みみ、はな、のどの変なとき
69 小児鼻出血とアレルギー
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アレルギー性⿐炎が存在しても、くしゃみ・⿐みず・⿐づまりの典型的な⿐症状ではなく、⿐⾎の⽬⽴つことがあります。特にこの傾向は、⼩さな⼦どもに強いようです。⼦どもはアレルギー性⿐炎の症状があっても、それをうまく親に伝えることができませんので。親も⼆本棒(⻘っぱな)ならともかく、⿐⾵邪みたいな⿐症状がアレルギーとは気付きにくいものです。結果的に⿐⾎が出て⼤慌て、ということになります。
現実に、私たちの疫学調査でも⼩さな⼦どものアレルギーには、⿐⾎をともなう傾向が明らかでした。⽩⽼町の⼩学校1年⽣の児童775名では、⿐⾎の出易い⼦ども234名のアレルギーの頻度が38.0%だったのに対して、⿐⾎の⾒られない⼦ども545名の頻度は23.1%でした。
⼦どものアレルギー性⿐炎で⿐⾎を出し易くなるのには、いくつかの理由があります。最⼤の理由は、アレルギー性⿐炎では⿐が痒くなり⼦どもは無意識に⿐の⼊り⼝を掻きむしる、という事実です。⿐の⾎管は⿐の⼊り⼝部に集まっており、キーセルバッハ部位と呼ばれます。そして⼦どもが引っ掻くのは、まさにその部位です。⿐⾎が出て当たり前、という気さえします。第⼆の理由は、アレルギーのとき出現するヒスタミンという物質が出⾎傾向(⾎が出易くなる状態)を助⻑する、ということです。それに感染が加わっていると、つまり蓄膿があったりすると、もっと出⾎し易くなります。
⼦どもが⿐⾎を頻繁に出すようでしたら、アレルギーが無いかどうか⼀度は疑うべきでしょう。幸いアレルギー性⿐炎の⼦どもでは、⽬が痒かったり顔の⽪膚⾃体も痒くなるので、⼿でいつも顔を擦っていることが多いものです。これを、英語でアラージック・サリュート(アレルギーのあいさつ)と、呼ぶことがあります。またなんとなく顔をしかめるくせがあったり、家族内になんらかのアレルギー疾患をもった⼈のいることもあります。良く気を付けて観察すれば、容易に想像がつきます。
なお⼦どもの⿐出⾎の場合、応急処置として⼦どもを仰向けに寝かせるのは⽌めてください。⾎液が胃に流れ落ちて、気持ちが悪くなります。そのあげく、胃液が混じってどす⿊くなった⾎液を吐くことにもなります。むしろ⼦どもをいすに掛けさせ。うつむきかげんの状態で⿐の⼊り⼝すぐの軟らかい部分を指で押さえる。それが良いと思います。⼦どもの⿐⾎はキーセルバッハ部位からのものが多いので、そこを圧迫する訳です。気分を落ち着かせる意味で、⿐根部を冷やすのも⼀つの⽅法です。⿐⾎のときに応急処置として、⾸のねっこを叩く⼈も居ますが、あれは意味が良く判りません。ビールの栓を抜くときにその王冠を叩くと泡が出ない、その儀式と同じみたいで余り効果は期待できそうにない、そんな気もしますが。
ともあれキーセルバッハ部位の圧迫により、⼦どもの⿐⾎は5分くらいで治まるようです。
なお、ごく稀ではありますが⼦どもの⿐⾎の中に、本当に⽩⾎病などの⾎液疾患が紛れ込んでいることがあります。やはり⿐⾎を繰り返す⼦どもは、念のために⽿⿐科医に診せておく⼼懸けが必要です。
それに対して⼤⼈でも、⼦どもほど頻度は多くありませんが、⿐出⾎にアレルギーの関与していることがあります。これはヒスタミンの作⽤によるものと思われ、その対応は⼦どもの場合と同じです。
成⼈男⼦で、⼥性の美しい写真(服を着ていないことがなぜか多いようです)を⾒ると⿐⾎を出す⼈がいるそうですが、医学的な解明はなされていません。もしかすると……⼥性アレルギーなのでしょうか︖
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