みみ、はな、のどの変なとき
58 花粉症のルーツ
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それではそのようなアレルギーは、どうしてこんなに増えたのでしょうか。その原因を、今では国⺠病とさえ形容される花粉症などアレルギー性⿐炎について、探ってみましょう。
実はこの花粉症やアレルギー性⿐炎、今でこそ⽇本の代表的な病気ですが、そのルーツは英国にあります。
19世紀の始め頃、英国の農⺠が牧草を刈り取って乾燥のためにサイロに収納する際、⼈によっては⿐からのどにかけて焼け付くような痛みとかゆみが⽣じ、くしゃみ・⿐みず・⿐づまりと涙の⽌まらなくなることがありました。
そしてこの症状は当時、⼀般的に「枯草熱(こそうねつ)」と呼ばれていました。
それを医学的に初めて報告したのは英国の学者ボストークで、同じく英国のブラックレーは枯草熱がイネ科植物の花粉に起因していることを、明らかにしました。こうして枯草熱は「花粉症」と呼ばれるようになったのです。
もちろん当時まだアレルギーという概念は存在しませんでしたから、その本態が理解されるまでしばらく時間がかかりました。
こうした英国における花粉症は牧草であるイネ科、ことにカモガヤによるアレルギーでした。そして英国では牧草地が多く、花粉症の原因であるカモガヤが繁殖し易いのです。
事実、英国の牧草地の⾯積は国⼟全体の45%にも達しており、これは世界最⼤と⾔われます。それに対し英国の森林の⾯積は、国⼟の9%に過ぎません。
それには、こんな背景があります。
英国がスペインの無敵艦隊を撃退し7つの海を制覇しようとしていた頃、英国内の森林は軍艦の製造その他の⽬的に使⽤され、ほとんど消滅しかかっていました。
これはスペインも同じで、スペインの無敵艦隊が復活できなかったのは、国内に軍艦製造のための⽊材が無くなってしまったためとさえ、伝えられます。英国では幸いその後産業⾰命が起こり、⽊造船の時代は終焉を迎えました。⼤英帝国は引き続き、その春を謳歌することができたのです。
そんな歴史の痕跡が、9%の森林⾯積、そして45%の牧草地となって残り、英国ではカモガヤが⼤量に繁殖することになりました。
それこそが、世界初の花粉症出現の、最⼤の理由なのです。
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