2022年12月(No.334)
第22回 ありのまま自立大賞 参列レポ
秘書課 菅野 瞳
はじめに
2022年7月23日(土)、仙台市青葉区五橋にある仙台市福祉プラザにて行われた『第22回ありのまま自立大賞授賞式』に参列して来ました。まだまだコロナ禍中のため、感染症対策を十分に行った上で、3年ぶりの開催となりました。
ありのまま自立大賞は、各地域のアドバイザーによる推薦から、選考委員による推薦・協議・面接調査を経て決定されます。この賞の選考基準を一言で言うならば、「生きること」に貪欲で積極的な方と言えます。自身の障害に関わらず、自らの人生を自らの意思と責任で切り開き、常に前向きに積極的に生き、努力と結果を残している方を表彰する、それがこの授賞式です。
私見になりますが、例年開催される自立大賞授賞式が、私にとって楽しみなイベントの一つに挙げられます。
それと言うのは、世の中にはこんなにも前向きに頑張っている人がいるのです!だからあなたも、貪欲に前向きに人生を送りなさい!と励まされている気がするからです。そのお陰か? 今の今まで、卑屈に後ろを向いたことは一度もありません(猪突猛進型? とも言います)。
本年は、長崎市在住の医師である吉田翔氏が大賞を受賞されました(図1)。
図1
先天性両耳性難聴の障害を持ちながらも、医学知識を習得して「自分と同じ境遇の人を支えたい!」という思いから医師を志し実現されました。
現在は、耳鼻咽喉科専門医を目指し努力されています。
私は、吉田氏が受賞に至ったエピソードや喜びの声を拝聴し、深く感銘を受け、足取り軽く帰社しました。この旨を院長にお伝えすると、是非そのエピソードを3443通信に掲載しましょうという運びになり、授賞式から少し時間が経過してしまいましたが、吉田翔先生が壇上で口にされた、ありのまま自立大賞受賞の喜びの声を掲載させて頂きます。
以下、吉田先生の講演内容です。
「本日は私のために、お忙しい中お集まり頂きまして有難うございます。このような私に共感して頂けたことが、この場に立つまで実感が湧かなかったのですが、今やっと実感出来ています。
先程私のご紹介を頂いたエピソードでありますけれど、僕が今までどういう精神で生きてきたかと言いますと、やっぱり健常者には負けたくないということがモットーでした。
僕は健常者と障害者を区別するものは全くないと思っていて、小学校などで講演をさせて頂く際には、特に子供たちに向け、健常者の方にも何かしらの障害があるのだと伝えています。
例えばですが、勉強ができないこと、趣味がないことなどが、障害の一つではないかと僕は言っています。その出来ない、苦手としていることに対して、そういう見えない壁をどうやって突破していくのかを、いつも説明させてもらっています。
僕は今まで、自分のため親のためと思いながら勉強を続け2度大学へ行っています。初の大学入校時に、講演会の依頼を受け、その時に難聴のお子さんを持つ方々に、初めて講演をさせてもらいました。その際、保護者の方々からの質問が予想以上に多く、僕の体験談でしかアドバイスは出来なかったのですが、医師になれるのかなぁ~? 実現できるかなぁ? ……う~ん、やってみるしかないか! という思いに至り、両親の手厚いサポートも相まって、今の私がいます。
それでなんとか医師にはなることが出来ましたが、皆さんに貢献することはまだまだ力不足だなと感じています。でも今こういう場に立たせて頂き、僕を評価してもらえるということは、本当に意外でしたが、とても信じられないことであり、非常に嬉しく思います。
表彰はとても嬉しいことなのですが、僕はそこで全然満足はしていません。まだ途中も途中だと思っています。いま耳鼻科医として研修医を終えて5年目、医師としては7年目になりますが、8月3日に専門医試験がありますので、今まだその途中です。専門医試験の後は、耳の方に専門をもって、ありのまま舎の期待に沿えるような、理解を得られるような医師を目指していきたいと思っています。
僕は講演会の時にもこれをよく話すのですが、”障害”という言葉にマイナスのイメージはゼロです、むしろプラスと思っています。障害をもって生まれてきて、親を恨んだことも一度もなく、むしろ幸せなのかなと思っています。
何故こんなにもプラス思考でいられるのかは、自分でも分かりませんが、難聴をおったからこそ、今も昔も変わらず凄く両親と仲良しでいられるのだと思っています。しかも難聴をおったからこそ、ここにいらっしゃる方々と出会う機会に恵まれたとも思っていますし、出会いも増えてきています。
それでやはり嬉しい言葉として、僕の頑張っている姿、医師を志すために再受験するということを聞いて、僕の高校時代の友達も同じように再受験を決意し、医師になろうという人もいました。こうやって少しでも刺激を与えられる人になれれば良いのかなと思っています。なかなかまとまりのない内容ですが、本当にこの受賞は通過点だと思いながら、また初心を忘れることなく、またどこかで僕に診てもらいたいと思ってもらえるような医師を目指していきたいなと思います。」
以上が、吉田氏の喜びの声になります。
当クリニックHPへの掲載を二つ返事で快諾して下さった吉田先生に、お礼を申し上げたいと思います。
まだまだコロナ禍中であり、マスクを必需とする状況下での診察は、時間も要しますし、手際よくいかないとこも多々あるかと思いますが、この受賞をも一つのステップにして頂き、今後のご活躍に繋げられることを祈念いたします。
山形の学会にて
本レポートを執筆中の2022年10月、院長が山形県で開催された第67回日本聴覚医学会において「マスク装用難聴児・者の困惑に対する医療関係者の理解」と題して演題発表を行ないました(図2~4)。
その会場で院長は、学会に参加された吉田先生とお会いすることが出来ました。
僅かな時間でしたが、貴重な出会いにこの場を借りて感謝申し上げます。
図2 会場となった山形テルサ
図3
図4