3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
耳・鼻・のどに効く話
住まいのダニはなぜ増えた?
−アレルギーの原因について−

「埃高い」アレルゲン


オレはダニ。ダニって言ってもね、まちがっちゃあいけない。オレは街のダニじゃなくって、正真正銘、誇り高く由緒正しい家屋のダニなのだ。

もっともオレたちが住んでいるのは家の中でもゴミや塵の中だから「誇り高く」じゃなくって「埃高く」だろうってまぜっ返しもあるけれど。

オレたちが最近えらく話題になっているのは、オレたちダニが近頃激増のアレルギーの最大の原因らしいってことが分かったためさ。アレルギーってぇとつまり・・・・・・ええっと何だっけ。そうそうアトピー性皮膚炎とか、気管支喘息とか鼻アレルギーとか、まあそんな名前の小難しい病気さ。

もちろんオレたちの他にもスギだとか、悪者は世の中にたくさんいて、オレたちだけが悪いって訳じゃない。だけどオレたちくらい人間生活のそばに密着して、祟っている病気の素もありゃしない。

オレたちのようにアレルギーの原因となっている悪者を、かたじけなくもかしこくも「アレルゲン」って言うんだ。

そしてアレルギーって病気が増えたのは、そりゃあいくつか理由はあるんだろうけど、オレたちアレルゲンがものすごく多くなったってぇことが、一番の原因さね。それじゃオレたちダニは、一体何故増えたんだろう。その原因さえ分かれば、少なくともダニが原因のアレルギーを激減させることはできるはずだからね。

ダニが住みやすい最近の家屋

人間生活ってのは、その中にいる人間にゃ分からんだろうが、住んでる環境や生活習慣(エーゴで言うとライフスタイルってんだそうだ)が、戦後すごく変化しているんだ。人間にまとわりついて、人間のことを傍らからすべて観察している人間研究家のオレには、それがよく分かる。そういうのを岡目八目って言うんだぜ。うん、オレって学があるなあ。

オレたちダニは、温度20〜30度、湿度60%以上の場所で増える。それにエサになるカビや有機物(人間のフケなんかのことさ)があって、生活したり卵を産んだりするスペースがあれば、どんどん仲間を増やす。

暑くてじめじめしている夏は、だからオレたちには最高さ。冬だって昔は家の中を風が吹き抜けて寒くって、空気も乾燥していたからオレたちの生活には不向きだった。

だけど最近の日本の家屋、アレは何だい?高気密高断熱とか言って、湿気が逃げていかないから冬だってちっとも家の中ァ乾いちゃいない。畳なんて昔は風が吹き抜けて、すごく乾いてた。畳の下の床はわざわざ「あら床」ってくらいで隙間だらけの板敷きで、そこに新聞紙をしいて畳を置いたんだ。今じゃあコンクリート床の上に畳を直敷きだからね。風は抜けないし、コンクリートは打ってから一年間湿気を出し続ける。畳はたちまち、じめじめしちまう。畳の上にカーペットを重ね敷きなんてことになると、カーペットの奥まで湿気が忍び込む。その上に布団を敷いて寝る人間は、湿気に囲まれて眠っていることになる。

それに室内の空気自体の、湿度の問題がある、空気ってのは温度が高いほどその中に水蒸気を多く含み、湿度が低い。温度が下がるとその逆で、湿度は上昇する。学のあるオレにはよく分かるんだけど、そもそも高気密高断熱住宅は北欧型の住まいで、室内すべての部屋を一日中暖めておくのが原則(全室暖房・連続暖房)だ。すると温度が低くならずに、家屋内の湿度の上昇は制御される。だから、オレたちダニの生活には、不向きなんだ。

ところがそれが、日本じゃどうだい。高気密高断熱の住まいをせっかく作りながら、暖房は部屋の一部分のみ。屋内の大部分は冷たいままだ。(局部暖房)。おまけにその暖房も昼間だけ点して、夜は消しちまう(間欠暖房)。昔の風通しの良い生活と違って高気密高断熱住宅では、人間の生活した炊事や風呂などの湿度が屋外に逃げないから、屋内に蓄積されている。部屋の真ん中は暖房が点けられていて湿度が低いけど、片隅の押し入れの中なんかは冷たくって湿度も高い。おまけに部屋の中央の暖房のそばは温かく局部的に乾燥感が強く、ストーブにやかんをかけたりする。ますます部屋の湿度が上昇してオレたちダニには住みやすい環境になるのさ、

それがオレたちが増えて、日本全国でダニのアレルギーが増加した最大の理由だとオレたちは思うんだ。

高気密高断熱住宅ってのは、寒い地域で人間が健康に生活するには向いている。高血圧や脳卒中を予防できるからね。だけど戦前の日本の住宅は、東南アジア型の風通しのすっごく良い造りで、暖房習慣も、さっき言った局部暖房・間欠暖房だった。戦後日本人の生活がどのように変化して来たか、人間本人は気付いちゃいない。戦前とは違った高気密高断熱住宅に住まいが変わったのに、住み方が旧態依然なんだもんね。

オレたちダニは人間の気付かないことをよいことに、オレたちの住みやすいスすばらしい環境を享受してるって訳。ダニのアレルギーが増えて、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、そして鼻アレルギーが増加してるのもオレたちにゃ当たり前だと思えるよ。

布団やぬいぐるみを、オレたちダニの入り込めない製品にするってのも大切だけど、戦後の人間の生活習慣がどう変わったのか自分で顧みるってのも役に立つもんだぜ。

人間ももう少し、オレたちみたいに賢くならなくっちゃ、ね!

 
いきいきライフみやぎ第23号(平成9年1月15日発行)
花粉症・アレルギーについては、『スギ花粉症』コミック『愛しのダニ・ボーイ』でもご紹介しています。
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