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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集


◆いびきは健康の証明?
 

江澤アナウンサー(以下An.
  三好先生、本日もよろしくお願いします。今回の話題は、ナント「いびき」だそうで! お話し、楽しみにしてました。

三好院長(以下Dr.) 
  アレッ、江澤さん。妙な音が聞こえて来ませんか?
(録音してあった、2名分のいびき・無呼吸、テープから流れる・1分間くらい)

An.:  三好先生、もしかするとこれって、本日のお話しの「いびき」じゃないんですか?

Dr.:  その通りです、江澤さん。一言で「いびき」って言っても、すごい音でしょう。

An.:  それに三好先生、これは音が凄まじいだけじゃありませんね。いびきの轟音の間に、何にも聞こえない時間が、切れ切れに……。いえむしろ、眠っていて息が止まってしまっている。生きてるのかしら? って心配になった頃に、突然の大いびきが交じるんですね。

Dr.:  さすがサエてる江澤さん、それこそが睡眠時無呼吸症候群と呼ばれていて、現代の人類に恐ろしい脅威をもたらしている、重大な病気なんです。

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An.:  いびきって、実は病気だったんですか!?江澤は今まで、いびきは健康の証明かと、信じ込んでいました。

Dr.:  たしかに昔は、「豪傑の鼾声、雷(いかづち)のごとし」とか言われたりして。

An.:  なんですか、そのゴーケツなんとかって?

Dr.:  昔々、侍が戦場で、翌朝に戦闘を控えて、まぁ弱虫の侍だったら、恐くて一睡もできない、つまり落ち着いて寝ていることなんかできない訳です。それに対して、戦いがまったく恐くない、本当の強い侍たちは、つまり豪傑ということなんですが、どんなに敵の大群が目の前にいても、堂々と睡眠をむさぼることができた。そういうエピソードが、あったんだそうです。そして、それだけ十分に睡眠を取ることができた侍だったら、翌朝の体調も万全ですからまさに「絶好調」で、敵の兵士をバタバタと薙ぎ倒した、と伝えられているんです。

An.:  へえー。

Dr.:  つまりこの言い伝えから判ることは、いびきは健康の証(あかし)と信じられてきた、ということですよね。

An.:  でも三好先生は、いびきは病気だったって……お話ししてました。

Dr.:  いびきそれ自体が、発生源であるご本人はともかく、周囲の人たちの健康をそこない兼ねないのは、お判り頂けますよね?

An.:  そりゃ、隣の人はいびきがやかましくって、とても寝付くどころじゃありませんね。いびきは周りの人たちの健康に害があるって、それは良く判ります。

Dr.:  いびきの方のお話しを伺うと、社員旅行で翌朝目覚めたら同室の同僚が全員他の部屋へ避難していた、とか。

An.:  江澤も聞いたことがあります。いびきをかく人が、やっぱり社員旅行で……(こらえきれないようにクスクス笑う)気付いたら夜中に布団蒸しにされていた、とか(笑)。

Dr.:  お話しとしては、笑い話に近いんですけどね。でもご本人や周囲の人にとっては、それどころではありません。例えば、今回の大震災と津波で、一斉に避難所暮しをするようになった人たちの中に、大いびきをかく人が一人でも交じっていたら……。江澤さん、どうなると思います?

An.:  それまでは、いびきをかく方ご本人 の自宅暮しですから、いびきもかき放題。誰にも、迷惑は及ばなかったんでしょうね。でも体育館生活じゃあ、大勢の中では目立ったんでしょうね。

Dr.:  体育館では大変だったみたいですよ。

An.:  そうでしょうね。

Dr.:  これは実話なんですけれど、福島県の双葉郡から小学校の体育館に避難して来た37歳の男性が、そうして当院で治療を受けたんです。

An.:  三好先生、いびきは治療で治るんですか!?

Dr.:  ですから、いびきは健康のシンボルではなく、病気の一種であることと、それは治療でコントロールできることも少なくない、というお話しを今回はシリーズでご説明します。

An.:  三好先生、江澤はもう一つ気になることが……。
最初に聞かせて頂いたいびきの録音なんですが、いびきの途中で呼吸が止まっていましたよね。むしろ、呼吸が止まっていて、思い出したようにいびきをかいていたような気もするんですけれど。

Dr.:  それを睡眠時無呼吸症候群と称して、いびきに関連する病気の本体なんです。

An.:  す、すいみん、無呼吸……? 済みません三好先生、それはいったい何でしょう?

Dr.:  睡眠時無呼吸症候群、省略してSASと言うんですけれども。いびきがあんまりひどいと、いびきといびきの間に息の止まってしまうことがあって。この行き詰まりが激しいと、血液の酸素濃度がすごく下がって、眠っている最中に窒息状態になるんです。

An.:  江澤がさっき聞かせて頂いたのは、窒息する音だったんですね!

Dr.:  眠るたびに窒息を起こすものですから、いびきをかいているご本人の脳や体は、みかけと違って実際には眠っていないんです。江澤さん、徹夜で不眠状態が続いたら、翌朝はどうなると思いますか?

An.:  江澤も学生の頃、良く徹夜で受験勉強をしましたけど。でも試験本番で居眠りしちゃって……結局まともな答案は書けませんでした。

Dr.:  それとおんなじことが、いびきの常習者では起こります。昔、山陽新幹線の運転士が居眠りで駅のホームを通り過ぎたり、それどころか今回の事故と同規模の米国のスリーマイル島の原発事故だって、背景に担当者の睡眠時無呼吸症候群があったと、伝えられています。

An.:  いびきって……ホントはとっても恐い病気だったんですね。

Dr.:  次回から、いびきにまつわる様々のエピソード、睡眠時無呼吸症候群のご説明、そしてその治療法について、お話しを進めます。

An.:  三好先生、今回のシリーズも、江澤はわくわくです!

◆いびきの治療を開発した日本人

An.:  三好先生、今日も楽しいいびきのお話しの第2回目ということで。本日もよろしくお願いしまーす。

Dr.:  復習の意味も兼ねて本日の放送も、先ずいびきの録音を聞き直してみましょう。(いびき録音30秒間くらい)

An.:  先生、いびきはその騒音のために目立ってしまう。特に今回のような体育館生活を強いられる人たちにとって、二次災害に近い状況をもたらすんでしたね。

Dr.:  そればかりじゃあなくって、いびきがあんまり凄まじいと、いびきの間に呼吸が完全にストップする時間が長くなり、慢性的な酸素不足を生じる睡眠時無呼吸症候群、簡単にSASと呼びますが、これはホンモノの病気になってしまいます。

An.:  その睡眠時無呼吸症候群、つまりSASはどのような症状を引き起こすんでしょうか?

Dr.:  いびきだけでもそうなんですが、夜間すなわち睡眠中の酸素欠乏状態が問題です。

An.:  やだ!いびきで人間の体は、酸欠状態になっちゃうんですか。

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Dr.:  いびきって、江澤さん、どういうことが起こっている状況でしょうね。

An.:  江澤なりに想像するんですけど、いびきってもしかしたら鼻やのどの、空気の出し入れの際のまさつ音じゃあないんでしょうか。

Dr.:  その通りです、江澤さん。そんなふうに、空気の出し入れで摩擦音が聞こえるってことは、呼吸がスムースになされている証拠でしょうか?

An.:  先生それはまったく逆で、空気を十分に吸ったり吐いたりできないから、まさつ音つまりいびきの音になるんだと思います。

Dr.:  さすがサエてる江澤さん、いびきは軽いけれども慢性的な人体の酸欠状態を、示唆してるんです。

An.:  じゃやっぱり、いびきは健康のシンボルなんかではない……。

Dr.:  いびきの原因はいろいろあって、それは詳しく後からご説明するんですけど、ともかくこの呼吸時のまさつから酸欠状態になる、それが慢性化し程度がひどくなると、それこそSASになるんです。

An.:  それじゃ先生、いびきやSASの本質は、人体の慢性的な酸欠状態が中心なんですね。

Dr.:  もちろんそれに伴って、様々の全身病を発症して来ますから、長い経過のいびきやSASは、酸欠だけじゃ説明できません。でも、長期に亘る慢性疾患でもある、いびきとSASの当初の病態は、体が吸い込む酸素の欠乏がそもそものスタートなんです。

An.:  それで、先生に前回お話しいただいた、山陽新幹線の運転手の居眠りのような、社会的影響を及ぼす睡眠不足が、SASでは起きるんですね。

Dr.:  さすがは一を聞いて十を知る江澤さん、すっかりいびきやSASの本質を見抜いてしまいましたね(笑)!

An.:  江澤の試験前の徹夜でさえ、たった一夜漬けなのに、何日も体調がヘンでした。SASの方って、365日一夜漬けを続けている状態なんですものね。病気にならない方が、おかしいくらい。

Dr.:  このいびきやSASは、大人でも子どもでも発生するんですけどね。

An.:  子どももいびきをかくんですか!

Dr.:  子どものいびきは、のどの扁桃やアデノイドという、子どもの免疫に関わるリンパ組織の肥大が、主な原因です。幸い成長とともにこれらは改善するので、たいていは子どもの成長を待つんですけど、あまりにひどい場合には扁桃やアデノイドの手術が、必要です。これも、のちほど、ご説明します。

An.:  子どもがいびきやSASで苦しむなんて、見てられませんものね。

Dr.:  大人のいびきやSASでは、体育館生活だけでなく、その人の人生に大きな影響の出てしまうことだって、あります。

An.:  いびきは、人生を変えるんですね!

Dr.:  想像してもらえると思いますが、いびきはつい最近まで病気として認めてもらえなかったんです。

An.:  健康の証だと、錯覚されてましたしね。

Dr.:  男性はまだましだったんですが、女性でもいびきに悩まされる人はいます。

An.:  人類の半分は女性ですし……。

Dr.:  第二次世界大戦直後までは病気扱いされなかったいびきを、世界で初めて病気として認識し、その治療法を開発したのは、日本の耳鼻科医だったんです。

An.:  へぇ~、日本人だったんですか!

Dr.:  その耳鼻科医は、お名前を池松武之亮(たけのすけ)先生というんですが、この先生が開業しておられた医院に、ある日突然江澤さんのような美女が、尋ねて来ました。その美女は、池松先生が何を尋ねても、ひたすら俯いて涙を流すだけだったそうです。

An.:  まあ、可哀相に。何が起こったのかしら。

Dr.:  池松先生のご本から、江澤さん、その部分を朗読してください。

An.:  読みます。「随筆。いびき博士」というご本です。……昭和27年の春、23歳のお嬢さんを母親が診察につれて来た。「先生、いびきは治りますか? 実はこの娘が一昨日結婚したんですが、あんまりいびきが高いという、それだけの理由でゆうべ帰されたんです。たった一日だけの結婚生活で」

  そのとき、つれられたお嬢さんは、しくしくとむせびだした。「そんな馬鹿な」とは言ったものの、こうなるともはや笑い話ではすまされない。くだんの母娘に同情しながら診察してみると、鼻やのどになにも異常が見当らない。しかしついに、ある異常をのどに発見したのである。簡単な手術を試み、その日は不安ながらもその母娘をなぐさめつつ帰したが、一週間目にはさしもの“離婚いびき”がとうとう治った。と言って、その母娘ともども大変な喜びでお礼に来られた……

  三好先生、ホントーにこんなことが、実際に起こったんですか? 江澤には信じられないような、キツネに摘まれた気分です。

Dr.:  この出来事以来、いびきは耳鼻科で手術したり、さまざまな治療法が開発されるようになったんです。私自身も、この池松武之亮先生が亡くなる直前に、いびき手術を見学に行って、その方法で手術してますよ。

An.:  エッ!それじゃ三好先生は、2代目「いびき博士」だったんですね!!

Dr.:  というところで、本日のお話しはおつもりです。

An.:  先生、先生。止めないで、もっとその続きを聞かせてください。

Dr.:  続きはまた次回、どうぞお楽しみに。

◆いびき・SASで重大事故

An.:  三好先生、前回までは、いびきは健康の証ではなく、むしろ病気であること、その騒音が社会的な迷惑に繋がること、中にはひどいいびきのために、結婚当日に離婚された悲劇の花嫁も存在したこと、などについてお話しを伺いました。

Dr.:  江澤さん、それだけじゃあなくて、いびきは睡眠時無呼吸症候群すなわちSASとも呼ばれ、夜間の酸欠状態から昼間のすごい眠気のもととなり、ときには重大な事故を引き起こすこと、についても触れました。

An.:  そうでしたね先生。そう言えば江澤は、先生から教えて頂いたSASによる、山陽新幹線の居眠り事故の記事を見つけました。読み上げて、良いでしょうか?

Dr.:  ぜひ、お願いします。

An.:  読みます。「2003年2月26日、JR山陽新幹線岡山駅で、東京行きの上り新幹線が、所定の位置より約100m手前で止まり、車両3両がホームからはみ出したままとなった。車掌が運転席まで駆け付けると、運転士は腰掛けたままで眠っているのが発見された。この運転士は停車後も車掌にゆり起こされるまで眠り続けていた。運転士の体重は100kgを越える肥満タイプであり、“5~6年前から睡眠中に何度も目が覚める”と周囲に話していたという。」先生、これが先生のおっしゃるSASによる事故の、典型例なんですね?

Dr.:  インターネットで調べると、この事故について、こんな項目が見つかりました。江澤さん、これも読んでみてください。

いびきをかきやすい人
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An.:  ええっと、これですね。「山陽新幹線の居眠り運転事故で、JR西日本は5日、運転士が重い“睡眠時無呼吸症候群”つまりSASだったと発表した。同社は新幹線の運転士約370人を対象にSASの緊急診断を実施する。国土交通省も同日、睡眠障害の対策を鉄道各社に求める方針を決めた。」先生、こうしてみるとやはりSASは、重大な社会問題の原因と、認識されているんですね。

Dr.:  この運転士の医学的検査結果も発表されていまして、睡眠中1時間あたり40回くらい呼吸が停止したり、それに近い状態になることが判りました。

An.:  先生、1時間って60分ですよね。1時間に40回息が止まるってことは、呼吸している時間の方が短いくらいじゃないですか!

Dr.:  それをこの運転士の場合、血中酸素飽和濃度って言って、血液の中の酸素の濃度を調べてあるんです。

An.:  なんですか?そのケッチューなんとかっていうのは。

Dr.:  人間がちゃんと酸素を吸い込んでいるかどうかの検査で、理想は100%で少なくとも97%は酸素を吸ってないと病気扱いされちゃうんです。

An.:  江澤はいつも金欠病なんですが、酸 欠病っていうのもアリなんですね。

Dr.:  そしてこの運転士は、睡眠中の血液の酸素濃度がたった75%だったんです。

An.:  それじゃ眠るたびに酸欠状態で、外観上は眠っているように見えても、脳や体はホントはちっとも休んでいない。本当の睡眠はまるでとっていない、そういうことですね。

Dr.:  だからこの運転士のようなSASの人は、夜間の睡眠不足を取り戻そうと昼間はとっても眠いんです。

An.:  ああ、だから居眠り運転を……。

Dr.:  恐いのはこうしたSASの人って、外観上なんともないだけじゃなく、ご本人もなんの自覚症状もないってことなんです。

An.:  自覚症状がなきゃ、病気だと知らないし、まして病院で検査しようなんて、思いませんよね!

Dr.:  事故の陰にSASありって、言いたくなるような事件が、これまでにもいくつか報告されていまして。2005年11月に、名神高速道路で起きた7人死亡の多重衝突事故。2004年3月に、羽田発山口宇部行きの全日空航空機で機長が居眠りし、訓戒処分を受けた件。2003年10月に、名古屋鉄道新岐阜駅で電車がホーム端の車止めに衝突した事件。これらはみーんな、SASが背景に潜在したと、考えられています。

An.:  知りませんでした。SASって、ホントに恐ろしい病気なんですね。

Dr.:  前回もちょっと触れたんですけどね。スリーマイル島の原発事故、そしてあのチェルノブイリの原発事故の背景にも、SASや睡眠不足による作業員の操作ミスが、からんでいたと考えられています。

An.:  そんな重大な事故も、SASが関連しているんですね!……知りませんでした。

Dr.:  アメリカ・バージニア州の調査では、SASの患者の交通事故発生率は、SASのない人の約7倍となること、SASが重傷であるほど事故の発生率は高くなることを、報告しています。

An.:  恐ろしいですね。

Dr.:  だって、運転シミュレーションって、ほらゲームセンターで車の運転席に座った状態で、画面が動くゲーム機がありますよね。

An.:  知ってます。知ってます。

Dr.:  アメリカではこれを使って、SASの人の運転ミスの発生率を研究したんですけどね……。

An.:  どういう結果だったんですか?

Dr.:  いわゆる、酒気帯び運転の3倍ものお酒を飲んだときよりも、SASの人の運転ミスははるかに多かったんです。

An.:  エーッ!江澤には信じられません。

Dr.:  ですから日本の道路交通法では、SASを放置している人の運転免許取得や更新に、制限があります。

An.:  SASの人は、運転できなくなっちゃうんですか?

Dr.:  ご心配なく。SASにはちゃんと治療法があって、治療さえ受けていれば運転免許も大丈夫ですから。後程、それについてもご説明しますね。(つづく)

 


関連リンク: 用語集 いびき
  用語集 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  用語集 池松武之亮先生
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No.197
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