2020年5月号(No.303) 水泳しても大丈夫? 滲出性中耳炎の子どもの水泳は大丈夫でしょうか? ことに治療のためにチュービング(鼓膜にチューブを通す処置)してある子どもでは、とても心配なことです。水泳を禁止するのも、かわいそうですし。 実は滲出性中耳炎でチュービングをしている子どもでも、耳栓を上手に利用すればプールもOKなのです。それはどうしてなのでしょう。 水泳中の耳・鼻・耳管の状態は、ぼくがジュースを飲むときに使うストローの状態に例えられます(図1)。 ストローを水に入れるとき、上に蓋をしなければ内部の水は周囲の水面と同じ位置まで来るものです(図1のA)。 それに対し指で上に蓋をすると、水は周囲の水位に関係なくストローの下面で止まります(図1のB)。ストロー内部の空気圧が存在するからです。 チュービングしていないときの、水泳時の水の流れは図2のようになります。 頭は水面下に入っており、通常呼吸は口から吸って鼻から吐くために、プール水は耳や耳管の入口部まで到達することもあります。 チュービングしてあると、図3のようになります。 空気圧の妨げがないためにプール水は耳管を抜け、水面の位置まで上昇します。 この際、水泳中の頭は水面下にありますので、プール水は頭の上を目指して流入します。そして中耳腔を通過するときに、感染を起こすのです。 それを防ぐためには、プール水の耳管内への流入を阻止せねばなりません。図4はその目的のために、耳栓を使用したときの図です。 この耳栓は、ぼくのストローに指で蓋をしたときと同じです。水がストロー下面で止まるのと同様、プール水も流入も耳管入口部でストップされるのです。 ただしこの耳栓、密閉度の高い製品をしっかり耳に詰めることが、とても大切です。