みみ、はな、のどの変なとき
14 エピソード5「急性中耳炎と髄膜炎」
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急性中⽿炎で髄膜炎などに⾄ることは、本当にめずらしいと⾔って良いほど稀なのですけれど、けれども皆無ではありません。
私もつい最近、⼤⼈の急性中⽿炎で髄膜炎のために昏睡状態(コーマ)に陥った2症例を、経験しました。
1例は54歳の男性で、私のもとを受診する1ケ⽉前に、他の⽿⿐科医で右側急性中⽿炎のために⿎膜切開術を受けています。引き続きその⽿⿐科医で処⽅は受けていたのですけれど、右側の頭痛がひどくて夜も眠れないほどとなりました。私が診たときには、⿎膜は正常でしたがその可動性が低下しており、滲出性中⽿炎に三叉神経痛を合併した状況と判断されました。そこで神経痛の処⽅を⾏ないましたが、服薬時以外はやはり強い頭痛が治まりません。他医で撮影したCTは異常無しとのことでしたが、念のため私は脳神経外科を紹介しました。
その数⽇後です。当地の市⽴病院の医師から電話が⼊り、この男性が夜間昏睡状態に陥り市⽴病院に⼊院中であることを知らされたのは。診断名は、髄膜炎。急性中⽿炎から頭蓋内に細菌感染が波及し、まさかとは思いつつもひそかに懸念していた事態が発⽣していたのです。
この経験以来私は、急性中⽿炎では髄膜炎などの頭蓋内合併症の危険性を、決して無視してはならないと改めて肝に命じました。
2例⽬は、1例⽬が受診してわずか3ケ⽉後のことでした。やはり他の⽿⿐科医にて急性中⽿炎と診断され、抗⽣物質などを内服していましたが右側⽿痛が治まりません。私が診たときには⽿漏が流出していましたので、⽿処置と抗⽣物質の内服・点滴を⾏ないました。ところがこの⽅も、しつこい頭痛が増強するばかりです。MRIを撮影しましたが、頭蓋内には病変が⾒つかりません。とはいえ1例⽬の体験があります。私は脳外科を紹介しました。今回幸運だったのは、昏睡状態に陥ったのが脳外科の薬局前の駐⾞場だったことです。この⽅は脳外科での外来診療を終え、精査の前に⼀時的に処⽅された頭痛薬を取りに院外薬局に出たところ、突然昏睡を起こして倒れたのです。
この⽅はそのまま脳外科に⼊院し、2週間後に私の外来を受診しましたが、まさか私も1例⽬の教訓が3ケ⽉後にズバリ活きるとは、思っても⾒ませんでした。
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