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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

げんき倶楽部杜人学校健診その12

  耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって30年余り。今回は昨年10月にfmいずみで放送された内容を紹介する。

An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

標高4500メートルの世界

An.:
三好先生、前回は香格里拉(シャングリラ)市のマツタケについてお話を伺いました。標高約4500メートルの山にも登ったそうですが、そこはどんな光景が広がっていたんでしょう? 何しろ日本では標高3776メートルの富士山が最高峰なので、私たち日本人には想像がつきにくいです。
Dr.:
標高約3300メートルの香格里拉市内から、リフトを使って1200メートルくらい登りました。この地域は10月から、晴れて乾燥する日が続く乾季に入りますが、私たちが行った9月はまだ雨季で、雪混じりの冷た?い雨が吹き付けていました。厳しい横流れの風のせいもあり、それはそれは寒いんです! 私たちのグループには「晴れ女」のあだ名のあるナースが同行したんですが…。
An.:
標高4500メートルには勝てなかったようですね。
Dr.:
現地でぶ厚い登山用コートを急きょ借りて、だるまさんみたいな格好でリフトに乗ったんですが…。
An.:
自然の驚異の前には…。
Dr.:
役立ちませんでした(笑)。いやぁ、本当に寒かったです。
An.:
江澤が、ガイドブックで読んだ案内によると、山頂からは標高6740メートルの梅里雪山(メイリーシュエシャン)がよく見えて、とても風光明媚(めいび)な所だとか。
Dr.:
日頃の行いのせいでしょうか、そううまくはいきませんでした(笑)。
An.:
地図で見るとこの地点はチベットにも近く、自然環境は厳しい所のようですね。
Dr.:
ここは古い通商ルートの一部で「茶馬古道」つまり「ティー・ロード」の名前があります。お茶はいにしえから薬の一種と考えられ、貴重品でした。
An.:
そういえば、吉川英治の「三国志」の冒頭にも、劉備玄徳が母親のために貴重品のお茶を買い求めたのに、黄巾(こうきん)の賊にそれを奪われるシーンがありました。
Dr.:
西双版納(シーサンパンナ)で採れる貴重品だったお茶とメコン川で採れる塩を、チベットに運ぶ運搬ルートの一部がこの茶馬古道なんです。

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わんこそば感覚のバター茶

An.:
茶馬古道とは、古代からチベットと雲南との交易ルートだったんですか?
Dr.:
雲南からはお茶と塩、そしてチベットからは仏具や教典などの、仏教関係の品々が交易品だったと聞いています。
An.:
チベットでも雲南のお茶を飲むんですね?
Dr.:
チベットのお茶は、とても独特なんです。そもそもチベットは、全体的に標高が高いので、畑にできる普段の食物も栄養価の高いものは多くありません。チンコー麦と呼ばれる麦の一種が主食で、それを粉にして焦がした「ツァンパ」を食べています。そのときに付き物なのがバター茶です。
An.:
紅茶とクッキーを混ぜたような、素敵な味がしそうですね!
Dr.:
いいえ。煮詰めた濃いお茶を、チベットの毛長牛のヤクのミルクでさらに煮出し、ヤクのバターと塩を加えたものです。一瞬、「ウッ」となってしまうような強烈な臭いと味の、いわば薬ですよ。
An.:
なんだか、想像するだけですさまじいものがありますね。
Dr.:
ツァンパだけのあっさりとした食事がメーンですから、このバター茶で栄養を補っているのはよく理解できますよね。一度でいいんですが、江澤さんにも振る舞ってあげたいです。
An.:
お気持ちだけいただきます(笑)。
Dr.:
私はチベット族の民家も訪問しているんですけど、彼らにとってこれは最高のおもてなし。何杯でも勧めてくれるんです。
An.:
岩手のわんこそばのような感覚でしょうか?
Dr.:
そうです。岩手でそばは貴重品だったため、お客さまに嫌というほど無理に勧めてくれる。それが、わんこそばの由来の一つといわれています。
An.:
バター茶も同じように…。
Dr.:
貴重品なので、お客さまに勧めてくれます。おまけにその呼吸がわんこそばと同じで。
An.:
茶わんが空になると、次の瞬間一杯になっているというあのタイミングですね!
Dr.:
私は大学が岩手で、盛岡市に6年間住んでいたものですから、その辺の事情には詳しいんです。わんこそばは、一口サイズのそば茶わんで「するっ」とそばを喉に流し込むんです。その瞬間、隣りに控えていたお店の人が注ぐ手も見せずに、次のそばを茶わんに入れます。この絶妙なサービスは、食べる人が隙を見て茶わんを伏せてしまうまで終わらないんです。
An.:
先生、まさかバター茶もそのパターンなんじゃ…。
Dr.:
そのまさかなんです。しまいには口の中がバターの臭いでいっぱいになって、ゲップも出ないくらいになります。
An.:
体験してみたいような、みたくないような。
Dr.:
バター茶のお話はこれでおしまいです(笑)。次回は、チベットという国が成立した時期の時代背景についてお話しします。お楽しみに。
標高4718メートルのナムツォ湖にて
標高4718メートルのナムツォ湖にて
チベット人の民家にてバター茶を味わう
チベット人の民家にてバター茶を味わう

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