3443通信3443 News

2021年11月(No.321)

 

小児の中耳炎シリーズ①
ラジオ3443通信「学校健診の重要性」

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年6月5日OAされた、耳鼻咽喉科にまつわる病気の話題を分かりやすく、歴史や時には意外な観点からの話題を交えてご紹介いたします。

75 学校健診の重要性

An:
 三好先生、今回から少し話題を変えて、この時期どこの学校でも真っ最中の、学校健診について、教えて頂きたいんですけれど。

Dr:
 日本では、義務教育の期間、学校保健法という法律によって、小中学生の学校健診が行なわれます。

An:
 江澤も小学校の頃、学校にお医者さんがやって来て、恐がって泣きそうになってる子ども相手に、泣かないよう優しく診てもらった記憶があります。

Dr:
 学校健診では、児童つまり小中学生が健全な学校生活を過ごせるよう、病気の診断よりも健康管理の観点から、子どもたちを診るんです。

An:
 健康って、なんだか漠然としてますけど、つまり病気じゃないってことなんでしょうかしらね?

Dr:
 定義のお話をすると、ややっこしくなる面もあるんですけどネ。WHOつまり国際保健機関の概念では、「身体的にも精神的にも、また社会的にも完全な良好な状態にあることであって、単に病気や虚弱でないということではない」こと、なんだそうです(笑)。まぁ、それはそれとして(笑)。

An:
 で、健康管理と言いますと?

Dr:
 具体的なお話をしますと、学校健診では、内科・歯科つまり歯医者さん・眼科・耳鼻咽喉科が、学習に差し支えのある病気がないかどうか、チェックするわけです。

An:
 三好先生も、耳鼻咽喉科健診にはあっちこっちの学校へ、行って来られたんでしょうよね?

Dr:
 仙台市の学校だけじゃなくって、北海道白老町や栃木県栗山村などにまで赴いて、小・中学生全員の健診をしました。

An:
 耳鼻咽喉科健診って、どんなことをするんでしたっけ?

Dr:
 病院へ来てもらって、子どもたちを詳しく検査するわけではないので、ごく簡単なスクリーニング検査だと思ってください。

An:
 スクリーニングなんですね?

Dr:
 ですからこの健診では、人間ドックを受けたときみたいに、表から見えない病気まで発見するのは、ちょっとムリです。
 でも、例えばプールに入ると拗(こじ)らせてしまうような、中耳炎とか副鼻腔炎つまりハナ垂れ小僧さん、もしくは子どもさんでも睡眠時無呼吸症候群つまりSASになりかねない、扁桃(へんとう)の肥大など。そうした、学校生活や学習の妨げになりそうな病気は、健診で見つかります。
 耳かすも、良く見つかるんですけどね。

An:
 えっ、耳かすも病気なんですか?

Dr:
 健診で耳穴をのぞき込んだだけで、奥まで見通せるわけじゃありませんので。その奥に何があるか、分かったもんじゃありません。
 内側に中耳炎が隠れていたり、耳かすでもすごくがっちり固まっていたりすると、プールでふやけて難聴、つまり聞こえのすごく悪くなってしまったりすることもあって。

An:
 だから、学校健診はプールの前の時期に、一斉に実施されるんですね!?

Dr:
 さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。その通りです。
 ましてや、中耳炎とか鼻炎とか、具体的な病名の健診結果が出るようでしたら、絶対に耳鼻科外来受診はおろそかにしないでください。

An:
 その鼻炎って病名、つまりアレルギー性鼻炎のことなんですか? 花粉症とか。

Dr:
 いえ、これも健診での約束が決まっていて、ですね。健診で一目診ただけでは、アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎なのか、区別のつきかねることもありますから。だって、アレルギーの検査や鼻のレントゲン検査をしなくっちゃあ、その両者は紛らわしいこともありますから。

An:
 先生でも、黙って座ればピタリとあたる、というわけには行かないんですね(笑)。

Dr:
 それができるのは、世界中で江澤さんただ一人ですよ(笑)。

An:
 じゃあ、健診でひっかかった子どもさんたちのために。少し関連する病名について、教えてください。

Dr:
 お話ししましたけど、耳垢(じこう)とか耳垢栓塞(じこうそくせん)とか診断されたら、それを除去して中の鼓膜まで確認せねばなりません。
 耳掻きや綿棒なんかじゃ歯の立たないような手強(てごわ)い、石のような耳かすの詰まっていることが多いですし、なにより中耳炎の有無を調べることは重要です。

An:
 中耳炎ってたしか先生、ハナ垂れ小僧さんに多いんでしたよね(笑)。

Dr:
 さすが、江澤さん。良く記憶してますね。でも、ここではもうちょっと詳しく、ご説明させて頂きます。

An:
 もっと深いお話が伺えるんですね?

Dr:
 一口に中耳炎と言いましても、ですね。大雑把に分類して、急性・慢性・亞急性(あきゅうせい)とありましてね。

An:
 急性・慢性の中耳炎は分かりますけれど、何ですかそのあ・あ・あ……。

Dr:
 亞急性(笑)。

An:
 亞急性中耳炎なんて、聞いたことがありません。

Dr:
 以前のOAでは、滲出性中耳炎としてお話を進めたものですから、分かりにくいかもしれませんね。

An:
 思い出しました。それらは、どういうタイプの中耳炎なんでしたっけ?

Dr:
 まず急性中耳炎は、風邪のハナ垂れさんで、青っパナが内側から鼓膜の内側に入り、中でウミがたまって痛むものです。

An:
 すっごく痛いんでしたよね?

Dr:
 それに対して慢性中耳炎は、急性中耳炎などのために鼓膜に穴が開いちゃって、ときどきバイ菌が入るとウミが出るものです。

An:
 経過が長いんですね。

Dr:
 そして今回話題にするのは、第三の中耳炎、滲出性中耳炎です。

An:
 お話が楽しみです。次回を待ってます。

 

院長監修の医学コミック「中耳炎世界の冒険」もご覧下さい。

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