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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

横綱の外耳道炎


名横綱・柏戸が逝きました。

巨人・大鵬・卵焼き、で知られる名横綱の大鵬と共に歴史上の白鳳時代に音を重ねた「柏鵬時代」を築いたことは、読者の方々もよくご存知のことと思います。それに大鵬の優勝回数32回に対し5回に留まったこと、それは相撲の取り口の激しさによるケガが原因であったことも、有名です。

実際その相撲は「豪快な勝ち方と豪快な負け方が特徴だった」と評され、人柄も「豪放らいらくで、竹を割ったような気性の人」と言われます。

その柏戸が耳を傷めて、やはり耳鼻科医だった私の父のもとを訪れたのは、私が中学校2年生の夏でした。今から考えると、仙台準場所の興業にやってきたときのことと思われます。診察のついでに我が家の茶の間に寄ってくれた柏戸の姿を、私は今でもまぶたの裏に思い描くことができます。

天下の横綱を悩ませた耳の痛みは、外耳道炎。耳の外側の皮膚の化膿でした。

子どもの冬の風邪をひいたときの耳の痛み(急性中耳炎)と逆に、夏の熱い盛りに耳を掻きすぎたりしてバイ菌が入り、ひどく痛む病気です。柏戸は相撲で傷つけた耳の外側から感染を生じたのかも知れませんが、糖尿病などが存在して人体が感染に弱くなっていると、ひどくなりやすいのです。

そういえば柏戸が亡くなったのは、持病だった糖尿病が誘因だったとか。速攻で鳴らした横綱も、糖尿病には寄り切られてしまったようです。

耳鼻咽喉科を訪れねばならなかったほど、痛みの強かった外耳道炎。柏戸の巨体はそのころから、糖尿病にむしばまれていたのでしょうか。

外耳道炎は一般的には黄色ブドウ球菌という、どこにでも存在するバイ菌が感染して発生します。耳の外側が腫れており、耳たぶの前の部分を押したり耳たぶそのものを引っ張ったりすると、痛みの一層強くなるのが特徴です。

先に触れましたが基礎に糖尿病が存在する場合、あるいは緑膿菌と呼ばれる強いバイ菌の感染が生じると、外耳道炎は極端に悪化します。こんな糖尿病と緑膿菌の関与する外耳道炎を「悪性外耳道炎」と証して、特に気をつけるようにしています。痛みがひどいばかりでなく、耳の骨を侵して顔面神経麻痺を来すことも少なくないからです。
 
(三好 彰:三好耳鼻咽喉科クリニック院長・南京医科大学耳鼻咽喉科客員教授)
 
河北新報 マイタウンかほく泉2月号(平成9年1月29日)

関連リンク: みみ、はな、のどの検査・処置 (耳が痛い時2)
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