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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
目で見る健康情報/ライフ・カタログ「みみ、はな、のどの検査・処置」
三好 彰(三好耳鼻咽喉科クリニック) 三邉 武幸(昭和大学医学部耳鼻咽喉科)

ハナたれ小僧さん(副鼻腔炎)


昔なつかしいハナたれ小僧。青っぱなでそで口をテカテカに光らせていた。あれは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)によるものでした。

最近そんな小僧さんはめったに見掛けなくなりましたが、冬の特別寒い時期の風邪の流行した後などに、時々見られることもあります(急性副鼻腔炎と言います)。

これは鼻の穴(固有鼻腔)のわきの目の下の部分(副鼻腔)に炎症がおき、化膿して膿が溜まってしまったものです。ですから鼻の穴の中を覗くと、膿がたくさん流れ出ています。

(1)検査と処置

検査はまずX線写真を撮り、副鼻腔内の粘膜の腫れや膿の溜り具合を確認します。次いで鼻詰まりの検査をし、鼻腔粘膜の腫れの程度をチェックします。腫れがひくと、副鼻腔炎は治りやすくなります。

治療は固有鼻腔粘膜の腫れをなくし、副鼻腔に溜まってしまった膿を自然排泄されやすくすることが目的です。そのためにスプレーで鼻粘膜収縮剤を鼻腔に塗布し、鼻粘膜の状態を改善。さらにネブライザーで、炎症を抑える薬剤を鼻腔全体と副鼻腔に行き渡らせます。内服薬は、消炎酵素剤と時に抗生物質が使用され、副鼻腔の膿が溶けて流れやすくなるよう、働きます。鼻処置はその作用をより効果的にします。

治療開始直後は一時的に鼻汁(はなみず)が増え、悪化したように見えることもあります。しかしこれは単に薬剤の効果が現れ、副鼻腔内の膿が排泄されて来ただけです。決して心配いりません。

急性副鼻腔炎は冬季に多く、春先から少なくなって来ます。早めに治療を開始し、こじらせて慢性化しないようにしましょう。

(2) 背景となっている解剖・生理・病態

人間には固有鼻腔の両わきから両目の下にかけて、周囲を骨で囲まれたからっぽの腔があります。これが副鼻腔で、遠い昔生物が水棲動物だった頃、脳の入った重い頭を水面上に浮かばせるため浮力を得る目的で存在したと考えられています。現在ではこの腔は、水泳時以外にはあまり意味を持たないのですが、鼻腔内への感染の生じたときなど、副鼻腔内に膿の溜まることがあります。これを蓄膿症(副鼻腔炎)と、称しています。

風邪の後などに、急に鼻が詰まり青っぱなの出て来ることがあります。これは風邪で固有鼻腔粘膜の腫れが生じ、副鼻腔に急性の蓄膿をおこしてしまったものです。つまり、副鼻腔は固有鼻腔に自然孔という小さな穴を通して通じており、固有鼻腔粘膜の腫れがなければ自由に空気が出入りします。また同時に、鼻腔粘膜からの分泌物も自然に固有鼻腔に排泄されます。それをちょっと難しく表現すると、ベンチレーションとドレナージという言い方をするのですが。人間の気道の中で閉鎖腔に近い部分は、この両者の働きが腔を正常に保っています。人体では副鼻腔と中耳腔(耳の中)が、具体的には閉鎖腔に近い気道の一部です。

そして、固有鼻腔に風邪などで炎暑が生じ粘膜のひどい腫れが発生すると、副鼻腔は出入り口をふさがれ完全に閉鎖腔となります。人体だけでなく政治の世界もそうなのだと聞きましたが、風通しが悪くなり自浄作用が薄れると、汚染が進みます。副鼻腔内では膿が貯留し、粘膜腫脹がひどくなるのです。そしてこの状態(急性副鼻腔炎)は固有鼻腔の炎症をさらに強くさせます。

その時点で風邪をきちんと治療しておけば、急性副鼻腔炎も治癒に向かいます。しかしへたにこじらせてしまうと、慢性副鼻腔炎に移行します。鼻が詰まる、青い鼻汁が止まらない、頭が重い、などの症状が出現して来ます。時に鼻茸(鼻粘膜の病的な腫れのことです)が見られ、そのために一層鼻詰まりがひどくなったりすることもあります。

ですから副鼻腔炎の治療の目標は、固有鼻腔と副鼻腔の自然なベンチレーション・ドレナージ確保にあります。そのために抗生物質で感染を抑える、消炎酵素剤を使用して膿を分解し排泄させやすくする。これらとともに、局所処置やネブライザーによって固有鼻腔粘膜の腫脹をなくす。それが重要です。

もちろん昔のようなひどい副鼻腔炎には、現在でも手術が考慮されます。ただ、その適応となる症例数が昔ほど多くないのは事実です。とはいえ鼻茸があって鼻詰まりが極端に強い時には、鼻茸のみを摘出する簡単な手術が、よく行なわれます。鼻茸の存在が、副鼻腔のベンチレーション・ドレナージの妨げとなるからです。

いずれにしてもこの副鼻腔炎、風邪に続発する急性炎症のうちに治めてしまうのが賢明のようです。いまどきハナたれ・ハナちょうちんは、肩身の狭いものですから。
 
文献1)鈴木淳一:伝音性難聴へのアプローチ、篠原出版、1983

関連リンク: みみ、はな、のどの変なとき (副鼻腔炎(蓄膿症)ページ)
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