3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

回虫の独白
回虫は花粉症を予防する?


おいらのことを知ってるかい?おいらは回虫って言ってね、昔は誰でもおいらをお腹の中に飼っていたものなのさ。そう、難しいセリフで形容すると、腸管寄生虫とか言うんだけれど、人間の体の中にいて栄養を人間様から頂いていた存在だったのさ。

そんなおいらは嫌われものでね、昔はみんなやっきになっておいらを退治しようと、薬を飲んだりしていたものさ。まあしようがない、おいらがお腹にいると人間は腹痛を起こしたり、栄養をおいらに吸い取られて病気になったりしたんだからね。


〜人間様のお役に立つのだ〜

そんなおいらが、実は人間様のお役に立っていたって説が最近エラーイ大先生から提唱されてね、おいらはこのごろ、ちょいと株が上がったりしていたんだ。

それは何故かって?実はおいらの口からはアレルギー反応を抑える物質が分泌されていてね、実験的にはアレルギーを軽くすることができる。だからおいらは人間様の体内で、人間様の花粉症やアトピー性皮膚炎を軽くする役目を果たしていたんじゃないかってわけ。それでおいらが高く買われた、ということなんだ。

それから昔はおいらの仲間たちがたくさんいたのに、このごろじゃあんまり顔を見かけなくなった。まるでそれに一致するみたいに、人間様たちの間では花粉症やアトピー性皮膚炎が増えちゃった。

もうひとつ、おいらたちカイチュウの多い未工業化国ではアレルギーが少ないって事実も、すごく有名なんだ。

こうしていろいろと考えてみると、そりゃ誰だって、おいらのいなくなったことが人間様のアレルギーを増やした、つまりおいらが人間様のアレルギーを予防していたんだ。そう思うさね。

だからね、エヘン、このおいらがね、なんと人間様のお役にとっても立っていたって、学者の先生が言うんだ。おいらがそんなに偉かったなんて、ほんとおいらも知らなかったよ。

ところがそれじゃあ実際に、おいらが人間様のアレルギーを予防していたのか確かめてみようなんて、粋狂な医者が出て来た。確かにこの地球上には、日本みたいに鼻アレルギーのむちゃくちゃ多い地方ばかりじゃないんだから、そういう地域でおいらが今でも多いのかどうか、調べりゃ結論が出ちまうからね。

〜中国で検査を実施〜

今回そのための調査があったのは、中国の江蘇省呉江市黎里鎮という地域だったって、調べた粋狂な医者が言っていた。ここはね大発展中の上海市の隣の村でね、そこで三好って医者が小中学生のアレルギー検査と、おいらたちカイチュウを見つけるための検便をやったんだ。ホントに余計なことをする医者だね。それさえなけりゃおいらたち、まだまだ研究熱心な学者先生たちの尊敬を集めていたんだけどね。

検査を受けるはずだったのは、この村の小中学生四百六人だった。もっともちょいと寒い日が続いたりしてかぜひきが多くって、実際に検査を受けたのは検便が三百二十二人、アレルギー検査四百人だった。

そしてその結果、アレルギー検査陽性は九十人の二二・五%だった、検便で回虫の見つかったのは4人、そして鞭虫の発見されたのは二人、つまり一・八六%の寄生虫感染率だった。

その三好っていうお節介な医者が、寄生虫感染率〇・〇二%の日本で小中学生二千六百七十七人で調査した結果、アレルギー検査陽性率は三五・八%だったそうだ。確かにそれに比べりゃ中国のアレルギー陽性率は低いし、寄生虫感染率はやや高い。だけどアレルギー反応を邪魔しているって言えるほど、この寄生虫感染率は高かぁない。何より寄生虫感染があって、アレルギー反応要請が五分の二もいたってのは決定的だ。四〇%の陽性率だからね。全体のアレルギー陽性率よりも、むしろやや高いくらいさ。おいらたち寄生虫は、どうやらアレルギーを予防しちゃいない。そんな感じがすごく強い。

そんなわけで、おいらたちカイチュウは一時えらく脚光を浴びたんだけれど、残念無念またすごすごと嫌われものに逆戻り。だけど、とおいらたちは夢見ている。おいらたちのプライドにかけて。いつかおいらたちはまた脚光を浴びてやるぞ!ってね。

それじゃあ皆さん、それまでしばしのお別れさ。

 
(三好 彰:三好耳鼻咽喉科クリニック院長・南京医科大学耳鼻咽喉科客員教授)
 
耳・鼻・のどに効く話  いきいきライフみやぎ第22号(平成8年10月15日発行)
花粉症・アレルギーについては、『スギ花粉症』コミック『愛しのダニ・ボーイ』でもご紹介しています。
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