みみ、はな、のどの変なとき
59 日本におけるスギ花粉症増加
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前項の英国におけるカモガヤ花粉症出現の経緯とほぼ等しいことが、戦後の⽇本で起こりました。スギ花粉症の激増です。
第⼆次世界⼤戦前は⾒られなかったスギ花粉症が、戦後になって激増した原因として3つの要因が考えられます。
1つは、アレルギーの原因物質(アレルゲンと⾔います)である、スギ花粉そのものの増加。
もう2つは、動物性蛋⽩質や動物性脂肪の摂取量が増加し、⼈体内の抗体産⽣能⼒が強くなったこと。これは最初の例え話で説明するならば、防衛能⼒が強くなって過剰防衛を起こし易くなった、ということでしょうか。 さらにもう1つ、アレルゲンであるスギ花粉を⼈体まで運ぶ媒体である⼤気の、条件が悪化したこと。この条件悪化とは、⼤気汚染とは限らないのですけれど。
これら3要因の中でもスギ花粉症に関しては、第⼀のアレルゲン量の増加が明確です。 なぜなら第⼆次世界⼤戦の直後、復興のために⼭々の⽊々は切り倒され、その跡はハゲ⼭になりました。するとちょっとした⾬でも⼤洪⽔になったりして、治⽔や治⼭の問題が⽣じます。それを防ぐ⽬的で、1950年代に全国⼀⻫に杉の植樹が⾏なわれました。
杉はそのほとんどが、樹齢30年近くになると毎年⼀定量の花粉を⾶散させるようになります。ですから1950年代に飢えられた杉の⽊は、樹齢30年となる1980年前後に⼤量の花粉を⾶ばせる計算になります。
そして確かに、⽇本でスギ花粉の⼤量⾶散が最初に起きたのは1976年で、1979年には社会問題にまで発展しています。さらにそれ以降、スギ花粉の⾶散量は増加する傾向にあり、その傾向とスギ花粉症の増加状況との間には、密接な関係があります。
つまり他の要因はいくつか考えられるにせよ、スギ花粉⾶散量の増加とスギ花粉症激増とは関連があり、それは戦後の杉植樹の結果だということが判ります。
こうした経過は、どうでしょう、英国における世界初の花粉症出現の様⼦と、実に良く似ていると思いませんか︖
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