2020年1月号(No.299)
前号から続いて
前号に引き続き、横須賀基地研修の翌日に開催された「冨士総合火力演習」レポをお届けします。
毎年盛大に開催される総火演……。こちらの人気度を皆さんはご存知でしょうか? 私は院長より選出されて出向くまでは、総火演がここまでの人気度とは知りませんでした。
何と今年の倍率は約30倍だったそうです。ジャニーズのチケット以上でしょうか(笑)?
難関倍率のチケットを握りしめ、いざ総火演会場までは約40分のドライブです。
東富士演習場へ
演習会場までの道程は、宿泊ホテルからほぼ一本道のため非常に混み合うので、総火演当日は、フロント前に朝7時半の集合。早々の始動となりました。
「ここ3年は毎年足を運んでいますよ!」と仰る大先輩のオピニオン・リーダーの方から、総火演のよもやま話をお聞きし、その体験談に基づいて暑さ対策のための水分と、栄養補給のための食糧を多めに購入して準備万端。
実弾射撃の音を身体で受け止めるべく(大袈裟です)、心の準備も整いました。
無事演習場に到着し、ここから本会場までは、家鴨の親子のように列を成しながら、人をかき分け進みます。
そして見えてきた本会場。予想はしていたものの、その予想をはるかに超える人・人・人の数(図1)。日本国民の半分が集結したのではないかと思った位です(笑)。
図1 大勢の観衆が詰め掛けました
私達一行の眼下では、視界一杯の桟敷席が設けられている中、特等席ともいえるスタンド席を用意して頂き、総火演開始のその時を待ちました(図2、3)。
演習開始!
まずは99式自走155ミリ榴弾砲が、総火演開始を告げるファイヤー(図4)。
このオープニングファイヤーを皮切りに、陸自の装備品が次々と披露されました。
ドーンっと砲撃音が響いてから、数秒後に私のお腹部分が響き、そして着弾までは、数十秒の時間差があります。
身体に響く砲撃音は、腹筋運動をした後に腹筋がうなってプルプルするあの感覚に似ています。
砲撃音を身体に感じる事で腹筋が鍛えられるのであれば、総火演の終盤には、私の腹筋は幾つにも割れている事でしょう(笑)。
また、砲弾がそろそろ狙いを定めた地点に着弾……の頃合いを見計らい「弾着~」とアナウンスが入るのですが、このタイミングの見事さは流石プロ! の一言でした。
伝統技・富士山!
そのような中で、一段と観衆が湧いた一幕がありました。毎年恒例のようではありますが、名付けて「富士山型曳下射撃」です(図5)。17発の砲弾が同時に一直線に着弾するように射撃を行います。砲弾には起爆高度がプリセット(前もって設定しておくこと)出来るので、その高度を数メートル単位で調整することにより、観衆が見つめる大空に砲撃による富士山を描く事が出来ます。
この砲撃で描かれた富士山を一目見るだけでも、十分に見応えがありました。
私のお気に入り
あれもこれもと挙げればキリがありませんが最後に……、私が最も印象に残った砲撃は、92式地雷原処理車が地雷を誘爆させる爆薬ブロックを発射した時です(図6、7)。
現在も全世界には、7千万個の地雷が埋まっているそうです。地雷原を無力化する障害処理は、爆薬や組み立て式の爆破装置を、隊員が人力で設置し行ってきました。
この地雷原処理車には、投射する処理ロケット後部に爆薬付きのワイヤーが連結されていて、地雷原へ落下後に爆薬を起爆して誘爆をお越し、地雷原を無力化するという方法で処理します。
カンボジア地雷撤去作業に、ささやかながら支援をしている私は、今目の前で綺麗に弧を描き飛翔した地雷原処理ロケットが、地雷原での命の犠牲を少しでも減らしてくれれば良いなと、そんな願いを込めながら処理ロケットの落下を見つめました。
全車両が勢ぞろい
クライマックスには、演習に登場した車両が一堂に会し、一斉に発煙弾を投射しました(図8~17)。「状況……終わり」の力強いアナウンスにより全車両が停車し、演習は終了となりました。
演習終了後の私は放心状態……。暑さも当然ありましたが、それよりもはるかに始終ヒートアップ状態にあったためだろうなと想起しました。30倍の倍率にもなる総火演……その場に臨場した事で、毎年の高倍率の理由が身に染みて分かりました。
私を総火演の取材人? に選出して頂いた院長に感謝、そして隊員の方々の、日々鍛錬があるからこそ成し得る技を目の当たりにし、感動……今年一番の思い出になりました。