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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

イスラエル訪問レポ6 総務課 青柳 健太

はじめに

 2018年4月26日(木)から5月5日(土)にかけて、院長と私は中東のイスラエルに行ってきました。
 ここでは、数千年の歴史が根付くイスラエルについて、シリーズでご紹介いたします。

前号のあらすじ

 エルサレムから死海地方へと向かった一行は、まるで火星と見紛う荒涼とした大地と、かつてのユダヤ民族が征服された象徴となっているマサダ遺跡を視察しました。

4月30日(月)、5日目  死海地方 →ティベリア地方

 太古の時代、死海地方は人間を寄せ付けない深海の世界でした。その時のなごりが塩分濃度の高い死海と、海抜マイナス400mという地形に表れています(図1)。
 南北に長く窪んだ地形は熱された空気が留まりやすく、早朝から汗ばむ位の暑さを感じます(図2)。

(図1)スカイツリーの展望回廊と同じ高さです (図1)スカイツリーの展望回廊と同じ高さです

(図2)死海の夜明け (図2)死海の夜明け

死海遊泳

 朝一番の死海遊泳へと繰り出した一行は、ホテルのすぐ目の前にあるビーチへ向かいます(図3)。
 ビーチには、すでにいくつかのグループが水着姿で遊泳を楽しんでいました。メンバーも次々と死海へと足を踏み入れて、水に浮くと言う不思議体験を味わっていました(図4)。
 なぜ死海で体が浮くのか。それは死海の水が海水の10倍という多量の塩分を含んでいるからです。
 例えば、2つのサイコロがあったとします。片方は木製、もう片方は鉄製だとします。この2つを水に浮かべると、木製のサイコロは水に浮かび、鉄製のサイコロは沈んでしまいます。
 これは水の密度に比べて、木のサイコロは密度が低く(軽く)、鉄のサイコロの方が密度の高い(重い)素材で出来ているからです(図5)。
 この重さの差は比重と言われ、木のサイコロは水に沈むのに必要な密度(重さ)に達していないので浮かんでしまったのです。
 死海の水は約30%もの塩分を含んでいます。そのため、死海の水よりも比重の軽い人の体はプカッと浮いてしまうのです。
 私も水面に手のひらを押し当ててみた所、まるで透明の固形物でも触っているようなブヨブヨとした抵抗(浮力)を感じました。これは面白い!
 よほど塩っ辛いのかと思って水を舐めてみると、塩味よりも苦みを感じました。後から調べると、豆腐を作るのに必要な「苦汁」の主成分である塩化マグネシウムを多量に含んでいるため、死海の水は苦味を感じるのだそうです。
 また、他の様々な温泉成分も含んでいるため、水自体がペタペタとしたオイリーな感触です。
 実際に死海にはいった人の話では、体の末端にあたる手足が勝手に浮いてしまうので、泳ぐ動作が出来ずに不思議な感覚だったと話していました。
 しかし、楽しいばかりとは言えないのが死海の恐ろしさです。
 あまりにも塩分濃度が高いため死海の水に長く使っていると、肌が荒れてしまう事もあるそうです。また、目に水が入ってしまうと最悪の場合は失明の危険も考えられるそうです。そして多量に飲んだ場合、胃に穴が開いて胃出血の危険もあるとか? 世界一危険な湖水浴場ですね(図6)。

(図3)整備されたエン・ボケックのビーチ (図3)整備されたエン・ボケックのビーチ

(図4)死海に浮かぶ院長 (図4)死海に浮かぶ院長

(図5)比重で分かれる浮き沈み (図5)比重で分かれる浮き沈み

(図6)ホテルでの朝食 (図6)ホテルでの朝食

ティベリア地方

 朝の湖水浴を終えた一行は、ヨルダン川沿いを走る90号線を北上して北部のティベリア地方へと移動します(図7、8)。
 この地域の中心土地が、地方の名を冠したティベリアです。この町の興りですが、2千年前のイスラエル王ヘロデの息子アンティパスにより、時のローマ皇帝ティベリウスに敬意を表して建設されました。そのため、町にはローマ風の建築物の名残が随所に残されています。

昼食「エルミタージュ」

 ガラリヤ湖畔にあるこのレストランは、12世紀に十字軍の駐屯した要塞跡を利用しています。その作りはまさに頑強そのもので、人の頭ほどの大きさの黒い玄武岩を積み重ねて造られています(図9)。
 外気温は39℃の猛暑ですが、岩の冷輻射によって室内は涼しさを感じます。
 料理はお馴染みの、前菜類とそれらを挟むピタのサンド。それとガリラヤ湖の名物であるセント・ピーターズ・フィッシュです(図10)。
 この魚は、スズキの一種であるティラピアという魚で、日本でも鯛に似た身の魚という事でよく食べられていたそうです。
 名前の由来は、イエスの弟子である漁師兄弟の兄ペテロがガリラヤ湖で釣りあげたこの魚が銀貨を加えていた事から、幸運の魚、聖ペテロの魚と呼ばれるようになった事からきています。
 身の締まった白身は淡水魚特有の臭みはなく、ホクホクとした食感はまさに鯛に似ていると感じさせます。付け合わせのお米に塩が混ぜられており、一緒に食べると丁度良い塩梅になるようです。
 食後のデザートはナツメを使ったお菓子です(図11)。皮を剥いでトロリと熟した実の部分を食べます。干し柿に近い味ですので、恐らく生のナツメを日陰に干して作っているのではないでしょうか。

(図7)ティベリア地方は北部にあります (図7)ティベリア地方は北部にあります

(図8)イスラエル最大の淡水湖であるガリラヤ湖 (図8)イスラエル最大の淡水湖であるガリラヤ湖

(図9)要塞跡のレストラン (図9)要塞跡のレストラン

(図10)セント・ピーターズ・フィッシュ(スズキ) (図10)セント・ピーターズ・フィッシュ(スズキ)

(図11)ナツメのお菓子 (図11)ナツメのお菓子

山上の垂訓教会

 さて、お昼ご飯でお腹を膨らました後はティベリア地方の教会巡りです。
 まず訪れたのは、ガリラヤ湖が一望できる丘の中腹に立つ山上の垂訓教会です(図12、13)。
 この教会は1930年に建てられ、イエスによる教義の最も重要な事を語った場所だと言われています。
 「求めよ、されば与えられん」や「狭き門より入れ」と言った有名な文言も、ここで生まれました(図14)。
 この地方は亜熱帯性の気候のため、季節によって四季折々の姿を見せてくれるそうです。周囲を見渡すと、ガリラヤ湖の周囲は緩やかな丘陵地帯となっており、ブーゲンビリアなどの色鮮やかな草花があちこちに散見されます。
 荒涼とした南部の景色とは打って変わって、とても穏やかな雰囲気の漂う楽園とも思えるような景色に、イエスも心落ち着かせて教義に集中する事が出来たのではないでしょうか。

(図12)山上の垂訓教会 (図12)山上の垂訓教会

(図13)金細工の施された教会内 (図13)金細工の施された教会内

(図14)イエスの名言が生まれた地 (図14)イエスの名言が生まれた地

古代貿易の中継地カペナウム

 この遺跡は、紀元前2世紀頃に造られたと考えられています(図15)。
 地中海からイラク方面への交易路の中継地として栄え、そのルートはダマスカス(シリア)を経由してバビロン(イラク)へと通じていたと言われています。
 ユダヤ教の集会所と言えるシナゴーグ跡には、機能性を感じさせる門、石材の壁、細かい装飾の施された石柱が残っており、当時の姿がうかがい知れます(図16、17)。

(図15)カペナウムの構造 (図15)カペナウムの構造

(図16)シナゴーグ跡がはっきりと残されています (図16)シナゴーグ跡がはっきりと残されています

(図17)ローマ帝国時代の遺跡 (図17)ローマ帝国時代の遺跡

ナショナル・ダイヤモンド・センター

 ティベリアの裏路地に「カプリス」とだけ書かれた看板のある建物があります。建屋に窓はなく、荒い目のコンクリートで作られたその建物は、何かの町工場にも見えます。
 そこは、実に世界60パーセントものダイヤの原石が集まるナショナル・ダイヤモンド・センターの工房です(図18)。
 内部に入るとダイヤ採掘の工程と、昔使われていた器具などが置かれていました(図19)。
 視聴覚室ではダイヤの歴史と加工についての簡単な解説ムービーを鑑賞し、建物の半分は占めるのではないかと言う広さの販売エリアに移動します。
 入口付近には工房も併設されており、ガラス越しにダイヤ加工の様子を見学する事が出来ます(図20、21)。
 熟練の加工職人たちが様々な器具の並べられた机に向かって、一心不乱にダイヤや装飾リングの加工を行っていました。

(図18)これ以外に目立った目印はありません (図18)これ以外に目立った目印はありません

(図19)入口すぐの資料室 (図19)入口すぐの資料室

(図20)ガラス越しに見れる工房 (図20)ガラス越しに見れる工房

(図21)ダイヤ指輪の加工 (図21)ダイヤ指輪の加工

ダイヤモンドとは

 この工房では、主にオーストラリア、ロシア、アフリカから産出したダイヤを取り扱っています。
 ダイヤは、地球内部の高温・高圧という極限状態から生み出されます。
 ダイヤの元となる物質は炭素です。本来は地球内部からマントルの対流によってゆっくりと地表へと移動することでグラファイト(石墨、黒鉛)になるハズの物が、火山活動などによって一気に地表付近に押上げられる事でダイヤに変化すると言われています。
 一定条件下でしか生み出されない希少性と無色透明の輝きを持つダイヤは、古代から魔除けとして人類の歴史と共に歩んできました(図22~24)。

(図22)様々なダイヤが陳列されています (図22)様々なダイヤが陳列されています

(図23)種類によって特徴が変わります (図23)種類によって特徴が変わります

(図24)300万円以上する品もあります (図24)300万円以上する品もあります

天然ダイヤと人工ダイヤ

 しかし、近年ではダイヤの産出量が減少傾向にあるらしく、天然ダイヤの取り扱いが難しくなって来ているようです。
 そこで登場したのが人工的に生み出された合成ダイヤです。
 1700年代末に、ダイヤが実は炭素のみで構成されている事が発見されると、安価な炭素を用いた合成技術の開発に火がつきました。
 しかし、地球内部の極限状態を再現するには技術的な困難を極め、最近になって科学と化学を用いた人工ダイヤが生み出されました。
 初期の人工ダイヤは、天然ダイヤと比べて炭素以外の元素も混じっている事から、色付きや硬さも劣っていました。そのため、装飾品としてではなく医療機器や工業製品などの産業目的で使用されていました。
 ですが、技術的な進歩を遂げた今では、宝石としての人工ダイヤが数多く作られています。その中でも有名なのがキュービックジルコニアやモアッサナイトと呼ばれる物です。
 これらは構成元素が違うので厳密にはダイヤとは別種の物ですが、ダイヤに似た輝きと低価格なことから、お店でもよく見かけられるそうです。
 素人では判断がつきにくいため、あたかも天然ダイヤだと思って買った物が実は人工ダイヤだったという可能性もあり、どう区別するのかという問題が表面化してきています。

人工ダイヤの進化

 最近では、故人の遺骨などを使ったメモリアル・ダイヤモンドと呼ばれる物もあります。
 スイスの会社では、預かった故人の遺骨や遺灰に高温高圧処理を施したダイヤを、遺族を守る護石というコンセプトで作成しているそうです。

アップグレードしたハズが?

 ダイヤモンド・センターを辞したメンバーは、ティベリアの南にある宿泊するリモニム・ミネラル・ホテルへと向かいます(図25)。
 本当は、昼食を摂ったレストランに隣接するホテルに泊まる予定でしたが、ガイドさんがリニューアルしたばかりの1ランク上のホテルに変更してくれたのだとか。
 どのようなホテルなのかと期待が膨らみます。
 さて、ホテルに到着して無事にチェックインも完了。エレベーターを待って部屋のある階に上がろうとした時です。エレベーターの扉が、金属同士を擦れ合わせた様な音を響かせつつ開きました……。よく見ると銀色の扉には、左右に引っ掻いたような跡が見受けられます。
 一同「ええ~……」と一言。
 それでも気にしない事にして階を上がり、部屋に入ろうとカードキーをドアノブにかざすと……。5人中3人のカードキーは使用できず、立ち往生する一同。
 更に「えええ~……」と一言。
 カードキーを交換して部屋に入るも、ある部屋の電気がつかない、またある部屋は窓のノブが外れかけているなど、まさかのサプライズ(意訳は不意打ち)の連続に一同の“部屋自慢”は尽きませんでした(図26)。
 ご飯はビュッフェ形式で、鶏肉のオーブン焼き、外国から来る観光客向けに洋食寄りのラインナップになっていました(図27~29)。
 イスラエルで食べる料理は、味付けは濃くもなく薄くもなく、ハーブなどの香りも特段強い事もないので、とても食べやすい(食べ過ぎる位に)のが安心できるポイントです。

 明日は、シリアとの国境にあるゴラン高原へ向かいます。 

つづく

(図25)ホテル外観 (図25)ホテル外観

(図26)あと少しで外れそう…… (図26)あと少しで外れそう……

(図27)お米は軽く塩味がついていました (図27)お米は軽く塩味がついていました

(図28)魚、肉、野菜が豊富に取り揃えてあります (図28)魚、肉、野菜が豊富に取り揃えてあります

(図29)一番迫力のあった鶏肉のオーブン焼き (図29)一番迫力のあった鶏肉のオーブン焼き