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2022年3月(No.325)

小児の中耳炎シリーズ⑤
ラジオ3443通信「学校健診と急性中耳炎」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年7月3日OAされた、耳鼻咽喉科にまつわる病気の話題を分かりやすく、歴史や時には意外な観点からの話題を交えてご紹介いたします。

79 学校健診と急性中耳炎

An:
 三好先生、健診も含めてなんですけれど、自覚症状に乏しい滲出性中耳炎を、どうやってピック・アップし、どうやって治療するんでしょうか?

Dr:
 耳鼻咽喉科外来を受診する滲出性中耳炎の子どもさんは、すでに急性中耳炎などで耳の痛い状態を経験してから、耳鼻科医のもとを訪れます。ですから、親御さんも子どもさんの耳の状況には注意深くなっており、聞こえの微妙な悪化も耳鼻科医に伝えてくれます。

An:
 それなら、診断もつきやすいかも。

Dr:
 それに対して、一般の耳鼻咽喉科学校健診では、子どもたちがさざめく保健室の中での健診ですから、滲出性中耳炎は見付けづらいのも事実です。それに、前回お話ししたように子どもたちの耳の穴の中には、結構いっぱい……。

An:
 耳かすがたまっている(笑)!?

Dr:
 まず耳かすを取りのぞかなくては、鼓膜そのものを確認することができません。

An:
 鼓膜が見えなきゃ、滲出性中耳炎の診断も難しいのかも知れませんよね。

Dr:
 その点、3歳児健診では最初から滲出性中耳炎の検出を目的として、ティンパノメトリという機器を使用して健診を行ないます。

An:
 それは便利ですね。

Dr:
 もちろん、耳かすが完全に詰まっちゃっている耳では正確な結果が出にくいものですし、たまたま健診のその日に風邪っぽかったりする子どもも、健診結果が怪しくなりますから。

An:
 検査結果を、無条件にうのみにするわけには行かないんでしょうけれど。

Dr:
 でも、怪しいと指摘してもらいさえすれば、あとは耳鼻咽喉科受診で正確な診断がつきますから……。

An:
 見逃されてほったらかしにされるより、はるかに良いんですよね。

Dr:
 学校健診の時期が、大体プールの始まる直前ですので、5~6月の耳鼻咽喉科外来は、学校健診の用紙を携えた子どもさんと親御さんで、満杯になります。

An:
 耳かすさんが多くって、大変そうですね。

Dr:
 耳かすをきれいに除去しないと、プールでふやけて耳の聞こえが悪くなったり、その奥に潜む滲出性中耳炎を見逃したりして、なんのための健診か分からなくなりますから。でも、すっかり固まってしまった子どもさんの耳かすを、きれいに掃除するのって大騒ぎなんですよ。

An:
 子どもさんが、びっくりして泣きだしたりするかも知れませんものね(笑)。

Dr:
 医者って怖いみたいなイメージがあるところへ、ピカピカのライトを頭に付けた耳鼻科医が、冷たい金属性の医療機器を使ってお耳の中をのぞき込むんですから……。もしも、わたしが逆の立場だったら、絶対に泣きますよね(笑)。

An:
 耳かすって、どうやって取り出すんですか、狭い耳の穴の中から。

Dr:
 少し、耳かすをふやかす役割のある水薬を耳かすに垂らしてふやかして、それから水鉄砲でジョボジョボ洗うんですけどね。

An:
 子どもさんは、じっとおとなしくしているものなんでしょうか(笑)?

Dr:
 親御さんと看護師さんたちと、何人かで子どもさんを必死でささえるんですけどね。耳かすをとられる子どもさんは、泣くしわめくし鼻みずをたらすし、手足をあちこちから出して来るし、よだれで滑るし(笑)。そこへ水鉄砲ですから、耳鼻科医も看護師さんたちも親御さんも子どもさん本人も、火事の消防活動の後みたいな、水びたしの状態となります。中には、水鉄砲や水の入った洗面器を蹴っ飛ばしてしまう子どもさんもいて(笑)。どんなあり様か、江澤さんの優秀な頭脳で想像してください。

An:
 涙・鼻みず・よだれに汗が加わって、そこに蹴っ飛ばされた水鉄砲なんですね(笑)。

Dr:
 それでも、あんまり固まっちゃった耳かすでは、一度で洗い切れなくって。

An:
 そんなときは、どうするんですか?

Dr:
 先に触れた、耳かすをふやかす水薬を処方しておきまして、改めて子どもさんの耳の中へ、何回か垂らしてもらいます。

An:
 お薬で、耳かすがふやけたら……。

Dr:
 1回目の耳かす洗いのときにはだまされた子どもさんも、もう2度とこちらの言うことを聞きませんから……(笑)、素早く準備をしてあっという間にお耳を洗ってしまいます。

An:
 耳かすって、大変なんですね! 江澤は、耳の中さえきちんと見ることができたら、あっという間に取り除くことができるのかと、思ってました。

Dr:
 耳かす自体も、カチンカチンに固まっていると、苦労するんですけどね。でも外からは、ただの耳かすに見えたとしても、慢性化した中耳炎の耳垂れの乾燥したものだったりして。その内部に、ひどい炎症の隠れていることも、まれにありますから。

An:
 そうやって学校健診でチェックされると、耳鼻科医に紹介されて受診するんですよね?

Dr:
 健診が終了すると、何か指摘された子どもさんは、疑わしい病名とプールの可否、つまり水泳の授業を受けて良いのかどうか、問い合わせのプリントを学校から手渡されます。

An:
 暑くなって来ると、子どもさんにはプールはとても楽しみですもの、ね。その前には、健康チェックを済ませて、思いっきり水泳の授業をエンジョイして欲しいですよね。

Dr:
 江澤さんも、プールは楽しみだったでしょう?

An:
 えぇ、梅雨も終わり頃になって蒸し暑くなると、一日も早く水に入りたくって、ウズウズしていました。そういえば先生、昔中耳炎の子どもさんは、プールはダメって聞いたことがあるんですが、ホントですか? 滲出性中耳炎の子どもさんも、水泳禁止なんでしょうか?

Dr:
 中耳炎全部が泳げないわけじゃないんですけど、大切なお話ですので。次回、ご説明しましょう。

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