説です。
An.
 と言いますと?
Dr.
 江戸末期、長崎の出島(図1)からオランダ語の、日曜日もしくは休日を意味する「Zontag」という言葉が伝わり、なまってドンタクになりました。そしてその半分ですから、半ドンつまり半分のドンタクになったという説。
 まぁドイツ語でも日曜日のことを、「Sontag」つまり「お日さまの日」と言いますから、あり得るかな、と思います。
 それにドンタクというお祭りが福岡市にはあって、「博多ドンタク」って言うんですけど、それは明確にオランダ語由来であるとされています(図2)。

図01
 図1 長崎の出島

図02
 図2 博多ドンタクの光景


An.
 それは、ありそうですね。
Dr.
 第2の説ですが、明治時代から第二次世界大戦中にかけて、正午つまり真昼の12時に空砲を撃つ習慣のある地域があって、半日たった時刻に「ドン」と撃つから「半ドン」と呼ばれるようになった、との説。
An.
 半日で「ドン」と鳴るから、半ドンなんですね?
Dr.
 私が子どもの頃、仙台市の市役所ではお昼の12時にサイレンが鳴りまして。
An.
 サイレンが、「ドン」と鳴ったんでしょうか。
Dr.
 サイレンですから、「ウーッ」と鳴ったんですけど、ね。
An.
 それじゃ先生。仙台市じゃ半ドンでなくって、「半ウーッ」ですね(笑)。
Dr.
 第3の説ですが、半分休みの土曜日を略して「半土」という言葉が生まれ、転じて半ドンと言われるようになったというお話。
 週休2日制の現在では、考えにくいでしょうけれど。
An.
 たしかに、今ではピンと来ませんね。
Dr.
 歴史的に見ると、明治の始め頃にドンタクという言葉が流行している、との記録がありますから。
 どうも第1の説が、有力そうです。
An.
 長崎市と福岡市に跨がって、ドンタクの言葉が伝わっているのでしたら、それが本物じゃあないかと。
Dr.
 江澤さんの第六感が、そう言っているんですね?
 きっとそれで決まり、ですよ。
An.
 でも先生、どうして半ドンのお話になったんでしょう?
Dr.
 日本で半ドンの習慣が始まったのは、1876年にそれまでの1と6のつく日を休みにするという習慣。これを1・6ドンタクと呼んだんですけど。それを廃止し、日曜日を休日とし土曜日を半日勤務とする制度が制定されたからです。
 それは欧米の習慣に、日本の制度を合わせたもので、国際的な慣習を取り入れたものなんです。
An.
 ってことは欧米ではその前から、半ドンが根付いていたんでしょうか?
Dr.
 その謎解きは次回です。お楽しみに!

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