みみ、はな、のどの変なとき
26 エピソード7「難聴者の孤独な心理」
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昔、⽇本⼈は外国⼈から話し掛けられると、なんとなくニヤニヤしてあいまいな対応をする、と批判じみた⾔い⽅をされたことがあります。けれどもあれは、わたしのような劣等⽣から⾔わせれば、聞き取ることもできないような英語で話し掛けられたら、そう応対せざるを得ないのではないかと思うのです。別に、ニヤニヤしたくてニヤニヤしている訳ではありません。相⼿が何か⼀⽣懸命に話し掛けて来るのですがまったく聞き取れないので、⽌むなくそうしているだけのような気がします。そのくせそんな対応をしている時の⼼の中は卑屈で、孤独感でいっぱいです。
⽿の聞こえない⼈というのは、そのような英語の劣等⽣が外国⼈から話し掛けられた時のような、孤独なつらい気持ちで毎⽇を過ごしているのではないでしょうか。
同じ⽇本⼈なのに、話し掛けられてまっとうな対応ができない。⽌むを得ず、なんとなく笑みを浮かべてつらい時間をやり過ごす。そのような⽇々が続いたとしたら、⼼理的にも影響があると考えるべきでしょう。
鈴⽊淳⼀はその著書「伝⾳性難聴へのアプローチ」(篠原出版)の中で、難聴者の⼼理・性格・⾏動の傾向について、以下の特徴を挙げています。
a劣等感,卑屈,羞恥⼼
b性格への影響
c単調な表情,微笑を絶やさない傾向
d抑うつ症,仮⾯うつ病
e⾮社交的,友⼈の減少,対⼈恐怖
f被害者意識,被害妄想,追跡妄想
g⾃責感,⾃罰的,克⼰⼼
h意欲の低下,中途半端に⽚付ける
i遠慮,臆病,孤独癖
j⾃信⽋乏,⾃殺念慮
⽼⼈性難聴となったお年寄りたちも、こうした⼼理傾向となって来る可能性を否定はできません。難聴というのは、⽿よりもむしろ⼼の病気である側⾯も併せ持っているようです。
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