みみ、はな、のどの変なとき
3 自立心とピアス
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若い⼥性は、それにしてもどうしてあんなにピアスを着けたがるのでしょう。
また例えトラブルが⽣じて腫れようと膿にまみれようと、なぜあれほどまでにピアスを離したがらないのでしょう。
前記の理由を省くならば、それにはピアス装着時の年齢が関連しているような、そんな気がします。われわれの調査では、現時点の⽇本ではピアスをする⼈のピークは幼児期ではなく18歳から20歳にあることが判っています。この年代は⾼校を卒業し社会へ出るというだけでなく、精神⾯では⾃我の完成期でもあり、他⼈との差別化を意識する年頃でもあります。そしてその⾃我確⽴と⾃⼰の新たな⼈⽣への期待感が、ピアスへの若い⼥性の執着に結びついているようなのです。それはやはり調査で、ピアシング(ピアス装着)をする理由として単なるおしゃれや好奇⼼だけでなく、「⼈⽣のきっかけにしたかった」との動機を述べた⼈が全体の8分の1くらいいたことからも、想像がつきます。その年代を過ぎると、うそのようにピアスにこだわらなくなる⼈が多い現実も、ひとつの裏付けとなるでしょう。
これは結構良くこの年齢の⼥性に知られているエピソードですが、現在活躍中の早⾒優さん(⼥優の、早⾒優さんです。⽇本銀⾏総裁の速⽔優さんではありません。念のため。)が、ファースト・ピアスを装着したその⽇に⼥優としてスカウトされた、という有名な話があるのだそうです。そんなエピソードも⼀時期、若い⼥性のピアス熱を煽ったのかも知れませんね(図3)。
図3
でもこうした、⼈⽣のきっかけにするとか、運勢が変わるように、とかいった⽬的でピアシングをする⼥性の存在することは、やはりピアスにはなんらかの信仰的要素の絡んでいるらしいことを、想像せしめます。
こんな原始信仰的要因も考えられる、「ピアスをしたい」との若い⼥性の熱望は、ただ頭ごなしに禁⽌しても治まるものではなさそうです。
却って、親や教師に隠れて⾃分たちでピアシングする、その結果むしろピアス・トラブルが⼤きくなる、そういう結末ともなり兼ねません。それよりは、安全なピアス装着法で医療機関において実施してもらう、その⽅が実際的かも知れません。
関連リンク
・医学コミック「ピアストラブル殺人事件!?」
・3443通信 No.315 エッセイ「ピアスの穴の白い糸」
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