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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

聴神経腫瘍


聴神経腫瘍による突発性の難聴に初めて巡り合ったのは、すでに20年前のことです。

少し脳性麻痺の傾向がある当時36歳の男性が、私のもとを受診しました。

この方は前の年の秋に、突然の左側難聴と耳鳴りを自覚しました。そしてその頃からふらつき気味のめまいもあって、階段を歩く時には手摺りにつかまらなければ歩けなくなりました。

私のもとを訪れたときには、左の聴力は測定できないくらい悪化しており、めまいの検査でも一部異常を示しました。めまいに関して詳しい検査を試みたのですけれど、この方には脳性麻痺特有の痙攣があって、なかなか精密には判断できません。ただ、左側内耳の三半規管の機能が麻痺していることは確かでした。

当時のCTは現在ほど性能が良くなくて、撮影には時間がかかりました。このため痙攣のあるこの方は、麻酔なしでは画像がブレてしまいます。

それに対して、比較的撮影時間が少なくて済む内耳のレントゲン写真には、腫瘍による内耳道(聴神経の通り道)の破壊がはっきり写っていました。

そして、今度は睡眠薬を使って、痙攣の無い状態で撮影したこの方のCTでは、大きな聴神経腫瘍が確認できたのです。

最終的にはこの方は、脳神経外科で開頭手術を受け、聴神経腫瘍であることが確定診断できました。

それにしても、開頭手術が必要なくらい大きな腫瘍でも、何の自覚症状も無いものでしょうか。

実は、聴神経腫瘍は良性の腫瘍ですので、ゆっくりと発達することが特徴の一つです。このため聴神経などは強く圧迫されながらも、難聴を生じにくいのです。

それが急に突発性難聴の形となるのは、腫瘍内部で出血を起こしたりして急激に神経を圧迫するせいだと推測されます。

この方の場合もかなり大きな腫瘍でしたが、内部で出血し難聴とめまいを生じるまで症状が表に出なかったものと考えられます。

そんな訳でこの方は、私の経験した突発性難聴の形で発症した聴神経腫瘍の、第一症例でした。

この方を経験してから私は、突発性難聴の症例に対してより慎重に対応するようになりました。なぜなら聴神経腫瘍は、それまで考えられてきたより、意外に多く見つかることがあるからです。
 
河北新報 週間るぽ 北部版 第141号 1998年10月19日

関連リンク: 3443通信 2003年7月号 『めまいをおこす耳の奥の腫瘍-石川教授-』
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