2021年9月(No.319)
聴覚支援学校 耳鼻科健診レポ
秘書課 菅野 瞳
はじめに
2021年6月22日(火)、宮城県立聴覚支援学校にて、幼稚部から高専部までの生徒さん、74名の耳鼻科健診を行いました。当院長は、1983年からの39年間、聴覚支援学校(当時は宮城県ろう学校)の校医を務めていますが、今年で70歳を迎えたため来年度以降は学校医を辞退する運びとなりました。
そのため今回が最後の健診となります。
いざ健診
今年も前年度同様コロナ禍中での健診となったため、喉をのぞく耳と鼻のみの健診です。
いざ健診がスタートすると、生徒さん一人一人がしっかりと密を回避する距離をとって列をなし、自分の番を待ちます。
着席をしてまずは左耳、次いで右耳、最後に鼻を診る健診ですが、着席した時分から健診終了まで表情が強張ったままのお子さんがいたかと思えば、逆に着席した際には緊張で顔が強張っていたにも関わらず、院長が「はい、これで終了」と伝えると、えっ? もう終わり? っと物足りなさそうな表情を浮かべるお子さんがいたり、どの学校へ行っても見られる十人十色の光景がそこにはありました。
先生方と生徒さんの、大変迅速な対応のお陰で、予定時間よりもだいぶ早くに健診が終了し、校長先生との歓談の場を設けて頂きました。
まず話題にのぼったのは、このコロナ禍においてマスクは手放せないため、聴覚障害者は健常者よりも、尚一層の意思疎通困難が生じている点についてです。
聴覚障害者は、全てを手話に頼る訳ではなく、相手の表情や口の動きからも話の内容を読み取ります。マスクを装着することにより、視覚から入ってくる情報量が軽減してしまえば、意志疎通困難を招くのは必然です。先般、これを解決に導くマスクが、ユニチャーム社より発売されました。未だ購入するにあたり、購入数に制限が出ていたり、価格が普通のマスクに比べ高額だったりするため、なかなか万人にはいきわたり辛い状況下ではありますが、先の見えないコロナ禍の中で、こういったマスクの普及が拡大することを切に願うばかりです。
院長は、39年間もの間担った学校医の思い出を振り返るかのように、学校医を引き受けた当初に出会った少年の話をされました。「何と言ったかな~確か遠藤君、先生になって活躍をしているでしょう」っと。無論僅か2年ばかりの健診補助の私には、遠藤君の存在は分かる由もなくポカンとしていると、校長先生の表情が一変。
「はい先生。遠藤良博先生ですね。理科の教諭で、陸上部の顧問をしてもらっています。そうですか、院長先生、よく覚えてらして」
校長先生からのお言葉に対して院長も「それはそれは……」と、満足げな表情を浮かべられていました。
着任されてまだ1年目の校長先生と、39年間貴校の学校医を務めている院長ではありますが、ヒュンなところから顔を出したこの絆は、院長が携わられた年月の重みを感じさせました。
校長先生からも、院長の功績を讃えるお言葉を頂きましたが、39年間、本当にお疲れ様でございました。