3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集


Q:花粉症のメカニズムと治療などについて

36歳の男性で、10年以上前から花粉症で悩んでいます。いくつか教えて頂きたいのですが。
@原因を追求して対策を立てたいと思うのですけれど、花粉症のメカニズムについて説明してください。
A病院での治療ばかりでなく、民間療法や食事療法について教えてください。
Bこれまでは市販薬を使用していたのですが、私に合うクスリと合わない薬があるのは何故でしょうか?
Cタバコも吸わない方が良いのでしょうね?

 

A:「ハックションコミック」をお読みください

花粉症の症状は、鼻ではくしゃみ・鼻水・鼻詰まりであり、目では痒みと涙です。私は耳鼻咽喉科医ですので鼻症状についてご説明しますと、これら花粉症の症状はすべて本来ならば異物が体内に入って来ようとするのを、入り口でストップさせようとの防御反応です。ところがアレルギーでは、これらの正常なはずの防御反応が過剰に起こりますので、人体にとって負担が大き過ぎる訳です。

それは何故かというと、人類にとって最大の敵は長い間細菌などによる感染症でした。事実現在の日本人の平均寿命はとても長くなりましたが、これは感染症による乳児死亡率が極端に下がったことが原因です。100歳で亡くなる方と0歳で死亡する乳児とが1人ずついたら、平均寿命は50歳となります。0歳での死亡が60歳に伸びるだけで、平均寿命は80歳になります。

この理屈はご理解頂けますよね?

そして人類は近年になって、動物性蛋白質や動物性脂肪の摂取量が増加したことにより、体内の免疫機能は強くなって来ました。ところがその最大の敵であった細菌は、衛生環境の改善で余り人体を襲わなくなりました。 例え話なのですが、人間が外敵に危害を加えられそうになった時、人間自体そんなに力が強くなければ外敵に対する防御は正当防衛です。ところが本人も知らないうちにすごく力が付いていたり、手に武器を持つようになっていたとしたら、人間は外敵を押し退けるつもりで相手を叩きのめしてしまうかも知れません。これを法的には過剰防衛と称し、逮捕されてしまい兼ねない状況です。

つまり人間の正常な防御行動でさえ、力が余っているとむしろ本人に害になる結果を生むことになるのです。

アレルギーも、同じ説明ができます。本来ならば細菌など外敵の鼻からの体内への侵入を防ぐ、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりなどの免疫機能による正当防衛行動も、力が余り過ぎていると花粉など害の無い物質の侵入に対しても、過剰なまでの防御反応を示してしまうのです。

花粉症の際のひどいくしゃみ・鼻水・鼻詰まりは、このように人体の過剰防衛行動と考えることができます。

こうした私の例え話は、実はネズミを使った動物実験と、実在の人間に対する疫学調査で裏付けられています。

人間の免疫細胞はTh1とよばれる感染症に関与するタイプと、Th2というアレルギーに関係するタイプに分類できます。そしてネズミではこれらTh1とTh2とがバランスを保っていて、Th1が優位のとき(感染症の際)にはTh2が抑制され、Th2が優位のとき(アレルギーの際)にはTh1が抑制されているのです。

これを人間で証明したのが、当時Oxford大学に居た私の共同研究者の白川太郎・現京都大学医学系大学院教授です。

白川先生は和歌山県の中学生で、Th1優位となる病気の代表である結核(スギ花粉症の出現前は日本人の国民病と称されたこともある)の指標のツベルクリン反応の大きさと、Th2優位となるアレルギーの指標IgE値とを測定し、ツ反の大きさとIgE値とが逆比例することを立証しました。

つまり結核などTh1優位のときにはアレルギーになりにくく、結核感染が少なくなるとTh2優位のアレルギーになり易いのです。

そう言えば結核の消滅以後の日本人の国民病は、スギ花粉症でしたよね。

この白川先生の論文は「サイエンス」誌に掲載されましたが、思わぬところで私の仮説は医学的な証明がなされたことになります。 このTh1/Th2バランス説以外のアレルギーの成立については、すでにマイドクターズに共同通信連載の解説文を届けてありますので、そのコーナーをお読みください。

花粉症の対策と治療は、原因療法と対症療法、それにその中間に位置するものなどがあります。

原因療法は原因であるスギ花粉に対する対策法で、花粉に曝露されないようにすることがいちばん大切です。

スギ花粉が飛散しそうな晴れた日・風の強い日・気温の高い日・雨のあがった直後などは、スギ花粉が大量に飛散する可能性がありますから、外出を避けてください。

外出時は眼鏡・マスクの装用を心がけ、衣服は花粉の付着しにくい表面がすべすべの材質を使用したそれが、望ましいと思います。外出から帰ったら衣服の花粉を家の外ではらい落とし、可能なら掃除機を衣服にもかけたいところです。

掃除機は排気口から屋内にまた花粉を撒き散らすタイプは、とても困ります。セントラル排気型か排気ダクトを屋外に出せるタイプ、あるいは非排気型が望ましいところです。花粉の飛散する時期の、屋外での布団干しも考えものです。日中たっぷりと花粉を布団に吸い込み、夜間に花粉症を発症する原因になります。これは思い当る人が、結構居るみたいです。ことにダニに対するアレルギーのある人は、春の晴れた日差しに誘われてダニを殺そうとつい布団を干してしまうみたいですから。

医療機関では、こうした生活指導とともにスギ花粉などの飛散情報を発行しているところが多いようです。

医療機関における原因療法としては、スギ花粉に対する減感作療法がありますが、2〜3年間毎週注射を受けに医療機関に通う方はまず無く、実際には困難です。なにしろ花粉症のシーズンが終われば、まったく症状がでなくなるのですから、無理は無いと思いますが。

対症療法としては、抗アレルギー剤を使用しての季節前からの予防的治療や、抗ヒスタミン剤を使用して症状のみ抑制するやり方があります。点鼻薬・点眼薬を併用するのも良く、ことに点鼻薬では体内に吸収されないステロイド剤があって、これは有効です。

詳しくは、これもマイドクターズに共同通信の連載記事が届けてあります。そのコーナーをクリックしてください。

最近、レーザーを使用して花粉症の季節前に鼻粘膜を軽く焼灼する手術が、推奨されるようになりました。これはつまり、アレルギーというのは抗原抗体反応ですから、鼻粘膜の反応の起きている場を焦がして刮げ落としてやろうとするものです。

シーズンに入ってからはこの手術法、お勧めできませんので、季節に入る前に受けておかれた方が良いようです。

市販薬としては、藤沢薬品の「エージーアイズ」などが有効です。

この商品について、例のトンデモ本の「買ってはいけない」がインチキなことを書いていましたので、「決定版!本当に”買ってはいけない”か!?」(ビジネス社)の142〜143ページに反論をしっかり書いておきました。読んで見てください。

タバコは花粉症の場合、控えてください。アレルギーとなった鼻粘膜は過敏で、タバコの煙など刺激物に接触すると、アレルギー反応がひどくなります。

その他の事項についてもお答えしたいのですが、余りに回答すべき内容が多くて・・・ 。 済みませんが、私の下記の図書を、参照してください。

  1. 三好 彰:みみ、はな、のどの変なとき,いちい書房,東京,1993
  2. 三好 彰 監修・解説:スギ花粉症・ハクションコミック 美人アナ花子さんの場合,いちい書房,東京,1995
  3. 三好 彰 編著:鼻アレルギー,日本評論社,東京,1998
  4. 三好 彰 編:実地医科のための花粉症診療の実際,メディカル・コア,東京,1998
関連リンク: スギ花粉症 〜レーザーとソムノプラスティによる新しいアプローチ〜
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