3443通信3443 News

 

みみ、はな、のどの変なとき

60 他山の石と前車の轍

前話  目次  次話

 

他⼭の⽯とする、という⾔葉があります。他⼈の⾏為を参考に、⾃分の⾏いを正すことを意味します。

⼀⽅、前⾞の轍を踏む、という例えもあります。以前に他⼈が失敗した経験を⾃分が活かせなかった苦い体験のことです。
どうも⼈類は少なくとも花粉症に関しては、他⼭の⽯よりも前⾞の轍を選ぶ傾向があるようです。
 ここまで書いて来た、英国初の花粉症発症の事例や⽇本のスギ花粉症激増の経緯と似たようなことを、⼈類はもう⼀度繰り返しているみたいです。

その現場は、なんと⽇本のお隣の国、中国です。

中国でも実は、19世紀の英国や戦後の⽇本のように、国中の⽊々をほとんど切り倒してしまいそうになった時期がありました。それは1958年の、⼤躍進運動のときです。その折中国では⽑沢東の号令⼀下、世界の⼀流国に肩を並べるべく粗鋼の⽣産を上げようと、狂奔状態に陥りました。そして全⼟の⽊々は、燃料として燃やし尽くされたのです。 それは、あの「ワイルド・スワン」にも書いてありますが、中国の⼭々は結果的にほとんどハゲ⼭となりました。

その結果、戦後の⽇本のように治⼭や治⽔が問題となりました。つい先⽇、江沢⺠⾸席が⼈⺠解放軍を指揮して、⼤洪⽔に⽴ち向かった姿が新聞に掲載されましたが、あんな⻑江の氾濫だって⼤躍進の名残と形容できなくはありません。

ですから中国でも、⽇本と同じようにハゲ⼭に⽊々を植えたのです。そうした植林の際に、どうやら他の多くの⽊々とともに杉も、⼤量に植樹された形跡があります。
 もしも中国でも、こうして植えられた杉の⽊からの花粉が、多数の花粉症患者を発⽣させたとしたならば、中国も⽇本や英国の花粉症の轍を踏むことになります。

それにしても中国ではなぜ、杉を植林すべき⽊々の中に加えたのでしょうか。私たちは、中国共産党揺籃の地である井岡⼭の光景を⾒たとき、そのなぞが解けたような気がしました。
 なぜならこの井岡⼭は、全⼭杉によって覆われているのです。そして当時の⽑沢東の寓居は、今でも杉林の前に位置しています。もしかすると、⽑沢東と⼀緒に⾰命を戦った共産党幹部の頭の中には、植樹と聞いてあの懐かしい杉の⽊しか、思い浮かばなかったのかも知れません。

 

関連リンク
 ・花粉症の方へ

前話  目次  次話

[目次に戻る]