3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ3443通信 学校健診特集9 雲南の旅

102話 高山病の恐怖

An.:
三好先生、前回は馬(マー)軍団の驚異的な陸上競技での記録のお話しから、その秘訣と言われた冬虫夏草そして高地トレーニングのお話し、だったはずですよね?
Dr.:
それがなぜか、鉄腕アトムに話題が逸れてしまって(笑)。私も、我ながら少しおかしいような気がしていました。
 お話しを戻します。冬虫夏草の名産地であり、標高5000メートルの地点にある那曲(ナチュ)には、チベット鉄道で移動します。
 このチベット鉄道は、ダライ・ラマ14世の生まれた西寧(シーニン)市から、25時間かけてチベットのラサ市へと長い旅路を辿ります。
An.:
先生確かその25時間、ずっと高地を移動するので、酸素がすごく薄いんでしたよね?
Dr.:
そうです。以前にもお話しましたけれど、標高5000メートルでは気圧は仙台市の約半分に低下します。それに比例して酸素の濃度も下がりますから、乗車した私たちもまともに酸素を吸入できない状態となります。
An.:
それって、苦しそう(笑)。
Dr.:
この酸素の濃度低下状態が続くと、いわゆる高山病になります。
An.:
高山病って、とっても怖そうですね。
Dr.:
要するに慢性の酸欠状態のことなんですけど、ね。さまざまの身体症状を伴いますし、軽く見ていると命にかかわることもありますから、正確な理解は欠かせません。
An.:
そうですよね、本当に酸素は生きていくうえで大事ですからね。先生、高山病といいますと、具体的にはどんな症状なんですか?
Dr.:
論文で調べてみると、高山病の症状としてまず頭痛、それに吐き気や嘔吐などの胃腸症状、めまい・立ちくらみなどのこのOAではおなじみの症状、疲労・衰弱や睡眠障害などの全身症状が見られるようです。二日酔いにそっくりの頭痛や、寒気そして眠気も伴います。
An.:
それは、どうしてそうなるんでしょうね?
Dr.:
気圧の変動と酸素濃度の低下に人体が対応しきれないので、脳や肺に浮腫つまり水膨れが発生するせいだと、論文には書いてあります。
An.:
先生がご自身で体験された、その実感ではどんなものでしたか?
高山病でダウンした参加者 (標高 4,290m)右は酸素ボンベ 高山病でダウンした参加者 (標高 4290m)右は酸素ボンベ
Dr.:
私自身はチベットに10回近く行っていますから、体でペース配分を覚えてしまって。今では、標高5000メートルでもそんなに苦痛を感じることはありません。
 でも、そう言えば初めてチベットへ行った12年前には、空港からラサ市へむかうバスの中で、キラキラ光るヤルツァンポ川の水面を眺めながら、ついウトウトとしてしまった記憶があります。
 そのときは調査旅行の疲れかと思っていましたけれど、いま考えるとあれは酸欠の一歩手前だったんですね!
An.:
ホントに眠くなるんですねぇ。
Dr.:
次にラサへ行ったとき、前回も話題になった冬虫夏草好きのメンバーが。
An.:
冬虫夏草にカビを生やしてしまった、あのメンバーですね(笑)!
Dr.:
そうそう! さすが1を聞いて10を知る江澤さん。その彼がですね、初体験のラサ市に着いたその日の昼食で、止せば良いのに、はしゃぎ過ぎまして、ですね。
An.:
標高3640メートルの高地で、はしゃいだんですね!
Dr.:
高地に到着して、実は酸欠のひどくこたえるのは、数時間後なんですよ。
 それを知らずに騒いだんですけど。昼食を摂るためにレストランに入り、現地の料理のキツイ匂いを嗅いだ瞬間、突如としてすごい吐き気に見舞われまして、そこに仰向けにダウンしちゃったんです。
An.:
まぁ! それでどうなっちゃったんですか?
Dr.:
悪いことに、私たちの調査団の参加者はお茶目な人間が多くって。ダウンしたメンバーの上から、ノビてるメンバーの写真をばっちり撮影していた・・・・・・。
An.:
そんなぁ! それじゃ、ウッカリ高山病にはなっていられませんねぇ(笑)。
Dr.:
高地で酸素が薄いものですから、自分では気づかなくともコンディションは悪化していたんでしょうね。そこへ、慣れない中国料理のキツイ香辛料の匂いを嗅いだものですから・・・・・・。
An.:
ウッとなっちゃったんでしょうよね!
Dr.:
以前お話ししたんですけども、ね。匂いや味、つまり嗅覚と味覚は、五感の中でもどちらかと言うと生命に近い感覚と呼ばれていまして、ね。
An.:
五感って言うのは先生確か、聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚のこと、でしたよね?
Dr.:
江澤さんは、1を聞いて10を知るだけじゃあなくって、記憶力もバツグンなんですねぇ。
An.:
先生、江澤はこれでも味には結構うるさくって、ですね。味覚や嗅覚関係の話題は、バッチリなんです!
Dr.:
そうでしたよね、江澤さん。美味しいもののことなら、江澤さんにお任せですね。
An.:
美味しいものとラジオ3443通信は、江澤にお任せ、ですもの。
Dr.:
お話しを戻しましょう(笑)。
 嗅覚はですね。他の感覚よりも緊密に、消化管に繋がる迷走神経という脳神経に接続していまして・・・・・・。ああそうだ、江澤さん。空腹時に美味しいものの匂いを嗅ぐと、お腹がグーッと鳴ることはありませんか?
An.:
先生fmいずみの前にですね、レストラン街がありまして、ですね。お昼になるとそこから美味しそうな匂いが、プーンと。
Dr.:
すると江澤さんの腹時計が、お昼を告げるんですね(笑)!
An.:
確かに匂いつまり嗅覚と、腹具合とは密接に関連してるんだなぁ、と。体は、正直ですものね。
Dr.:
残念ですが、お話しは次回に続きます。
#

103話 迷走神経と腹時計

迷走神経と腹時計 迷走神経と腹時計
An.:
三好先生、前回は高地トレーニングのお話しの前に、高山病についてのご説明がありました。そして高山病では、酸素の薄い高地に到着してから数時間後に症状の出ること、先生と一緒にチベットへ行った調査団メンバーのお一人が、現地の昼食のキツイ匂いに反応して高山病を発症したこと、のお話しを伺いました。
 先生、匂いつまり嗅覚はその刺激で消化管すなわち胃や腸に、反応を起こすと前回はお聞きしました。
Dr.:
迷走神経と言って、内臓を支配している神経と匂いを感じる嗅神経とは、奥の方で繋がっているんです。だから、例えば空腹時に食べ物の匂いを嗅ぐと、急にお腹が空いてグーッと鳴ったりするんです。
An.:
江澤もお昼になってお腹が空いているときに、fmいずみの前のレストラン街から良い匂いがすると、お腹が自然に反応してしまうんです。
Dr.:
迷走神経というのはおもしろい神経で、消化管だけでなく腹式呼吸を調節する横隔膜という筋肉の動きに、関わっています。この横隔膜の痙攣、つまり「しゃっくり」のことなんですけど。これは腓(こむら)がえりのような、横隔膜の不規則な筋肉収縮がその実態なんですけど、ね。迷走神経の他の末端を刺激してやると、それが横隔膜に伝わり「しゃっくり」が止まります。
An.:
そのためにはいったい、どうすれば良いんでしょう?
Dr.:
江澤さん、しゃっくりが止まらなくなったら、江澤さんはどうしますか?
An.:
ええっと、そうそう。冷たい水を一気飲みしたり、とっても酸っぱいお酢を思いっきり飲んだりします。
Dr.:
本人に気付かれないように、後からそっと近寄って「わっ」と大声をあげてやる、なんてこともしますね(笑)。
An.:
します、します(笑)。
Dr.:
びっくりすると、一瞬息を呑みますから。
An.:
息を呑みますよね(笑)。
Dr.:
こうした、冷たい水を一気飲みする、お酢を飲む、息を呑む、などの動作はすべて、迷走神経の末端を刺激します。それがきっかけとなり、迷走神経に正しい刺激が再び伝わるようになるので、横隔膜は痙攣しなくなり「しゃっくり」は止まるんです。
An.:
ちっとも知りませんでした!!
Dr.:
それはともかく迷走神経は、そんな風に胃腸に分布していて、嗅覚の刺激で内臓の症状を起こすことがあるんです。
An.:
江澤のお昼前の空腹感の増強は、嗅神経と迷走神経のせいだったんですね(笑)。
Dr.:
お腹と背中がくっついちゃったりして、ね(笑)。
An.:
それって(笑)、しみじみ実感として良く判ります。
Dr.:
ついでにお話ししますと、この迷走神経は他にもいくつかおもしろいエピソードに関わっています。
An.:
具体的には、どのような?
Dr.:
これは個人差もありますけれど、耳かすを耳掻きでほじると、咳の出る人がいます。
 私もその一人なんですけれど、私の場合どちらかと言うと右より左の耳をほじったときに、空咳がでます。
An.:
それはどうして、なんでしょうか?
Dr.:
江澤さん、気管や気管支に異物が入り込んだりすると、咳が出ますよね?
An.:
ええ。まちがって、何か吸い込んじゃったときなんか、すごく咳が出ます。
Dr.:
あれは、気管や気管支の中に入った異物を排出しようと、横隔膜が急激に収縮して咳が出るんです。
An.:
鼻粘膜では、花粉症のときにくしゃみが出ます。あれは花粉が異物、つまり通常はそこに入って来ない成分だから、ですよね。
Dr.:
気管や気管支でそういう咳が出るのも同じ理屈で、気管および気管支に分布している迷走神経の末端を異物が刺激して、異物排出機構が働き、咳が出るんです。
An.:
人体の合理的な反応、ですね。
Dr.:
それを医学用語で、「ヘーリング・ブロイエルの反射」って呼ぶんです。
An.:
江澤は、横文字は苦手です(笑)。
Dr.:
実は耳の穴にも、迷走神経の末端が分布していることがあって。耳掻きで耳をほじると・・・・・・。
An.:
迷走神経の末端を刺激する?
Dr.:
そこで「ヘーリング・ブロイエルの反射」が、起こるんです。
An.:
耳をかいただけなのに、人体は気管・気管支に異物が入り込んだと錯覚するんですね!
Dr.:
だから耳をかくと、変な空咳が出てくるんですよ(笑)。
An.:
人体の合理的反応が、ちょっとだけ勘違いをしたんですね(笑)。
Dr.:
話が逸れますが、江澤さん。江澤さんはお日さまつまり太陽や、何か眩(まぶ)しいものを見たときに、くしゃみの出ることはありませんか?
An.:
ああ、そういうことがあります。ありますけれど先生、あれも何か人体の仕組みと関連するんでしょうか?
Dr.:
くしゃみは、花粉症のときもそうですが、鼻粘膜の三叉神経の末端が刺激されて発生します。他方、目の虹彩には眩しいものを見ると縮瞳(しゅくどう)つまり黒目が小さくなる反応が備わっています。
An.:
カメラのレンズを絞るような理屈ですね。
Dr.:
その縮瞳する神経と三叉神経は、一部分で繋がってるんです。ですから、眩しいものを見ると三叉神経の末端が刺激されて・・・・・・。
An.:
花粉と同じ反応が起こり、くしゃみが出るんですね。先生、本日のお話しもおもしろかったです!
Dr.・
An.:
ありがとうございました。
#

104話 高山病と高地トレーニング

An.:
三好先生前回は、匂いつまり嗅覚がその刺激で消化管すなわち胃や腸に、反応を起こすこと。それは、迷走神経という内臓神経と嗅神経との関連で発生する現象であること。それから、この迷走神経がしゃっくりや耳掻きのときの空咳などに関わっていること。などなど、興味深いお話しを伺いました。しゃっくりを止めるのに、後からそっと近寄って「わっ」と大声を挙げてやることは知ってましたが、まさかそれが迷走神経の働きだなんて・・・・・・。江澤は絶句してしまいました。
Dr.:
その迷走神経の働きのせいで、高山病になったチベット調査グループのメンバーが、標高3640メートルの高地で昼食を摂ろうとしてと、ノビちゃう。お話しはそこから発展したように、憶えています。
An.:
高山病って、怖そう!
Dr.:
実際高山病になると、そんな吐き気・嘔吐や頭痛そして呼吸困難が出現し、とっても苦しい思いをします。
An.:
慢性の酸素欠乏状態が、その背景にあるんでしたよね?
Dr.:
高地では気圧が低いものですから、空気の中の酸素の濃度もそれに比例して低下します。それに加えて高地では気温も低いことが多く、人体の血管も縮こまりがちとなります。
An.:
酸素を人体の隅々まで運ぶ、赤血球が十分に体の中を回らなくなりますね。
 酸欠が、より一層ひどくなるんじゃあ?
Dr.:
それに対して人間の体は、呼吸数を増やしたり、脈が速くなったり、酸素をより多く運ぶような努力をします。
An.:
人間の体は、そういう高度に慣れるものでしょうか?
Dr.:
もともと現地の人々は、そういった環境に適応して普通に生活していますから(笑)。
An.:
そうか! 人間って、逞(たくま)しいものですねぇ。
Dr.:
高地でもその環境に順応すると、体の中で赤血球を増加させるホルモンが分泌されるようになります。その結果赤血球が増加し、酸素の運搬が容易になりますから、酸素が再び体内の隅々まで届くようになります。
An.:
赤血球が多いと酸素の供給がスムースで、空気の薄い高地でも楽なんですね、先生。
 あれっ。てことは、と、その赤血球の多い状態のまま、普通の標高の土地、例えばこの仙台市なんかで生活すると、通常の赤血球数の私たちよりも、ハードな動きは楽なんじゃあないでしょうか?
Dr.:
江澤さんは「はだしのアベベ」って、有名なマラソン選手のことを、ご存じですか?
An.:
ラジオ3443通信に出てきた、「はだしのゲン」は知ってますけど、「アベベ」?
 名前だけは江澤も聞いたことがあるような・・・・・。それは、どなたでしたっけ?
Dr.:
1960年、ローマ・オリンピックの男子マラソンで、エチオピアのアベベ選手が当時の世界記録で優勝しました。エチオピアの首都アディスアベバは標高2400メートルの高地にあり、普段の生活から酸素は少なめなんです。
An.:
それじゃあ、普段から血液の中の赤血球は多めなんでしょうか。
はだしのアベベ はだしのアベベ
Dr.:
ですからローマのような平地では余裕綽綽(しゃくしゃく)でして、マラソンでも普段そのままのはだしで快走しました。
 そして「はだしのアベベ」って、たちまち世界の英雄になったんです。
An.:
それで「高地トレーニング」が有名になった・・・・・・?
Dr.:
低酸素状態でマラソンなどのトレーニングをすると、赤血球増加などのために酸素運搬に余裕ができます。マラソンは要するに持久走の一種ですから、酸素に余裕があれば楽に戦えます。
An.:
毎日標高2400メートルのアディスアベバで走っていれば、赤血球は増加しそうですね。
Dr.:
高地トレーニングについて、一般の関心が高まったのは、そんなことがきっかけだったんです。
 私も、1960年のローマ・オリンピックは、まだカラーテレビが無かったものですから、白黒のテレビで見たんですけど。アベベは白黒テレビでも、すごい人気者だったことを憶えています。
An.:
三好先生はそんなアベベのマネをして、チベットへ高地トレーニングに行くんですか?
Dr.:
たった今OA中の昆明市、つまり今回の私たちの調査地が、実は高地トレーニングの本場なんですよ。標高1900メートルですから、ね。
An.:
標高1900メートルでしたら、日本国内にもいくつか候補地になりそうな場所は、ありそうですね。
Dr.:
高地トレーニングに適している、世界の代表的な場所には、次のような地域が挙げられています。
 米国のコロラド州ボルダー市、同じくニューメキシコ州アルバカーキ市、スイスのサンモリッツ地域、そして話題の昆明市です。
 国内では、長野県菅平高原、同じく長野県の峰の原高原、そして岐阜県の飛弾御嶽高原が知られています。
An.:
観光地としても、有名な場所ですよね。
Dr.:
厳しいトレーニングを積む必要があるんでしょうから、気分転換に適した土地が最適なんでしょうね。
 なお私が自分で目撃した、もっとも辛い高地トレーニングはですね。2001年に訪れたチベットのラサ市で、目抜き通りのあちこちで現地の軍隊が、ダッシュの繰り返しを何回も何回もさせられていた光景です。
An.:
標高3640メートルの地点で、ダッシュを繰り返すんですね。すごいですねぇ。
Dr.:
他の高地トレーニング地は、すべて標高2000メートル以下ですからね。
 きっと北京オリンピック向けの、特別プログラムだろうって、内心私たちは思ってましたけれど(笑)。
 それを見ていた私たち自身、低酸素に喘ぎながらの観光で、まさに高地トレーニングの最中だったんですよね。
An.:
お互い様みたいな・・・・・・。
Dr.:
お話しは続きますが、今回も時間切れみたいです。次回のお話しも、楽しみにしていてくださいね。
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105話 エキゾチックな西双版納(シーサパンナ)

西双版納の黄金のパゴダ 西双版納の黄金のパゴダ
An.:
三好先生、前回は高地トレーニングのお話しから、高山病の話題も含め「はだしのアベベ」のエピソードを聞かせて頂きました。標高の高い場所では空気が薄く、酸素濃度が低いために酸素欠乏状態になり易いこと。けれどもその低い酸素濃度に慣れると、血液の中の赤血球が増加し体の隅々まで酸素を送り込み易くなるので、持久力がつきマラソンのようなハードなスポーツに強くなること。そんな内容でした。
Dr.:
そんな高地トレーニングを行なう一方、冬虫夏草で栄養補給していたのが、馬軍団の驚異的な記録の元だったんですね。
An.:
三好先生たちの調査グループも、その冬虫夏草で元気いっぱい、調査活動に励(はげ)む予定だったんですね?
Dr.:
残念ながら、現地のレストランでは冬虫夏草が品切れでした(笑)。また次回の雲南省調査の楽しみに、これはお預けとなりそうですね(笑)。
An.:
三好先生は今回の調査で、その次はどこへいらしたんですか?
Dr.:
今回の調査旅行のハイライトは、実は最後の訪問地・西双版納でした。
An.:
西双版納って、どんな所なんでしょう。
Dr.:
雲南省は中国の中でも、南アジアにもっとも近い部分なんですけれど。その雲南省でも、ミャンマー・タイ・ラオスに隣接している南西部の地域です。
An.:
なんだかとても、エキゾチックな感じのする地方みたいですね!
Dr.:
少数民族の多い雲南省ですが、西双版納はイ泰(タイ)族のたくさん住んでいる地域です。
An.:
それじゃあ、きっとタイの国と近い関係にあるんでしょうね?
Dr.:
もともとタイ族の人々の住んでいた地域の一部が、そのタイの国になったと聞いています。ですから、国境を隔てていても民族的には近い仲間なんじゃないでしょうか。
An.:
タイ族の文化も、それじゃ恐らくタイの国の風俗に良く似た、雰囲気を持っているんでしょうね。
Dr.:
タイ風の寺院つまり黄金のパゴダが見られ、現地の人は高床式の住宅に住んでいます。西双版納のタイ式民族村は、現地の人たちの住んでいる環境そのままに、テーマパークを作ったので伝統的な住居がとても印象的なんです。
 そして黄金のパゴダつまり仏舎利(ぶっしゃり)塔が美しく、信仰心の篤い住民の多いことが判ります。
An.:
仏舎利って何でしたっけ?
Dr.:
仏様の遺骨を収めた建物のことで、黄金で覆われているので、とても目立ちます。
An.:
高床式の住宅って、たしか正倉院の建物が高床式と聞きましたが、どんな構造なんですか?
Dr.:
江澤さんは、本当に物知りですね!
 シルクロードからの、さまざまの貴重な文化遺産を保存している正倉院は、その保存している中身こそいわゆる西域、つまりウルムチやトルファンそして中央アジアから、カスピ海や黒海のほとりを通ってローマに至る通路の、文化的財産なんですけれど。
An.:
三好先生は、シルクロードもローマも行ったことがありますものね。
Dr.:
江澤さんも今年は、シルクロードにご一緒しますからね!
An.:
楽しみですぅ(笑)。
Dr.:
これらの地域は、乾燥した気候が多く、これらの地域からの文化遺産は、湿気を避けて保存される必要があります。
An.:
でも日本はどちらかと言うと、湿度の高い気候がメインです。
Dr.:
奈良市の東大寺大仏殿の脇に位置する正倉院も、内部に保存する遺産を乾燥させたまま後世に残す、そんな目的から建てられたものです。
An.:
高床式住宅は、南アジアの湿気の多い地域の住宅ですから、住居内部の湿度を下げるような構造になってるんでしょうね。
Dr.:
建物は、地面に直接建てられていると地面の湿気を吸い上げ易く、とてもじめじめします。
 マンションみたいな建物でさえ、高層階に比べて1階は湿度が高く、湿気(しけ)ってダニが増加したりカビが生えたり、しますからね。
An.:
南アジアでは、なおさらですよね。
Dr.:
もちろん西双版納の民族村のような、自然の気候の中で生活しているような環境では、地面には毒ヘビや有害な昆虫類が住んでいて、家屋内に侵入したりします。
An.:
恐い(笑)!
Dr.:
ですからそうした脅威を避けるためにも、高床式の家が役立つんです。実際民族村の民家の1階部分の柱は、丸木のままではなくって、わざわざ削って角が付くようにできています。
An.:
それはなぜ?
Dr.:
ヘビが柱に巻き付いて、住居部分までニョロニョロ(笑)登って来たりしないよう、角を付けてあるんです。
西双版納の周辺地理 西双版納の周辺地理
An.:
想像したくないです(笑)。
Dr.:
暑いですからね、そうした柱を立て屋根を作り、それから床や壁を作ってこうした南方型住宅はできるんですけど。床も壁も風の通り道となるよう、あっさり作られています。
An.:
壁も床も、空気が通り抜けるようにできているんですね。涼しそうですね。
Dr.:
実はこの、外気の通り抜け易い家屋構造も、日本に伝わって来ていて「在来工法」と呼ばれる家作りになっています。
An.:
そう言えば昔の日本の家屋も、夏過ごし易い代わりに、冬は家の中でも外気が入り込んで寒かった記憶があります。
Dr.:
ダニ・アレルギーとの関連で、その話題は後程ゆっくりご説明します。
An.:
本日も時間が無くなりました。お話しの続きが、とても楽しみです。
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