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みみ、はな、のどの変なとき

61 中国のスギ花粉症

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中国でもスギ花粉症の多発する可能性がある、と書きました。

それにしてもスギ花粉症はその発⾒以来、⽇本特有のアレルギー疾患と考えられて来たはずです。中国になど、発⽣し得るものでしょうか?
 スギ花粉症の原因植物である⽇本杉が、わが国特有の植物と信じられて来たことこそ、どうやらスギ花粉症も⽇本にしか存在しないと信じられて来た原因のようです。

けれども私たちが中国各地でアレルギー調査を⾏なうと、スギ花粉にアレルギー反応陽性となる被験者も多々⾒られますし、柳杉という中国産杉の花粉が中国のあちこちで⾶散している記録だって⾒られます。
 この柳杉がもしも⽇本杉と同じものならば、あるいは同じ性質を持つものならば、中国でもスギ花粉症は発⽣するはずです。

私たちは、中国において柳杉の天然林として知られる天⽬⼭と、⽇本の屋久島の天然林からサンプルを採取して両者のDNAを分析しました。すると両者のDNAはほとんど同じで、もともと両者は同⼀のものであったらしいことが判りました。
 考えてみれば、これは当たり前です。200万年前に杉が地上に出現した頃、中国(アジア⼤陸)と⽇本は地続きでした。その頃ナウマン象やマンモスが⽇本に来ており、その化⽯が⽇本で⾒つかっています。

それに⼈類だってその時代、陸伝いに世界を闊歩していました。現在でも南⽶の現地⼈に蒙古斑の⾒られるのは、こうしてアジア系の⺠族が歩いて南⽶まで移動したため、と⾔われています。杉だって中国と⽇本に、地続きに連続して⽣えていたのではないでしょうか。
 氷河期が終わって海⾯が上昇すると⼤陸棚は⽔没し、⽇本海ができます。この⽇本海によって⽇本の杉と中国の杉は分かたれ、別々の種類みたいに錯覚されますが、やはりもともとは同じものだった訳です。そして私たちは南京医科⼤学にて、⽇本以外の国における世界で初めてのスギ花粉症を発⾒しました。

症例は32歳の⼥性で、1998年春、中⼭陵(孫⽂の墓)で遊んでいたところ、くしゃみ・⿐みず・⿐づまりが⽌まらなくなり、この症状は年々増強して来ました。そして昨年、この⽅は私たちの外来を受診し、アレルギー学的検査でスギ花粉症と診断されました。
 この、⽇本以外の国における世界初のスギ花粉症は、実は200万年前にその原因があったことになります。

 

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