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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

fm いずみ ラジオ3443通信 英国紅茶の旅7

131話 氷輸入の歴史とフィッシュ&チップス

fmいずみ ラジオ3443通信
An.:
三好先生前回は、英国で冷たいビールを飲むことができるようになったのは、産業革命のために蒸気船による物資の運搬が容易となった。その結果、ノルウェイのフィヨルドの氷山を切り出して、それを溶けないうちに英国に運んで使用した。そのせいである、と伺いました。
 三好先生のお好きなビールは当然でしょうけど、それ以外の食品もこの氷山由来の氷の恩恵を、十分に受けたんでしょうね?
Dr.:
蒸気船の活躍によってロンドンの港に持ち込まれた氷は、運河を経由して地下10メートル以上の深さの井戸に保存されました。
 こうして保存された氷は、レストランや市場だけでなく医療施設や一般家庭にも販売されたそうです。
An.:
それじゃあ、熱の高い病人を氷で冷やすことができるようになったのも、産業革命以来のことなんですね!
Dr.:
19世紀末になって、氷が大量に輸入されて値段が下がると、町中でのアイス・クリームの販売量も増加したと言います(笑)。
An.:
英国の町中のアイスは、フィヨルドの氷山によって製造されていたんですね? 知りませんでした(笑)。
Dr.:
以前お話ししましたように、この英国のノルウェイからの氷輸入の歴史は、1857年にカルロ・ガレッティが350トンを、蒸気船で運搬してから始まりました。
An.:
350トンの氷ですか。江澤には、信じられません(笑)。
Dr.:
このノルウェイからの氷の輸入は、19世紀末には実に35万トンになるんですけれど(笑)。すごいですよね!
 さすがにそれ以降は、製氷された人造の氷がフィヨルドからの氷の採取に、取って代るようになります。
An.:
英国の人たちにとって、毎日の食卓に直結する産業革命の成果は、冷たいビールとアイスが一番だったんでしょうか(笑)?
Dr.:
ところがですね、江澤さん。英国庶民の「国民食」とでも言うべき料理が、やはり産業革命のせいでこの時期、ポピュラーになっているんですね。
An.:
先生、それは何でしょう?
Dr.:
「フィッシュ・エンド・チップス」って言いまして。ヒラメやカレイ、タラや小エビなどお魚のフライと、ポテトのフライを組合せたものです。
An.:
先生、それは美味しそうですね!
Dr.:
このポテト・フライは、いわゆる「フレンチ・フライド・ポテト」でして。じゃがいもの角切りを揚げたものです。
An.:
日本でも、ファースト・フード店で良く見かけます。
Dr.:
英国でも「フィッシュ・エンド・チップス」のお店は、立ち食いのそれが多いんです。そのポテトの上に、揚げたての魚のフライを乗っけて、新聞紙で包みます。
An.:
なんだか、江澤はよだれがこぼれそうになります(笑)。
Dr.:
アツアツのそれを片手に乗せて、そこに店頭に置いてある独特の酢をたっぷりと・・・・・・、いいえむしろドボドボと言えるくらい、思いっきりかけてやります。
 あったかいフライにかかった酢は、ツーンといういかにも食欲をそそる匂いがして、ますますお腹が空きます。
An.:
先生、それを聞いただけで江澤は我慢ができません(笑)!
Dr.:
道端のベンチか、近くの公園に陣取り、酢のしっかり染みた魚のフライをかじります。その瞬間、口の中から鼻に抜ける酢の香りが、まるで体中に行き渡るような感覚を覚えます。
An.:
(ため息と共に)オイシソー、ですねぇ。
Dr.:
魚の匂いの染みたポテトのフライにも、一部酢の味がしますので、油っこさが和らぎます。食べていると、却って食欲が増して来るような気さえして。
An.:
それが、先生、英国の庶民の「国民食」なんですね。  江澤は英国の人たちが、すっごく羨ましくなりました。
Dr.:
このフィッシュだって、漁船で捕れたそれがロンドンの庶民のもとに届くためには、氷による冷蔵技術の発展が不可欠です。
An.:
鮮魚ですもの、ね。
Dr.:
その通りです、江澤さん。加えて、フィッシュ・フライのお魚が新鮮なまま庶民に提供されるには、冷蔵技術だけじゃなくって、輸送手段にもスピードが必要です。
An.:
それには蒸気船が、当然必要ですよね?
Dr.:
フィッシュ・エンド・チップスのお魚も、英仏海峡や北海つまり英国東海岸の北部の海で捕れたそれが、蒸気船によってロンドンなどに運ばれるんです。
An.:
それじゃあ、ロンドンではフィッシュ・エンド・チップスが豊富に味わえるんですね!
Dr.:
20世紀の始めには、ロンドンには1200軒もの専門店があったと、記録に残っています。
An.:
もしかすると、蒸気船と並んで蒸気機関車も、お魚の運搬には役立ったんじゃあありませんか?
Dr.:
さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。英国の東海岸で捕れたお魚のロンドンへの供給には、1850年代の鉄道網の整備が一役買っていました。
An.:
そしたら、船と機関車の競争が始まりそうですね。
Dr.:
英国南部の漁港からは、テムズ川をさかのぼる蒸気船が速いか、蒸気機関車による鉄道運搬が速いか、猛烈な競争になったと言われます。
An.:
どちらが、勝ったんでしょう? 江澤まで、なんだかドキドキして来ました(笑)。
Dr.:
最終的には、産業革命の結果整備された鉄道網を走る機関車の、圧勝だったそうです。
An.:
先生、そのフィッシュ・エンド・チップスについて、もう少しお話を聞かせてください。楽しみにしていますので!!
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132話 フレンチフライドポテトの由来

An.:
三好先生、前回は英国の人たちの国民食であるフィッシュ・エンド・チップスについて、楽しいお話を伺いました。
 お魚のフライを、ポテト・フライと一緒に新聞紙に包み、お酢をたっぷりと振り掛けて熱々のうちに頬張る。そんなよだれの溢れそうな話題も聞かせて頂きました。このフライになるお魚は、英国の各漁港から氷で冷やされて、新鮮なうちに蒸気船や蒸気機関車による鉄道などで、ロンドンまで運搬されたと聞きました。
 先生、ホントに産業革命の成果って、英国の庶民の食生活の隅々にまで波及したんですねぇ!
 でね、先生。前回はフィッシュ・エンド・チップスのお魚について、教えて頂いたんですけど。今日はそれに添えられている、チップスつまりポテト・フライについても、楽しいお話をお願いします。
Dr.:
江澤さん。江澤さんはいわゆる「フレンチ・フライド・ポテト」って、聞いたことがありますよね?
An.:
ええ、もちろん知ってます。
 人差し指くらいの、細長い、断面が四角の、柔らかい揚げポテトのことですよね。
 すごーく香しくって、空腹ときにはあの揚げたての匂いを嗅ぐだけで、とっても堪らないお料理です。
Dr.:
そのフレンチ・フライド・ポテトですが、江澤さん。質問です。
 これはフランス料理なんでしょうか?
An.:
先生、江澤はフランス料理と言いますと、ナイフとフォークとスプーンの並べ立てられた、高級料理ってイメージがあって・・・・・・。ポテト・フライとはまた違った感じも、ゼロじゃないんです(笑)。
Dr.:
その高級なおフランス料理については、別の機会に触れたいと思うんですけど。
 江澤さんにお話しした、私のドイツ・ビール修業時代には、ですね。
An.:
思い出しました! 先生は40年前、ハイデルベルグ大学の、ドイツ語夏期講習会に参加しておられたんでしたよね。
 ドイツ語の講座はともかく、ドイツ・ビールの自主体験会を毎日開催していらした、とか(笑)。
Dr.:
思い出しますねぇ、あの頃!
 ドイツ・ビールには、やっぱりドイツ料理が一番良く合いまして、ですね。
 やや油っ濃い、ブタ肉の煮込み料理なんかを頬張りながら、ドイツ・ビールを頂くんですけど。煮込みの油身が、口の中でトロッと溶けるところへ、思いっきりビールを流し込むんです。
An.:
おいしそうですねぇ!
 そんな肉料理の付け合わせに、やっぱりドイツではポテト料理が、たくさん付いて来るんでしょうね。
 フレンチ・フライド・ポテトも、そんな肉料理のお皿にてんこ盛りで載って来るわけですね?
Dr.:
お話はそこから、なんですけれどもね。
 お肉に添えられているポテトは、茹でたり・炒めたり・バター炒めされたり、各種あるんですけれど。
 少なくとも、私がハイデルベルグにいた1972年には、フレンチ・フライド・ポテトは添えられていませんでした。
An.:
えっ、それじゃあ先生。その頃先生は、フレンチ・フライド・ポテトをどのようにして食べていたんでしょうね?
 こっそり江澤にだけ、耳打ちしてくださいな。
 大きな声では、言いませんから(笑)。
Dr.:
このタイプのポテトは、当時ドイツではなじみが少なくって、レストランにはありませんでした。
An.:
レストランでなければ、どこで売ってたんでしょうか?
Dr.:
町中の立ち食いのお店で、白い紙包みに包んで売ってました。そして江澤さん。そのときの、フレンチ・フライド・ポテトの料理名が、なんと「ポム・フリ(ット)」って言うんです。
An.:
それは、どういう意味でしょうねぇ。
Dr.:
私は正直フランス語は苦手なので、聞きかじりなんですけど。
 「ポム」と言う言葉は、「ポム・ド・テール」って、つまりポテトを意味するんですけど。これはもともと、「大地のりんご」という意味のフランス語だそうです。
 そして、「フリ(ット)」というのがやはりフランス語で、フライの意味なんです。
An.:
えーっ、そうだったんですか!
Dr.:
今でもはっきりと覚えているんですけど、ハイデルベルグ市の旧家つまり古い家柄の女性が、こう言ったんです。
 「この頃じゃ、古い伝統的な調理法のしっかりした料理がすたれて、こんな品のない食べ物が流行るようになっちゃって・・・・・・。」 そう嘆いていたんです。
 もちろんこんな品のない料理って、「ポム・フリ(ット)」のことを指していたんですよ(笑)。
An.:
そんなことが、現実にあったんですねえ(笑)。江澤には信じられません。
Dr.:
ハンバーガーだって、アメリカ式になってそう呼ぶんですけど。もともとはドイツの都市である、ハンブルグ市の名前が付けられた挽肉ステーキのことで、ドイツじゃハンバーグなんて呼びません。
An.:
それじゃ先生、なんて呼ぶんでしょうね?
Dr.:
エヘン! ドイツではこの挽肉ステーキのことを厳かに、「ドイチェ・ステーキ」つまり「ドイツ人のステーキ」と称するんです(笑)。
An.:
それじゃ、大根おろしをかけてお醤油味で頂くハンバーグは、きっと「日本人のステーキ」って言うんでしょうね(笑)。
Dr.:
フレンチ・フライド・ポテトが、ポム・フリ(ット)の英語名、と言うよりアメリカ名であるのと同じなんですけど。ハンバーグ・ステーキだって、もともと生の挽肉を食べる習慣のあった、ハンブルグ港からの移住者の好物を、「ハンブルグ風ステーキ」とアメリカで呼び始めたのが、語源になっています。
An.:
ハンバーグとか、それをサンドイッチにしたハンバーガーとかって、アメリカ式の名前なんですね!
Dr.:
ですからハンバーグ・ステーキはもともと、生の挽肉を食べるタルタル・ステーキが、オリジナルだったそうなんです。
An.:
お話は続く、ですね。次回が楽しみです!
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