2020年2月号(No.300)
耳の換気が重要
滲出性中耳炎の治療は、中耳腔の換気が大原則です。普段は耳管がうまく働いており、換気は自然になされます。
しかし滲出性中耳炎では換気は悪化し、強制的に換気をしてやる必要があります。その方法の一つが図1のヴァルサルヴァ法で、鼻を摘んで思いっきり息みます。すると鼻内の気圧が高まり、図2のように空気が耳管から中耳腔へ流れこみます。
図1 ヴァルサルヴァ法 図2 空気の圧力で鼓膜を内側から押します
中耳腔の圧が高くなると滲出液はそれに圧排され、耳管からのどへ流れ出ます。それをもっと効果的に強い圧をかける手段が、図3のカテーテル通気です。これは多少痛みがあり、小さな子どもには泣かれてしまいます。
図3 カテーテル通気
そこで子どもには、図4のポリツェル球を使用した通気が行われます。
ゴム球を片方の鼻穴に密着させ、もう一方の鼻穴を指で押さえます。子ども本人に例えば「ハック」と発音させ、それに合わせてゴム球を圧し空気を鼻内に送り込みます。すると図2と同じ状態となり、空気が耳管から中耳腔へと流入します。「ハック」と言わせるのは、この発音の際に鼻腔と口腔とが閉鎖され、加圧された鼻腔の空気圧がより強く耳管へと向けられるからです。
図5は、カテーテル通気用の器具です。この器具の先端を鼻内へ挿入し、耳管開口部にあてます。そして器具の後端から空気や薬液を注入し、それを耳管内へと送り込みます。
その模様を示した図6を見てください。前項のエントツ男の煙草の煙のように空気が中耳腔に入る、それが滲出性中耳炎治療の基礎なのです。そしてこのことを、「耳管を介した中耳腔の換気」と呼んでいるのです。
図4 ポリツェル球による加圧 図5 カテーテル通気に使用する器具
図6 直接、耳管開口部に器具を押し当て加圧します
中耳炎については、コミックコーナーの医学コミック6巻「中耳炎世界の冒険」もご覧下さい。