3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集


Q:味覚が無くなってきた

1〜2ケ月前から、胃の調子が悪く胸灼けのするような感じがあり、味が余りしなくなったので、内科を受診し胃薬をもらいました。胃は良くなって来たのですが、味覚がほとんど無くなって来たのです。京都で診てもらえる病院を、教えてください。

(44歳・女性)

 

A:血清中の亜鉛低下による味覚障害

味覚という感覚は、嗅覚と並んで人間の生存と種族保存に深く関わっている感覚で、視覚・聴覚など思考に関わる感覚をgeistnahe Emphindung(精神に近い感覚)と呼ぶのに対して、leibnahe Emphindung (生命に近い感覚)と称します。以前は味覚は4原味と言って、甘味・塩味・酸味・苦味から成っていると考えられていましたが、味の素におられた山口静子先生が「旨味」も味覚を構成する重大な要素であることを証明し、今では5原味と理解されています。

また20年前までは視覚・聴覚は大脳皮質で検知(何か見える、何か聞こえるという感じ)と認知(見えているものが何なのか理解できる、聞こえている音が何の音なのか判るという感覚)に関わる領野が異なるのに対し、味覚・嗅覚は検知・認知が大脳で分かれているのかどうか、知られていませんでした。それに関して私は、大脳皮質に味覚の神経繊維が皮質に投射(神経が繋がっていることです)される最終の中継地である視床で、すでに認知・検知に関わる繊維が分かれることを証明し、発表しました。ですから味覚も、大脳皮質では認知・検知に関わる領野が、別々であると理解できます。この内容は、私がシンポジストを務めた1983年の日本医学会総会で取り上げられ、だいぶ話題になりました。

つまり味覚とその障害については、日本は世界に先駆けた研究業績があるということになる訳です。

その味覚障害ですが、原因としてもっとも多いのが血清中の亜鉛の低下です。特発性に、何の誘因も無く血清亜鉛低下とそれによる味覚障害の発生することもありますが、大抵は薬剤性かもしくは亜鉛摂取量の不足によるものです。

薬剤性というのは、薬剤によっては体内の亜鉛と結合して一緒に体外に排泄されてしまうため、血清亜鉛の低下する形です。また亜鉛摂取量の不足とは、お年寄りなどで食が細くなり、それに従って亜鉛の摂取量も少なくなってしまうものです。

薬剤性では基礎疾患の治療も大切ですので、もともと治療を受けていた主治医の方と相談しながら、原因の薬剤を他の薬剤に変更します。それと並行して、亜鉛製剤の服用を行います。

摂取不足は、確かに亜鉛を多く含む食物は牡蛎やレバーのように、やや癖のある味のものが少なくありません。調理方法に工夫を凝らしながら、少しでも摂取量を増やすようにします。それに亜鉛製剤の服用も、もちろん重要です。

亜鉛製剤ですが、現時点では亜鉛を補充する製剤が保険診療では使用できませんので、亜鉛製剤は私費で負担せざるを得ません。

そんなに、コストは高くありませんけれども。

京都に限らず、最近では味覚障害と血清亜鉛の不足の相関について知識が行き渡っていますので、大抵の耳鼻咽喉科で適切な治療を受けることができます。余りご心配なさらずに、お近くの耳鼻咽喉科を受診してみてください。


関連リンク: 院長著作コミック「味気ない世界の中心で」
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