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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

アレルギーフィールドノート(3)小児鼻出血と鼻アレルギー
三好 彰(三好耳鼻咽喉科クリニック・院長)
程  雷(南京医科大学医学部耳鼻咽喉科・講師)
三邉武幸(都立荏原病院耳鼻咽喉科・医長)
臨床と薬物治療 16:232-234,1997.


図1 鼻を手で擦り上げる動作
(allergic salute)

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小児鼻出血では、その背景にアレルギーの存在を重要視する意見がある。われわれは北海道白老町の全児童・生徒2677例を対象に、鼻出血とスクラッチテスト陽性率との相関性について検討した。
鼻出血の性差では、男子の頻度が女子に比べ有意に高かった。
鼻出血(+)例のスクラッチテスト陽性率は、鼻出血(+)例のスクラッチテスト陽性率は、鼻出血(-)例の陽性率に比べ有意に高かった。小児鼻出血は、アレルギーとの相関性が高いように推察された。
小児鼻出血とスクラッチテスト陽性率の相関性は、アレルギーの鼻症状に対し無意識に鼻粘膜を刺激することの多い低学年の児童においてより高かった。

 小児鼻出血の背景として、アレルギーの関与を重視する意見がある〔1〕。小児は鼻アレルギーの症状が明確でなかったり症状をうまく説明できないうえに、鼻をいじったりするため鼻出血を生じやすいのであろう。

 佐々木ら〔1〕は、耳鼻咽喉科を受診した15歳までの小児鼻出血症例117例に対し、各種のアレルギー検査を施行している。うち皮内反応陽性を実施したのは84例で、それらの62%が何らかのアレルゲンに対し陽性反応を呈した。また皮内反応陽性だけでなく、鼻汁中好酸球や肥満細胞いずれかの陽性例も含めると、117例中84例(71.8%)で鼻アレルギーの関与が疑われた。

 Walker〔2〕は小児反復性鼻出血症例60例を検討し、明確なアレルギー性疾患の併存18例(30.0%)、2〜5年以内にアレルギー性疾患を発症した15例(25.0%)、アレルギー性疾患の既往の疑われた11例(18.3%)を鼻アレルギーに関連している鼻出血例と考えた。すなわち合計すると60例中44例(73.3%)であった。

 Scottら〔3〕は小児アレルギー専門医を対象に、小児鼻出血と鼻アレルギーについてのアンケート調査を実施した。そして鼻粘膜局所の浮腫と血管透過性亢進のほかに、鼻を強くかんだりこすったりする機械的刺激が二次的に関与していると推定した。Scottらも触れているが、allergic saluteと称される鼻を手で擦り上げる動作(図1)が小児の鼻アレルギーではみられ、鼻に対する機械的刺激となっている可能性も高い。なお、allergic saluteは、鼻アレルギーによる鼻のかゆみや鼻閉に対する対応とされる。

北海道白老町における調査

 これらの指摘に対しわれわれは、北海道白老町の全児童・生徒についてスクラッチテスト陽性率と鼻出血との相関性を検討した。これまでの報告は、耳鼻咽喉科もしくはアレルギー専門家を受診した症例に関してのもので、実際に一つの自治体の小児全員を分析した報告はなかったからである。

 対象は、1989〜1991年度に耳鼻咽喉科健康診断を受けた白老町の児童・生徒2677例(男子1300例、女子1377例)である〔4〕。健康診断は、小学校1年生(小1)について行い、3年かけて全児童・生徒を網羅した。

 調査項目は、自覚症状に関する問診表(図2)とつねに同一の視診担当医一人による鼻鏡検査、そしてハウスダスト(HD)、コナヒョウヒダニ(ダニ)、スギ花粉(スギ)のスクラッチテストである。ここでは「鼻出血あり」との判断は、図2の児童・生徒の保護者に対するアンケート項目中、鼻血で“いつも”もしくは“時々”と回答した例に対して行った。また、(1)視診担当の医師により鼻アレルギーもしくはその疑いと診断され、(2)鼻アレルギー三微(くしゃみ・鼻汁・鼻閉)のうち二つ以上の症状を有し、(3)スクラッチテストにてHD、ダニ、スギの3種のうち1種以上に陽性反応を示す、との基準を満たした例を鼻アレルギーと診断した。(2)の判定は、鼻出血と同じくそれぞれのアンケート項目に、“いつも”もしくは“時々”に印のついている回答を「症状あり」とした。

さまざまな角度からの検討


仙台藩元陣屋に一本だけ残された藩士手植えの赤松
(撮影:編集工房KAZE 代表 辻 正則)

図3 鼻出血とスクラッチテスト陽性率
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 そしてアンケートにて「鼻出血あり」と診断されたのは、2677例中793例(29.6%)であった。また男子1300例中443例(34.1%)、女子1377例中350例(25.4%)であり、有意差ともって男子の鼻出血の頻度が女子に比べて高かった(χ2検定、p<0.001)。

 学年別に鼻出血をみると、小1で779例中234例(30.0%)、小4で896例中276例(30.8%)、中1が1002例中283例(28.2%)で、三者間に有意差を認めなかった(U検定)。
「スクラッチテスト1種以上陽性」率は、2677例中959例(35.8%)であった。内訳は男子1300例中559例(43.0%)であり、女子1377例中400例(29.0%)で、男子の陽性率が有意に高い(χ2検定、p<0.001)。さらにこれは、学年が上になるほど上昇する傾向を認めた。

 鼻出血(+)793例中「スクラッチテスト1種以上陽性」例は337例(42.5%)で、鼻出血(-)1884例中では622例(33.0%)であり、前者の陽性率が有意に高かった(χ2検定、p<0.001)。この傾向は男女とも同様であった。

  学年別の鼻出血とスクラッチテスト陽性率を図3に示したが、男女とも高学年になるほど鼻出血とスクラッチテスト陽性率との相関性は低くなる傾向がみられた。これは低学年ほどallergic saluteなど、無意識にかつ機械的に鼻を刺激する頻度が高いためと考えられる。

 なお、前記(1)〜(3)の基準を満たし鼻アレルギーと診断された例は、2677例中121例(4.5%)であった。また男子1300例中69例(5.3%)と女子1377例中52例(3.8%)が、鼻アレルギーと診断された。この両者間では、男子の鼻アレルギー有病率の高い傾向がみられた(χ2検定、p<0.1)。学年別では、小1で2.1%、小4で5.2%、中1で5.8%と学年が上になるほど有病率が上昇した。

鼻出血と鼻アレルギー有病率相関性

 鼻出血と鼻アレルギー有病率との間には鼻アレルギー例数が少なく、有意差を認めることはできなかった。

 つまりこれらをまとめると、以下のような結果が得られたこととなる。

(1)鼻出血の性差では、男子の頻度が女子に比べ有意に高かった。この性差による傾向は、スクラッチテスト陽性率、鼻アレルギー有病率とも同様であった。

(2)鼻出血(+)例のスクラッチテスト陽性率は、(-)例の陽性率に比べて有意に高かった。(1)と併せて考えるに、小児鼻出血は鼻アレルギーとの相関性が高いように推察された。

(3)小児鼻出血とスクラッチテスト陽性率の相関性は、アレルギーの鼻症状に対し無意識に鼻粘膜を刺激することの多い低学年の児童でより高かった。児童ことに低学年の小児では、鼻出血の背景にアレルギー性の機序の存在することが推測される。


アレルギー検査の実施風景

健診の模式図
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■文 献
〔1〕佐々木好久,他:小児鼻出血患者の臨床アレルギー学的検討.
耳鼻咽喉科,53:551-555,1981.
〔2〕Walker DH:Allergy and recurrent epistaxis in children.
Ann Allergy,17:872-877,1959.
〔3〕Scott RB,etal:Epistaxis in allergic children.
Ann Allergy,18:728-737,1960
〔4〕三好 彰,他:小児鼻出血とスクラッチテスト陽性率の相関,
耳鼻咽喉科,頭頸部外科,68:722-726,1996

※現在、程雷先生は南京医科大学耳鼻科教授、三邉武幸先生は昭和大学藤が丘病院耳鼻科教授になっておられます。



関連リンク: 索引 北海道白老町

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No.188
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