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国がなくなる!? キリバス共和国と地球温暖化 ~今、私たちにできること~

●はじめに

 2018年3月3日(土)、七ヶ浜生涯学習センターにて、前キリバス共和国名誉領事・大使顧問のケンタロ・オノ氏(一般社団法人日本キリバス協会・代表理事)の講演会に代理出席しました。

〇キリバスと日本の架け橋に

 仙台市生まれのオノ氏(図1)は、幼少時にテレビで見たキリバスに感銘を受け、高校1年生の時に単身キリバスへ留学。そして「自分が日本人ということを活かしてキリバスに貢献したい」と考えたオノ氏は、2000年にキリバス国籍を取得しました。
 その後、東日本大震災を機に日本に再移住し、現在は日本キリバス協会の代表理事として両国の架け橋となる様々な活動を行っています。

(図1) (図1)

〇キリバスとはどんな国?

 1979年、英国から独立したキリバス共和国の人口は約11万人。宮城県大崎市(約13万人)とほぼ同じ位の人口です。
 国内33島の陸地面積は811㎢。仙台市(788㎢)より少し大きい位ですが、資源採掘や環境調査を行う事ができる排他的経済水域は355万㎢(日本は447万㎢)にのぼり、陸地との比率は1対4377と桁違いの差があります。
 そのため、首都タラワのあるタラワ島から東端のクリスマス島までの移動には船だと2週間を要します。
 また、この海洋大国キリバスにはとても美しい島々と海が広がっています。特に中央に位置するフェニックス諸島には手つかずの大自然が残されており、世界最大の海洋保護区としてキリバス初の世界遺産に指定されています。

〇キリバスと日本の関係

 意外にもキリバスと日本は深い関係を持っており、太平洋戦争ではキリバスは日米の激戦地(タラワの戦い)となった悲しい歴史があります。ですが、現在はキリバスにおいて日本のカツオ一本釣り漁船員の育成や、日本の支援で「ニッポン・コーズウェイ」という物流道路や病院など、キリバス国民の重要なインフラ建設が進んでいます。
 さらに、前述したクリスマス島には日本の宇宙航空開発研究機構(JAXA)のダウンレンジ局があり、そこで種子島宇宙センターから打ち上げられたロケットや気象観測衛星ひまわりの軌道確認などを行っています。

〇キリバスの国民性

 キリバス国民は海と共に生活する民族です。
 キリバス国旗には、休まず働く鳥「グンカンチョウ」、「太陽」、白い波線で「サンゴでできた3つの諸島」が描かれています。そこには、「グンカンチョウ」のように勤勉に働き、「太陽」のように清々しく生き、そして「海と生き、海に生かされる」という意味が込められています。キリバス国民の民族性が国旗に良く現れています。

〇キリバスの食糧事情

 キリバスの主食はコメと魚です。
 海産物に恵まれていますが、サンゴで出来た島はそのほとんどが砂地で、野菜類は育ちにくい土壌となっています。そのため食料輸入に大きく依存しておりキャベツ一玉が日本円にして驚きの約2,000円! キャベツは特別な日にしか口にする事ができないそうです。
 これは問題だと、国交を持つ台湾の支援・指導を受けて野菜の家庭菜園を行っています。

〇キリバス存亡の危機!?

 美しい海と自然に恵まれたキリバスですが、国の存亡の危機に直面しています。
 キリバスの平均海抜は約2メートル。土地の幅が首都タラワで平均350メートルですが(図2)、これまで穏やかだった赤道性気候が大きく変わり、今では極端な気象現象や高潮被害、海岸浸食が多発しています。
 特にスーパームーン(地球に最接近した月)による大潮などでは、日本が約30年前に建設した道路が冠水するなど、国内では想定外のことが多数起きており、このままでは2050年には首都タラワの25~80%が海水に浸ると言われています(図3)。
 その影響は深刻で、海岸浸食によって地下水量の減少と塩分濃度の上昇を招き、日常的にしょっぱい塩水を生活用水に使用する状況にあります。
 また、雨季と乾季のサイクルが狂ってしまい、今では雨の降る年と降らない年があるという極端な気候変動が起きています(図4)。
 さらに、海水温度の上昇によってサンゴが死滅。海の生態系に悪影響が生じ「魚が獲れない」「魚が毒を持ち始めている」といった現象が表れており、国民の主要なたんぱく質源の取得ができず食糧危機に陥る可能性が出てきています。

(図2) (図2)

(図3) (図3)

(図4) (図4)

〇キリバス政府の対応

 こうした気候変動による年間被害額は約10~15億円に上ります。しかし、2016年5月に就任したマーマウ大統領は「気候変動から国民の生存を保証するには天文学的な予算が必要」と述べるなど、経済的な壁が立ちはだかっています。
 パリ協定では、全世界で気温上昇を1.5℃未満に抑制するとしていますが根本的な解決策には触れておらず、キリバスの海岸浸食・海水浸水の問題解決には繋がりません。
 そのため政府は、独自の資金と国際社会からの資金援助で気候変動に対する適応事業を行うことを表明しました。
 また、隣国フィジー政府はキリバス政府による土地購入を承認し、キリバス及びツバル国民の受け入れを正式表明しました。

〇私たちにできること

 キリバスを取り巻く「気候危機」は政治や主義・主張を超えた全地球的な視点で取り組む必要があります。気候危機の最前線であるキリバスの現状を知り、無知・無関心という立場ではなく、現実を知り、理解し、そして行動することが地球温暖化の解決に繋がります。
 オノ氏は、キリバスという故郷を、なによりもキリバスの将来を担う子ども達を守りたいとお話しされています。また、人災である地球温暖化は同じく人間の手で解決できると信じています。
 国内で様々な未曽有の自然災害や現象が起こっています。これも地球温暖化が原因なのです。

●書籍の紹介

 オノ氏が執筆した「キリバスという国―Kiribati My Heart」(エイト社)の売り上げの一部をキリバス政府に寄贈しています(図5)。  ぜひ機会があったら手に取ってみて下さい。

(図5) (図5)