2021年7月(No.317)
げんき倶楽部杜人 ラジオレポート
ラジオ3443通信~難聴の種類①~
耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって40年。今回は2014年5月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]
難聴の種類①
●An.
お年寄りの難聴にはさまざまな種類があって、一口では形容し切れないとのことでしたが先生、もう一口ずつ解説をお願いしたいんですけど。
●Dr.
私は江澤さんのおねだりには、非常に弱いので…。難聴には、大きく分けて2種類あります。一つは「伝音難聴」もしくは「伝音性難聴」と呼ばれる、中耳炎のような聞こえの悪さ。もう一つは「感音難聴」あるいは「感音性難聴」と称する「老人性難聴」のような聞こえの悪化です。この両方の重ね合わさった「混合性難聴」と名付けられたタイプもあります。
●An.
それは実際には、どんな難聴なんでしょうか。
●Dr.
江澤さん、「耳」って言葉は人体のどの部分を示すんでしょう。
●An.
耳たぶなど外へ出ている部分が、真っ先に頭に浮かびます。
●Dr.
医学用語では耳介(じかい)と呼びますが、これは集音器の一種ですね。その耳介で集めた音は、耳の穴へと入っていきます。
●An.
耳穴って、どれくらいの深さなんでしょうか?
●Dr.
耳の穴を外耳道って呼ぶんですけど、成人では大体3・5㌢くらいあります。この奥に鼓膜が存在します。
●An.
空気の振動である音を感じて、細かく振動するんでしたね。
●Dr.
鼓膜の裏側のスペースを中耳腔(ちゅうじくう)っていいますが、鼓膜に連なる三つの小さな骨があります。音は、この骨を伝わって内耳に到着します。
●An.
音の繊細で微妙な振動を伝えるんですから、すっごく小さな骨なんでしょうね?
●Dr.
内耳に一番近い位置にあるアブミ骨は、人間の体で最も小さな骨で、その高さは3㍉しかありません。
●An.
内耳って確か、めまいの原因として有名なBPPVの、三半規管のあるところだったような気がします。
●Dr.
さすがは江澤さん。ここまで触れてきたように、耳は耳たぶだけでなく、外耳、中耳、内耳と三つの部分から成っています。そして内耳には、めまいを感じる三半規管、体の方向を感じ取る前庭、音を感じる蝸牛すなわち、かたつむり管が存在します。
●An.
アレッ、先生。音は、外耳と中耳までは「伝わる」もので、内耳では「感じる」ものなんですか?
●Dr.
鋭いですね。音、つまり音波の振動は、外耳と中耳までは揺れの物理的エネルギーなんですけれども。内耳では電気的エネルギーに換えて、電気信号として脳へ送るんです。
●An.
脳は、聴神経などの神経を介して、電気信号を感じ取るわけですね。
●Dr.
こうした聴覚に関する体の構造は、音を伝える部分と、音を感じる部分に分かれています。前者の音を伝える外耳と中耳を、音を伝えるシステムという意味で「伝音機構」といいます。
●An.
それじゃ後者、音を感じる部分は「感音機構」ですね!
●Dr.
その通りです。ですから難聴は、外耳もしくは中耳の病気で生じる「伝音難聴」と、内耳、あるいはそこから脳に至る神経に原因があって発生する「感音難聴」、両者の重なった「混合性難聴」とに分類されます。耳の病気の種類によって、聞こえの悪さのタイプと程度は異なります。耳の不自由な人の場合も、その原因となる病気によって、聞こえ方が違います。
●An.
耳の病気の知識は、耳の不自由な人に対応するためにも、最低限必要ですね。